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休息と備え

 とある空にて・・・


 月明かりが窓から差し込み、雲海が下に広がる地上よりも遥か上空。

 地上から目視出来ないほどの上空にその機体は浮遊していた。

 全身が月明かりがさえも反射しないどす黒い色に染まっているそれは飛行艇と呼ばれる物だ。

 この世界で空を飛行する生物は数多存在するが・・・空を飛行出来る乗り物は存在していない。

 風の属性魔導師や竜人(ドラグニル)達が物を運ぶことはあっても、大人数を乗せて空を飛ぶ乗り物を作れてはいないのだ。

 しかしながらそんな・・・空を飛行出来る乗り物が存在しない世界でも例外というのは存在する。

 季節外れの暑さや、局地的な集中豪雨、ありえない確率で産まれた混血種などがよい例だ。

 まぁ・・・この世界の人智を越えた乗り物であることには変わらないが。

 そしてそんなこの世界の人智を越えた乗り物の中に、彼女達九名はこれからどうすればよいのか会議をしている最中だ。

 その中には異形な者も二名ほど存在しているが・・・特段気にている様子はない。

 何故なら彼女達の思いはただ一つなのだから。


『最悪の事態ですね・・・』


 最初に口を開いたのは赤い瞳に金色の髪を三つ編みにしている女性アリセスだ。

 アリセスのその言葉に同調するようにこの場の全員が顔を下に向ける。

 その理由は口にするまでもなく明らか・・・彼女達がその命を捧げている人物であるマリアティアス・V・ヘリエテレスの不在が原因だ。

 彼女達はあの大戦・・・エルピーラ王国での戦いから強制的に離脱させられた後、ほどなくしてマリアティアスの使った魔法・・・と言っても自分達には理解出来ていない魔法によってとある場所へと飛ばされた。

 その世界とは先ほどまで彼女達がいた世界・・・黄金世界の優夢都であり、あの一室だ。

 あの一室にたどり着くなり目にしたのは自分達の主であるマリアティアス・V・ヘリエテレス・・・の朽ち果てた姿であった。

 あの場には元エルピーラ王国第二王女ソイル・ネロクリリス・ラック・エルピーラがいなかったが説明してもらい、そしてそれと同時にマリアティアスが戻って来ない事に悲観してしまったのだから。


『マリア様以上のあの存在・・・まさかとは思いますが数千年前に人間達が住まう世界を救ったと言われている女神なのではないのでしょうか?』

『だとすれば私達に何が出来る?あれが・・・いや、あれが何をしたわけではないのでしょうが、私達はなす術無く倒れてしまっていたのですから』

『そして気がついた時には見知らぬ場所・・・マリアティアス様が所持している飛行艇にいたのですから』

『人間じゃないヘル達も一瞬で気を失った・・・何をされたのかも理解出来ないままに・・・』

『クチルギはまだマリアティアス様に恩を返していない。まだ何も恩返しも、復讐もしていないのに・・・』

『私もです・・・私もまだマリアティアス様のお役に立てる筈ですのに』


 全員が後悔、そしてまだマリアティアスの役に立ちたい、共に戦いたいと言うか事を口々に口にしているが・・・ただこの場で黙っている人物達が二人。

 エリカとアイカは何も発言せず、黙ったままだ。

 何故彼女達が黙っているのかと言うと・・・


『何故何も言わないのですエリカ、アイカ?』

『・・・私、エリカとアイカはあの女神にあった事があります』

『何ですって!?』

『あの化け物に・・・』

『いったい何時、何処で会ったのですか?』


 エリカとアイカの話した衝撃的な出来事に驚きを隠せない一同。

 それもその筈だ。

 あのような化け物・・・この場にいる全員を一瞬にして気絶させれるほどの力を持っている者がこの世界にいることにも驚きだが、それ以上にあれに出会った事があるということはその驚きの更に上をゆくのだから。


