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第49話『ゲームコンセプトはこちら!』

「――」

「1つじゃなくていい……か。なるほどね」


「小凪ちゃん、ありがと。ふふ」



 七海は小凪の言葉に、一瞬思考を巡らせたかと思えば、口元にわずかな弧《こ》を描く。


 ――それは閃《ひらめ》きか、悪巧みか。判別のつかない笑み。


 そんな彼女にふんわりと撫でられるたびに、小凪はくすぐったそうに目を細めた。



「ディレクターのセレスちゃん♪」

「どう思う?」



 セレスは、目をチカチカと光らせ、検索をかけながら思考を整えていく。



『――』

『確かに……世に出ているゲームで、ジャンルが複数の作品は割と多いですね』


『1980年代初頭は、パズル、RPGなど単一ジャンルが締めていましたが、時代を追うごとに混合が始まっています』

『これはおそらく、技術の進化もありますが、プレイヤーの期待、市場激化による差別化が理由でしょう』


『"差別化" や "新しいモノを見せたい" 現状においては、掛(・)け(・)算(・)は(・)む(・)し(・)ろ(・)武(・)器(・)ですね』

『…………なんで考えつかなかったんでしょうか。反省です』



「ふふ、それはねぇ……あ、いや~……今はやめとこうか」

「No More 話の脱線!」


「さぁ! セレスちゃん!」

「まだ大事なことを言っていないよ!」


「小凪ちゃんの質問に対して、し(・)っ(・)か(・)り(・)と(・)方(・)針(・)を(・)示(・)し(・)て(・)!」

「ディレクターの仕事だよ♪」



 七海の指示に、セレスはハッと顔を上げた。

 すぐにホワイトボードへ向かい、でかでかと方針を書き込む。


 そして小凪に向き直り、胸いっぱいに大きく息を吸った。



『小凪さん!』


『アリ!』

『複数ジャンル! アリです!』


『複数ジャンルで行きましょう!!』



「……え、うるさ」


「ボードに書いてあるし、分かるんだが」

「あと、だれの受け売りか知らんけど、セレスそういうの似合わんと思う」


「でも…………まぁ…………役に立ったならよかった」



 小凪は悪態をつきながら、ぷいっと顔をそむけ、かすれる声でつぶやいた。


 ――耳の先がほんのり赤い。



『……ママ、あのぉ~……私も鼻血が止まりそうにありません』



「……うんうん、わかるぅぅ~」



「そこ! 早く次に進めて!」



『は~い』「ふわぁ~い」



 小凪――もとい8歳 幼女から注意を受けた、大人2人はニヤけづらとともに返事をした。



「んで、ここからどうやって決めんの?」

「面白そうなの言っていけばいいのか?」



『はい! 小凪さん、よろしくお願いします!』



「セレスちゃん、こらぁ!」

「すぐ簡単な方に行こうとしないの」


「まずは自分から考えてみて」



『んにゃっ……ごめん、なさい』

『小凪さん。申し訳ないのですが、私もちょっと考えるので少々待ってもらってもいいでしょうか』



「う、うん」

「……別にいいけど」



 小凪の中ではすでに考えが浮かんでいるのであろう。

 自身の案が採用されたことに、味をしめてしまったのか、チラチラとセレスの顔を見ている。



「(小凪ちゃん、ごめんね)」

「(小さくても、思いついたことすぐに言っちゃいたいお姉ちゃんだもんね)」


「(でも、今はセ(・)レ(・)ス(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)の(・)成(・)長(・)の方を優先させてもらうよ)」



 そうこう七海が考えている横で、いきなりセレスがタオルを投げ捨てる。

 セレスの綺麗な裸体が、二人の前に露《あら》わになった。



「セレスちゃん!? いきなりどうしたの!」

「小凪ちゃんの教育によくないよ!?」



『え、お風呂に浸かろうかと……』



挿絵(By みてみん)



