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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第3章 クラスメイトをxxxします!
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09 はじめての宝箱

 デコボコトリオの治癒魔法で、すっかり回復したDQNども。


 恩人の女の子たちに、凝りもせず襲いかかろうとしていたが……俺が天井から睨みをきかせていることに気づくと、腰を抜かしてションベンを漏らしながら這い逃げていった。


 見送るデコボコトリオは、意味がわからずキョトンとしている。



「……なんだかものすごい勢いで、どこかへ行ってしまわれましたわ」



 クリエル会長は小さな背をこれでもかと伸ばし、DQNどもの逃げた先の様子を伺っていた。

 つま先立ちになるたび、子鹿のような結い髪がぴょこぴょこ動いている。



「なにか、死神でも見たような怯えようでしたね」



 リリンド副会長は、ぱっつんとした前髪を指でいじりながら答える。

 DQNどもの取り乱し様よりも、前髪の長さが揃っているかのほうが気になるようだ。



「なんにしても、みなさん元気になったみたいで良かったですぅ!」



 レイアン書記は、くっつけたカカトをトントンさせて、身体を上下に揺らしている。

 それが彼女なりの喜びの表現みたいで、大きな胸がはしたなく波打っているのもおかまいなしだ。


 三者三様のリアクション。

 そうこうしているうちにDQNどもの悲鳴は遠ざかっていき、通路は再び静まりかえる。


 クリエル会長は片足を軸に、踊るようにクルリンと振り返り、副会長と書記を見上げた。



「では、残りの仕事をやっつけてしまいますわよ」



「はいっ!」「了解しました」



 三人娘は背中のリュックをおろすと、いそいそと何かを取り出しはじめた。


 真上の梁から見下ろしていた俺は、何をするつもりなのかと覗き込んでみる。


 彼女らが手にしたのは……折りたたみ式のモップと、木のバケツだった。


 そして唱和する、クリエル会長。


「では、まいりますわよ? イポモニ純真女学院、『純真の教え』、第4852条!」



「「来たときよりも、キレイキレイ!」」



 えい、えい、おー! と武器のようにモップをかざしたあと、三人娘は床の掃除をはじめた。


 どうやら、DQNどもが撒き散らしていった汚物を掃除するつもりのようだ。


 俺は、人知れず頭を抱える。


 お前ら……この『タワークエスト』で優勝しなきゃ、廃校だって言ってなかったか……?

 なのになんで、1ポイントにもならねぇ掃除なんてやってんだよ……!?



「あっ、クリエル会長! パンが落ちてますぅ!」



 さっきまでDQNのひとりがかじっていたパンのかけらを、拾い上げるレイアン書記。



「んまぁ、さきほどの方が落としていかれたのでしょう。きっとお困りでしょうから、あとで届けてさしあげるのですわ」



「はいっ!」



 会長の指示を受け、レイアンはハンカチを取り出す。

 食べかけのパンを、貴重品のように丁寧にくるんでいた。


 いや、そんなパン、返されても困るだけだと思うぞ……。


 ああ……なんか、わかった気がする……!

 コイツらが万年最下位と呼ばれている、本当の理由が……!


 人間を攻撃しない、ってだけじゃねぇ……!

 底抜けにお人好しで、底抜けに純真なんだ……!


 俺は、彼女らの掃除のスキを伺い、DQNどもが落としていったパンのひとつをこっそりワイヤーで引き寄せた。


 そのパンを細かくちぎって、上からポトリ、ポトリと落としていく。



「はあっ……! これで良いですわ、じゅうぶんにキレイキレイになりましたわ……!」



 額の汗を拭いながら、輝く通路を見渡すクリエル。

 同じくリリンドとレイアンも、いい汗をかいたようだ。



「あっ……会長! こっちにパンくずが点々と落ちてますぅ!」



 俺の仕掛けに最初に気づいたのは、レイアンだった。



「んまぁ、散らかしたままにしておくのはよくありませんわ。拾っていくのですわ」



「はいっ!」



 ちびっこ会長を筆頭に、俺が落としていったパンくずを拾っていくローブの少女たち。


 普通のヤツだったら、そのへんに蹴っ飛ばしていくものを……わざわざヒザを折ってしゃがみこみ、つまんで拾い上げ、ハンカチに集めている。


 俺は、彼女らに意地悪したくてパンくずを撒いたんじゃない。

 連れていきたいところがあったんだ。


 狙いどおり、パンくずの道しるべを辿って部屋に入っていく。



「……パンくずは、ここで終わりのようですわ」



「ああっ!? 見てください会長っ! 宝箱ですぅ!」



 部屋の隅にある宝箱を、レイアンが目ざとく見つける。

 さすが身長が高いだけあって、三人組のなかでも気づくのがいちばん早い。


 俺が梁の上を歩いて散歩を楽しんでいたころ、偶然見つけた宝箱だ。

 俺は『タワークエスト』に興味はなかったので、開けることもなくほっといたんだが……こうして役に立つ時が来るとはな。



「んまぁ、わたくし、ホンモノの宝箱を見るのは初めてですわ!」



「はいっ、わたしもですぅ!」



「自分も、右に同じです」



 三人娘はすぐさま宝箱へと詰め寄る。

 そのまま何の用心もせずにフタに手をかけ、パカッと開けた。


 上から眺めていた俺は、その行動に度肝を抜かれちまう。


 罠が仕掛けられているかもしれない宝箱を、まるで家の冷蔵庫の扉みたいに開けやがった……!