『順を追って説明します・・・そもそも皆さんは疑問に思っているはずです。何故私達のような存在がいるのかと』

『確かにそうですね・・・マリアティアス様から言われたので指摘はしませんでしたが、貴女方は何者なのです?』

『その翼、先ほどの化け物と似ていますが・・・まさか?』

『似て非なるものです・・・あれは皆からは女神セラフティアスと呼ばれている者です。そして私達はあちら側では天使と言われていました』

『天使?』

『えぇ・・・そうです私達。まぁ・・・私達姉妹は半分天使ですが』

『その赤い枯れ枝のような翼が関係しているのですか?』


 頷きそしてエリカとアイカは説明し始める・・・自分達が何者で何故このような姿形をしているのかを。


 天使・・・あの世界にしかいない、いや・・・あの世界でしか生きていく事が出来ない尊い存在。

 始まりの天使は誰なのかエリカとアイカは知らないが・・・少なくても数百年前からいると言われている存在だということ。

 そして又聞きなのだが、あの世界・・・黄金世界の優夢都は女神セラフティアスによって作られた楽園。

 選ばれた者・・・女神セラフティアスによって選ばれた者だけしか行くことが出来ないと言われている。

 しかしながらその真意を確める事が出来ないので不明・・・

 あの世界には天使の他にも幼い子供が数名いるということも判明しており、そしてその子供の中には天使達と同じような白い、純白の翼を持っている者がいるということ。

 背中の翼は大人よりも小さいが・・・

 エリカとアイカも一度あの世界に行っており、そして自らの意識によって元の世界に戻ってきたということ。

 そもそもエリカとアイカは母・・・マリアティアスへと思いが強すぎるが故に不完全なまま黄金世界の優夢都に行ってしまったらしい。

 これはエリカとアイカ本人でもよく理解出来ていないことなので上手く説明出来ないが・・・

 そしてエリカとアイカのもう一つの翼・・・枯れ枝のような翼はこの世界全てを怨む存在、疫病の狂天使の翼らしいがこちらも何故この翼をエリカとアイカが持っているのはわからないということ。

 自分自身でもよく分からない存在になってしまったエリカとアイカだが、二人の思いは変わること無く自らの母であるマリアティアス・V・ヘリエテレスの力になることであり、エリカとアイカは『世界全てを敵に回しても力になる』と力説する。

 そんなエリカとアイカの話を聞き納得というには少し疑問が残るが、それでもエリカとアイカの本心を聞くことができこの場の全員が同意の意を示し表す。


『その言葉を聞けて貴女方が本心からマリアティアス様の力になりたいという事がわかりました。一瞬とはいえ疑ってしまいすみませんでした』


 エールが頭を下げ、それに続くようにアリセスもまた頭を下げる。


『ねぇ・・・マリアティアス様は死んじゃったの?死んだならヘルは今すぐにここから出ていきたいんだけど』


 空気を読まずに話始めたのはヘルであり、エリカとアイカの話がつまらなかったのか欠伸をしている。


『・・・貴女はマリアティアス様を侮っていますね?』

『侮る?どういうこと?話によればあの化け物はマリアティアス様でも勝てないんじゃないの?』

『勝てる勝てないは別として・・・マリア様は死んではおりませんよ』


 アリセスの言葉に驚きと、動揺が広がり騒がしくなり始める。

 ただ、この中でとエールだけは驚きも、そして動揺もせずにアリセスの言っている事を肯定する。


『・・・マリアティアス様が生きているって証拠はあるの?まさか根拠もなく言っているわけではないのですよね?』

『えぇ、もちろんですよ第二王女さま』

『元第二王女です・・・今はマリアティアスの忠実なる下僕に過ぎません』

『そうでしたね。もうエルピーラ王国は無いのですから・・・それは別にいいとしてマリア様が生きている理由はこの船に存在しています』


 そう言いながらアリセスは両手を広げてアピールする。

 確かに、この船はよく理解出来ない仕掛けが数多に存在し、そして魔導石等が存在している。


『何が言いた・・・まさかこの船には?』

『流石この中で純粋な魔導師なだけはありますね。何千、何万の人々の願いの果てに作り出され願いの結晶・・・呪術石の事を』


 魔導石・・・魔導石には二種類存在し、一つは自然界に存在する力その物が長い年月をかけて魔導石となった物。

 この魔導石には四大属性魔法以外の魔導石も存在し、電気を帯びている魔導石、磁力を帯びている魔導石、そして溶岩を作る事が出来る魔導石なども存在する。

 それらの魔導石は貴重魔導石として世に出回ることは稀だが・・・

 そしてもう一つは魔導師が自らの魔力によって造り上げた人工の魔導石。

 こちらはつい最近までは四大属性魔法と同じ魔導石しか作り出すことが出来なかったが、近年では純粋な、魔力のみの結晶である第五属性・・・無属性の魔導石の生成が出来るようになった。