「なんで!?」



『寒いからですよ!』


『あと、最初に説明してくれたじゃないですか』

『血行を促進することで、フロー状態に入りやすくなると』


『フロー状態に入って、アイデア生成能力を上げるんです!』

『えっと……入り方は~』



 セレスの目がチカチカと光る。

 どうやら、フロー状態の入り方を検索しているようだ。



『――』

『ふむふむ……意外と簡単ですね』



「せ、セレスちゃん?」

「どんな文献《ぶんけん》見たのか分かんないけど、そんな簡単には……」



『むんむむむむぅぅ……』

『フロー状態! ON(オン)!』


『こ、これがフロー状態……音が遠くなって、思考回路が洗練されていくのが分かります……人類しゅごい』



「(いや、掛け声ぇぇぇ! それきっとデマだよ! 自己暗示だよ!)」


「(いや待って待って。七海、冷静に)」

「(そういえば、前にセレスちゃんは疑似フロー状態を体験をしてた。うん)」


「(確か……"ネームレス・セレス" のビジュアルデザイン案を考えていた時。ヨダレ垂れてた。うん)」

「(きっとその時機能として処理して、変な掛け声をトリガーにステータス発動しただけ。そうしとこう)」



 七海はものすごい勢いで自分を納得させると、セレスを見守ることにした。



『新作ゲームのジャンル決め推論を開始』


『今までの情報を整理……RPG、格闘、恋愛、ホラー、音ゲーの計5種類……全組み合わせ計10パターン』


『この中から、RPGはワールド中国MMOと類似するため除外……計6パターンにまで減少』


『ここで "発言者:七海" の "クリエイターの顔が見えるゲーム" より……私、セレスの好み "恋愛ゲーム" 適用』


『恋愛ゲームを起点にした組み合わせ……計3パターンまでに減少』



 セレスはまばたきすることもなく、ただ一点を見つめ、淡々と情報を整理、発展させていく。

 ――小凪も圧倒され、無言で見つめている。



『記憶を参照……ホラーはカタルシスにより、プレイ継続性があると判断……全ワールドで固有性もあると判断……合理的』

 ※カタルシス=第45話参照


『更に記憶を参照……"発言者:小凪" より、"ソウル・ハザード" のジャンル……ホラー×(かける)FPSを参考……格闘ゲームをアクションに置換』


『ホラー×アクション×恋愛……メインジャンルを "アクションホラー"、サブジャンルを "恋愛" に設定』


『これよりゲームサイクルを――』



「こらぁ! ストップストップ!」

「セレスちゃん、止まりなさーい!」


「周りをよく見なさい!」



 七海は、セレスのほっぺをむにむにと引っ張り、正気に戻す。

 そして、小凪の方へグイっと顔を傾けた。



『んえっ……あ、ごめんなさい』

『ちょっと捗《はかど》っちゃいました』



「せ、セレス……なんかすごいな」

「なんていうか、機械みたいだった」



 小凪はセレスと目を合わせず、七海の後ろで小さくなっていた。



「小凪ちゃん、大丈夫だよ~♪」

「怖くないからね! セレスちゃん、集中するとこうなっちゃうだけだから」


「もういつものセレスちゃんでしょ?」

「ほら、ほっぺむーにむーに♪」



『あふぁふぁ。小凪ひゃん、ごめんなひゃい』



「ちょっと……びっくりしただけだから」

「あ、でも、近づかんで」


「まだ…………ちょっとこわい、から」



「……セレスちゃん」

「すごいけど、フロー状態――いやフ(・)ロ(・)ー(・)モ(・)ー(・)ド(・)禁(・)止(・)ね」


「それと、後で反省会ね」



『はい……ぐすん』



 七海はセレスに小言を言い終えると、パァンと手を打った。

 空気を切り替える音が、露天風呂に軽く響く。



「んんっ!」

「それでは会議を続けます」


「小凪ちゃん」

「セレスちゃんは、"アクションホラー×恋愛" はどうかって言ってるけどどうかな?」



「う、うん」

「実はボクも同じこと考えてた」


「ホラーと恋愛って、確か……つりばし?こうかって言うんだろ?」



「んんっ!? 良く知ってるね!」

「そう! "吊り橋効果" ――不安な状態、ドキドキする状況で一緒にいる異性を好きになっちゃったって脳が錯覚する現象だね♪」


「確かに、プレイヤーにそれを体験させることができたら、すごくヒットするかも」



「ママから聞いた」

「パパとママの出会い?なんだって」


「だから、アクションで敵を倒していくのはキャラクター」

「プレイヤーは攻撃手段がないひ弱な方がいいんじゃないかなって思ったんだけど」



「え……パパとママの出会い? それ私、知らない」

「小凪ちゃん! 後でくわしく!」



「…………うん、いいよ」



「ふふ、ありがと♪」

「それじゃあ、次はセレスちゃん!」


「セレスちゃんが一番怖いものを思い浮かべてください」

「不本意だけど……この前のことを思い出すといいんじゃないかな」


「自分の周りにいっぱいいるって想像して」


「そこに、お姉……セレスちゃんの一番好きな人が助けに来てくれる、としたらどうかな?」

「ばったばった、なぎ倒してくれるの」



『――』



 セレスは目を閉じて、想像――夢想《むそう》を展開していく。

 次第に徐々に、頬に熱が帯び始め、ゆっくりと両手で顔を覆った。



『す、すきぃっ!』

『かっこいい……あ、あの……だいすき、です』


『あ、ダメです……そこまではまだ許して――』



「はーい! すとーっぷ!」

「通行止めでーす!」

「小凪ちゃんの教育によくないので通行止めでーす!」


「あと、セレスちゃんは後で、想像したイメージを私に提出してください」


「ふふ」

「とまぁ、どうやら決まったみたいだね♪」

「しかもゲ(・)ー(・)ム(・)コ(・)ン(・)セ(・)プ(・)ト(・)ま(・)で(・)一(・)気(・)に(・)!」



『ずずっ……はい』

『えー、書きます』


『ゲームコンセプトはこちら!』



─────────────

【ゲームコンセプト】

ひ弱な主人公×(かける)理想のキャラと敵をなぎ倒していく恋愛アクションホラー

─────────────



『こんなところでしょうか! ずずっ』



「それだな」「いいね!」



「あと、セレス……お湯がさ真っ赤だから、鼻血拭いてな」

「大丈夫か?」



『あ、はい……!』

『ありがとうございます! えへ、えへへ』



「笑い方……きんも」



―第50話につづく―

どうもせーぶうわがきです!


遂に……ついにゲームコンセプトが決定しましたー!(∩´∀`)∩ウワァァァイ

皆様の予想、合っておりましたでしょうか。


ちなみに、セレスちゃんが劇中で言っていた『フロー状態!ON!』は私が普段から仕事や小説を書く時、集中したいときに出している奇声です。


いや、ほんとフロー状態に入るんですよ!?

皆様も試してみてくださいw


そして、七海ちゃんがセレスが過去に「疑似フロー状態に入ってた」的なことを言っていましたが、第20話参照です!

実はここですでにセレスちゃんの異様な集中モード?が展開されておりました。


第20話『うちのセレスたん、天才かよって感じ』


さぁ、ゲームコンセプトも決まりまして、これからどんなお話になるのか!

皆様、是非読んでいただけると嬉しいです(●´ω`●)


では!第50話でお会いしましょう!

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