 コイツら……本当に冒険者か……!?


 案の定、箱の中から噴出したガスを浴び、バタバタと倒れていく少女たち。

 まともに眠りガスをくらっちまったようだ。


 ……やれやれ……本当に、世話を焼かせやがる……!


 俺は、下に降りて気つけのツボでも押してやろうかと思ったんだが、



「居たぜぇー! 俺たちの獲物がよぉー!」



 それよりも早く、バカみたいにデカい身体のヤツらがドカドカと部屋に入ってきた。


 動物の頭蓋骨の兜に、クマやトラの敷き皮みたいなのをまとっている、高原族(ハイランド)のマッチョ野郎ども……!


 全員、学生とは思えないガラの悪さ……まるで山賊みてえな悪党予備軍だ……!



「おおっ!? 女どもは、気持ち良さそうにオネンネしてる所じゃねぇーかぁー!」



「へへぇー! 手間が省けていいやぁー! このまま剥いちまおうぜぇー!」



「そりゃいいぜぇー! 俺、コートの下でハダカの女を飼うのが夢だったんだよなぁー!」



「なんでハダカなんだよぉー? さみぃじゃねぇーかー!」



「へへぇー! ハダカだと逃げられねぇだろ? そのうえ、いつでもどこでもヤレちまうんだぜぇー!」



「なるほどぉー! おめえ、頭いいなぁー!」



「……その、頭の悪そうな喋り方……なんとかしたほうがいいぞ」



「なっ、なんだテメェ!? いきなり現れやがって!?」



「テメェはたしか……壺仮面とかいう平地族(グランドラ)だろ……!?」



「最低ランクのクソバカ野郎だよなぁ? 女だったらクソバカなのも可愛げがあるが……男のクソバカは救いようがねぇじゃねぇか! なぁ!?」



 俺を指さし、「ぎゃーっはっはっはっはっはっ!」と揃って嘲笑する山賊ども。


 その数……10人か。

 この『タワークエスト』では、10人単位で行動するのが一般的なのか?



「俺らみたいな高原族(ハイランド)だったら、まだ力でカバーできるけどよぉ……ひ弱な平地族(グランドラ)じゃ、どうしようもねぇよなぁ!」



「ぎゃーっはっはっはっはっはっ!」



「まぁ、俺らの国の国王は、平地族(グランドラ)だから……例外もあるけどなぁ……!」



「タクミ様と、こんな壺野郎を一緒にするんじゃねぇよぉ! あのお方はバケモンだろぉ! 神様ですら指一本で地獄送りにしちまわぁ!」



「……なんだ、お前ら、ダリス・バンディのヤツらか」



「ほほぉー! ダリス・バンディを知ってんのかぁ!? そう! 俺らは『ダリス・バンディ鉄鋼高校』よぉ!」



「その中でも、ワル中のワルが、俺たち……鉄鋼高校愚連隊……! ケンカ上等! 略奪上等! 男はブチのめし、女はブチ犯す……! それ俺らのポリシーだぁ!」



「おいおい、あんまりべらべらしゃべんじゃねぇよぉ……! せっかくの修学旅行でハメをはずしてんだ……! この壺野郎がチクりでもしたら、国に帰ったときにやべぇじゃねぇかぁ……!」