 各種属性魔法の魔導石は、それぞれに対応する魔導師でなければ作る事が出来ないが第五属性である、無属性の魔導石は魔導師であれば誰でも作る事が出来る。

 純粋な魔力のみの塊であり、そのまましようすることは出来ないが・・・それを組み合わせることによって元々の魔導石や魔導師の力を増幅させる事が出来る。

 またこの無属性の魔導石は魔力の塊な為に、魔力その物を弾丸として使う魔導銃(エンチャントガン)として使用されることが多い。

 しかしながら呪術石という物は魔導石とは似て非なるものであり・・・その存在はあまり世間一般には知られていない。

 噂程度なら聞いた事があるという程度が大半だ。

 呪術と言われて魔導六刀の面々はそれぞれに嫌な記憶を思い出したのか、それぞれ表情を曇らせている。


 呪術石・・・人間の、願いの果てに作り出された石と言われている。

 呪術石がどのようにして作り出されたのか?どんな目的の為に作り出されたのかは未だにわかってはいない。

 魔導六刀が一振りである、蠢く虐刀(ヘル・ザ・リッパー)朽ちゆく(クチルギ・)奪刀(アークエイク)名もなき(ガル・ヘルティスト・)偽刀(シーザー)・・・彼女達にも何かしらの関係があると言える。

 彼女達は呪力によって作られた存在なのだから。


『それで?まさかマリアティアス様も何かしらの呪術石をこの船に使っているの?』

『だからと言ってもマリアティアス様が生きているという証拠にはならないんじゃないの?』

『普通の呪術石ならそうですね・・・ついて来てください。この船・・・聖飛艇・オラクルロードの秘密を教えてあげましょう』


 そう言い終えるとアリセスは船・・・飛行艇の中を歩き、とある場所にたどり着く。

 その場所は数多の魔導石、未知なる機器、そして糸のようにして張り巡らされた魔法陣が描かれている。

 描かれている魔法陣その物が芸術作品のようで、アリセス達の前にあるソレは扉のようになっているようだ。


『これが秘密ですか?』

『描かれた魔法陣が芸術作品のようですが・・・それが何故マリアティアス様が生きているということになるのですか?』

『そう焦らないでくださいよ。エール指輪を・・・』

『わかりました。ですがアリセス良かったのですか?』

『このままでは皆さんが納得しませんからね・・・それにこのまま全員が勝手に戦うのはマリア様の本意に背く思いましたので』


 アリセス言う通り、エールは懐から指輪を取り出す。

 しかしながらその指輪は半分になっていている不思議な指輪だ。


『その指輪は・・・』


 エールから指輪を受け取ったアリセスもまた、自らの懐から指輪を取り出す。

 その指輪もエールと同様に半分になっていて・・・絵柄を合わせるとエールの持っている指輪と合致する。


『これが・・・この指輪がこの扉を開く為の鍵なのですよ』


 アリセスは一つとなった指輪を扉の前に掲げると・・・数多の魔法石、未知なる機器、そして魔法陣が一斉に起動し始める。

 厳重に、幾重にも張り巡らされた魔法陣がバラバラになり・・・そして扉が開け放たれる。

 するとそこには驚くべき光景が広がっていた。


『こ、これは・・・』

『な、何故・・・どうして?』

『どういうことです?』

『ま、マリアティアス様?』


 この場の全員が目にしたのは自らの命を捧げている存在・・・マリアティアス・V・ヘリエテレスであった。

 そしてマリアティアスを覆う巨大な水晶・・・それは先ほどマリアティアスと同じ光景だ。

 ただし場所は全然違うが・・・

 先ほどいた場所と全然違う場所にもう一つ、いや・・・もう一人存在しているという状況が理解出来ずに困惑してしまっているアリセス、エール以外の面々。

 それもその筈だ。

 確かにマリアティアスには一瞬にて別の場所に移動する手段がある。

 しかし問題なのは何故アリセス達にも言わず、何故水晶の中にいるのかということなのだが・・・


『これはマリア様であって、マリア様ではないのです・・・』

『それはどういう意味です?』

『先ほど言いました呪術石が関係しているのです。これは・・・マリア様の姿形をした呪術石なのですよ』

『こ、これが・・・これが呪術石だというのですか!?』

『えぇ・・・そうです。そして触ってみてください。より一層納得するはずです。まだマリア様が生きていることが・・・』


 そうアリセスに言われてアリセス、エール以外の全然がマリアティアスに触れる・・・


 聖飛艇・オラクルロードの秘密・・・それはマリアティアス自身が生み出した呪術石が動力として稼働している船であり、その呪術石には細工が施されている。

 そしてこの呪術石にはマリアティアスの分身とも言える。

 その理由はこの呪術石にはマリアティアス魂の一部が入っているからだ。

 本来魂を分けることなど到底不可能なのだが・・・人智を越えたマリアティアスの力ならば可能だ。

 何十年、何百年も積もりに積もった祈りという感情はやがて一つの結晶となる。

 この結晶にはマリアティアスが何十年、何百年と祈りという感情を捧げて作り上げた結晶であり、結晶には明確な『祈り』という意思がある。

 そして祈りの果て作り出された結晶にはマリアティアス自らの魂が分離してしまったのだ。

 偶然かそれとも必然か・・・

 そしてマリアティアスは自らの魂の分身さえも利用してこの聖飛艇・オラクルロードを作り上げた。

 つまりこの呪術石にはマリアティアスの分離した魂が入っており、それに触れるということは・・・


『マリアティアス様の力を感じます・・・』

『マリアティアス様は確かに生きていますね』

『このような秘密が・・・』

『つまりマリアティアス様は・・・』


 呪術石に触れたソイル達が驚愕と同時にマリアティアスがまだ生きていることへと安堵、そしてマリアティアスの底知れぬ力に畏怖してしまう。

 確かにマリアティアスには底知れぬ力があることはこの場の全員が知っていた。

 しかしながらそれほどまでの力を持っているとは思ってもみなかったのだ。


『確かにマリアティアス様が生きているということは分かりました。しかし・・・あれから戻って来ないは事実』


 アリセスの言葉に同調するように全員が暗い表情になってしまう。

 マリアティアスが戻って来ない。戻れないのか?それとも戻る気がないのか?