「そういえばそうだなぁ、俺らの国じゃ女を犯すどころか、ケツに触っても罪になるようになっちまったからなぁ……!」



「なぁーに、心配いらねぇよ……! コイツは俺がヤッてやる……! 一生クソを垂れ流して、チクるヒマもねぇくらいにな……!」



 俺は、下卑た会話を軽く受け流しながら……笑う壺のアップリケを反転させる。



「なんだぁ、ソレ……? 笑ってる壺が、だまし絵みてぇに怒りだしやがった……! ソレで、怒りを表してるつもりかよぉ!?」



「ぎゃーっはっはっはっはっはっ!」



 腹を抱えて大げさに爆笑する山賊ども。

 揃って俺を指をさそうとしているが……全員、させていない。



「アレ? お前、なんで手首がダランってなってんだ?」



「なんだぁ? お前こそ、骨が折れたみたいになってんじゃねぇーかぁ?」



「なんだよ、全員、骨が……あ、あれっ?」



 ぐらり……と揺れ、ドミノのように次々と倒れていく山賊ども。

 糸の切れた操り人形さながらに、不自然な姿勢で床に身を投げ出した。



「なっ……なんなんだぁ!? なんだってんだぁ!?」



「動かねぇ……!? 身体が動かねぇぞぉ!?」



「ち……力を入れてんのに……!? いったい……どうしちまったってんだぁ!?」



 自分の身体になにが起こっているのか、まだ理解できていないようだ。

 這いつくばったまま口々に怒鳴りあっている。


 このままだと、気づくまでに相当かかりそうだな……。


 俺は、ヤツらを見下ろしながら教えてやった。



「関節を全部外させてもらった。本来は激痛なんだが、痛みがあるとお前らうるさそうだから、一時的に末梢神経も麻痺させてある。思うように身体が動かないのはそのためだ」



「なっ、なんだぁ!? ワケのわからねぇことぬかしやがって!」



「異国の言葉だろ!? それとも恐怖のあまり狂ったか!」



 ……うーん、この説明が異国の言葉に聞こえるって……コイツら、オツムは相当良くないみたいだな……。


 本当は、どうやって『いつの間にツボを突いたのか』の種明かしまでするつもりだったんだが……これじゃ、教えてやっても理解してもらえそうにねぇな……。


 まぁいいか……説明は省略して、さっさとお仕置きしちまおう。


 俺は、『いつの間にか』手にしていた松明の火を、倒れているヤツらの毛皮に次々と押し当てていく。



「なっ……なにしやがるっ!?」



「あちちちちち! 燃える燃える燃える! 燃えちまうだろうが!」



「テメェ、何のつもりだっ!? 俺たちを焼き殺す気かっ!?」



「焼け死ぬかどうかはお前ら次第だな。早く水をかけてもらわねぇと、本当にそうなっちまうぞ」



「うぎゃあああああっ!? 熱い熱い熱い!」



「やべえっ!? マジやべえよぉっ!?」



「なんだこれっ!? か、身体が動かねぇぇっ!?」



 パニックになって、その場でゴロゴロと転がりはじめる山賊ども。

 そんなことをしている間にも、身体についた火はどんどん燃え広がっている。



「あー、そうやって転がるんじゃなくて、尺取り虫みたいに身体を動かすんだ。そうしたら、思う方向に移動できるぞ」



 俺のアドバイスを耳にした瞬間、うつ伏せになったまま腰をくいっと上げ、その勢いを利用して前に滑りだした。

 まさしく葉っぱの上を這う尺取り虫みたいなのが、そこかしこに現れる。



「て……テメェ……! 覚えてやがれっ!」



 捨て台詞を言うヤツがいたので、俺は毛皮の裾を踏んづけて止めた。



「お前らはまだ学生だから、この程度……お灸を据えるくらいで済ませてやってるが……あんまりおイタが過ぎると、お灸が地獄の業火に変わっちまうぞ……?」



「ぎゃあああああっ!? わかった! わかったから! もう二度とアンタにゃ逆らわねぇ! 燃えてる! 燃えてるから! 離せっ! 離せって!」



「じゃあ、彼女たちには二度と手出しをしないと誓え」



 俺は、安らかな寝顔を見せているデコボコトリオを親指で示した。



「わかった! わかりました! に……二度と、アンタの女にゃ手を出さねぇ! だから……許して! 許してぇぇぇぇぇぇぇっ!」



 泣き叫んで許しを請う山賊は、パチパチと弾けるような音とともに、皮膚が焼ける匂いをたちのぼらせはじめた。



「あー、火を消したあとは、忘れずに骨接ぎに行けよ。今は末梢神経を麻痺させてるから平気だろうが、効果が切れたら全身が火だるまになるより痛い思いをすることになるぞ」



「ぎゃあああああああああああああああーーーんっ! わかった! わかったよぉぉぉんっ! だから、だからぁぁぁんっ! 離して、離して、離してぇぇぇぇんっ!」



 とうとう涙をほとばしらせながら、女のような悲鳴をあげはじめたので、俺は踏んづけていた足をあげて解放してやった。



「ひいぃぃぃぃぃぃーーーんっ! 待ってぇ! 待ってくれぇぇぇぇんっ!」



 猛然と身体をくねらせ、さっさと逃げた仲間たちを追いかけて、部屋を這い出ていく。


 気がつくと、床にはまたションベンの軌跡が、幾筋も残っていた。

 しかも、焦げ跡までオマケについて、真っ黒になっている。


 そして……関節を外してやったせいか、手首から『タワーバンド』が抜け落ち……そこらじゅうに転がっていた。

次回、さらなるデコボコトリオ!


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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★新作小説
ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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