 どちらかはわからないが今はマリアティアスがいないということには変わりなく、アリセス達は自らの目的を失ってしまった。

 そんな全員の気持ちが沈んでしまっている最中に、突如として全員の頭に直接声が聞こえ始める。


『こ、この声は!?』

『マリアティアス様?』

『な、貴女も!?』

『えっ!?まさか・・・』

『全員に?』


 全員の頭に直接聞こえてきた声。それはマリアティアスであり、少しばかりノイズが聞こえているが・・・

 内容を要約すると数日後には戻って来るということであり、それまで自由にしていてよいということだ。


『自由・・・自由って何をすればよいのしょうか?』

『私は食事がしたい!』

『食事・・・確かに真っ当な食事はあの時以来食べていませんね』

『確かに重要なことです。暫し休息としましょうか』


 そう言いながらアリセス達は移動する。

 この船、聖飛艇・オラクルロードには数多の魔法によって見た目以上に空間が広く、そして部屋数も多数存在する。

 まずは先ほどアリセス達が居た聖飛艇・オラクルロードの心臓部。

 船の推進力や水平装置等が組み込まれている機関部。

 マリアティアスのみが扱う事が出来る操舵部・・・今はマリアティアスがいないので意味はないが。

 いろいろな物を置いている物置・・・中には何に使うのか用途不明な機材も置かれている。

 そして各個人の部屋。この各個人の部屋は一つの扉を通して繋がっており、ドアノブに取り付けられているダイヤルを回すと各個人の部屋へと繋がる仕組みになっている。

 新たに登録することによって部屋数を増やす事が可能だ。

 そして今アリセス達がいる場所・・・食堂兼厨房。各国の食材や多数の調理器具があり、この船にいる間はマリアティアスが調理を担当していた。

 今はマリアティアスが不在なので、アリセスとエールが調理をしている最中だ。


『美味しそうな匂いがしてきましたね』

『お母さんが作ってくれたのとは違うみたいだね。お姉ちゃん』

『そ、それはなんと言う料理なのだ!?』


 アリセス、エールの作っている料理に興味津々な様子で待っているエリカとアイカとガル。

 特に興奮しているのはガルで、その表情は待ちきれない様子なのは一目でわかるほどだ。

 それに対してヘルとクリルギは少し退屈そうにしている。

 ソイルは食器を出している最中なのだが・・・時折その手を止めて興味深そうに食器を見ていることもある。


『流石にマリア様ほどの腕前とはいきませんが・・・』

『マリアティアス様の料理の腕前はプロ級・・・はっきり言って私はマリアティアス様よりも料理が上手い人は知らない』

『そ、そんなに凄かったんだ・・・』

『確かにお母さんが食べさせてくれた料理は美味しかったけど・・・』

『残念ながら本気のマリアティアス様の料理を食べた事があるのは私達だけです。何しろ手間がかかると言っていましたし、それにお祝い事でなければ作ってくれませんでしたから』


 エールの言葉にがっかりした表情になってしまったエリカとアイカ。

 自分達は確かにマリアティアス・・・母親の料理は食べていたがそれ以上の美味しい料理を食べた事があると言われて落ち込んでしまったのだ。


『落ち込まないでくださいよ・・・私は料理さえ食べた事がないのですから』


 少し不機嫌そうなソイルが食器を並べ終えてから数分後・・・料理が完成し、一同の前に並べられる。

 柔らかそうなパンや、歯ごたえのありそうな硬いパン。

 全員に配られたスープは濃い黄色をしたポタージュスープ。

 各種新鮮な野菜は大きは皿に盛られており、中には見たことないような色をしている野菜もある。

 そしてメインには魚料理と肉料理の二種があり、香ばしく焼き上げられた魚には味付けはシンプルながらも魚の旨みを引き出すような調理がなされている。

 肉料理には料理に合うように、そして肉の旨みを更に引き立てる為に特製のソースがかけられていて、肉はナイフがいらないほど柔らかになっている。


『すごいですね・・・王室でもなかなか味わったことのないような』

『お、美味しそうだ・・・』

『作法とはわからないけど、別にいいよね?』

『というよりもヘルとクリルギは片腕しか使えないけどね・・・』

『別に問題ありませんよ。我々は既に同士なのですから』

『エールの言う通りですね。それではいただきましょうか?』


 アリセスの合図と共に全員が食事を始める。

 作っていたアリセスとエールは特段驚いてはいないが、その他の面々は驚いている者も多い。

 特に驚きが大きかったのは、やはりガルで作法など気にもせずにガツガツと食べている。


『貴女少し落ち着いたら・・・』


 その様子を隣に座っていたソイルが指摘しようとするが、直ぐ様に口を閉ざす。


(別にここは王室ではないのですから、そのように指摘するのは駄目ですね・・・それにしても、まだ私は王室に未練があるのでしょうか?己の魂をマリアティアス様に捧げたのに・・・)


『手が止まっていますよ?何かお口に合わなかったのですか?』

『いや、そのような事は・・・少し考え事をしていただけです』

『そう・・・何か悩みがあったら話して、相談にのるから』

『貴女が・・・』

『エールはこう見えてよく教会に来ていた人達の懺悔の声を聞いていたのですよ』

『そうですね・・・懐かしいです。私もエール様やアリセス様、マリアティアス様とよくお話をしていました』

『お姉さんはエールや、アリセスさんと同じ所に住んでたの?』

『一緒には住んでいませんでしたが、私は都市国出身なので』

『まぁ・・・それぞれ過去にはいろんな秘密がありますからね』

『秘密・・・』


 わいわいと楽しく食事をしている風景は微笑ましく、そして徐々にではあるが彼女達は打ち解けてゆく。

 互いの悪いところを指摘したり、良いところを褒めたりしていきそして・・・自らの過去を話始める面々。

 そして話は最初の・・・二人の狂信者の過去の話になる。


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