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俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第3章 クラスメイトをxxxします!
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10 デコボコ生徒会の決意

 突如、塔内にゴォォォンという鐘の音が鳴り渡る。

 そして、エコーのかかった女の声が続いた。



『タワークエスト実況中継よりお知らせいたします! たったいま2階が踏破されました!』



 俺は、2階の梁の上からその声を聞いていた。



『3階への一番槍は、リンドール学園! 2階のフロアボスに殺到する他学園の生徒たちの背後に陣取り、上階への階段上から弱点を狙撃。即死させた後、そのまま階段を駆け上がるという頭脳プレーで他の学園を出し抜きました!』



 狙撃か……もしかして、あのお嬢様かな?」



『立役者はリンドール学園、シャラール・スパーク選手! 今回初参加の1年生ながらも、学園のエースを務めています! 現在、シャラール選手はフロアボス撃破ボーナスで6万ポイント、フロアトップ到達ボーナスで9万ポイント、あわせて15万ポイントを荒稼ぎし、個人戦でもトップに立っています!』



 おお……オシッコすらガマンできないお嬢様かと思ってたのに……やるなぁ。

 それに比べて、コイツらときたら……。


 俺は呆れ果てた様子で下を覗き込む。

 鉄骨の真下では、アナウンスを聞いてようやくお目覚めになったプリースト三人組がいた。



「ふわぁ……ああ、いい目覚めですわ。スッキリ気分爽快ですわ」



 罠にかかって眠ったはずなのに、まるで昼寝でもしたみたいに晴れやかなクリエル会長。



「はい、いつもは重いお胸も風船のようですぅ! やっぱりお昼寝は大事大事ですぅ!」



 大きな胸をぽよんぽよん弾ませながら、その場飛びをしているレイアン書記。


 いやいや……お前ら、なんで昼寝したことになってんだよ。

 大事なことをすっかり忘れてるじゃねぇかよ。


 俺は何度上空から突っ込んでやろうかと思ったが、そのたびに自制した。


 天然ボケの固まりのような集団だが、ひとりだけマシそうなヤツがいる。

 寝起きでも表情ひとつ変わらない、リリンド副会長だ。



「そういえば……我々は、何をしていたんでしたっけ?」



 アゴに手を当てて、考え込んでいる様子のリリンド。


 俺は、宝箱に気づいてくれるよう祈ったが、



「おや、この部屋も汚れているようですね、掃除をしなくては」



 それよりも先に、床のションベン汚れに気を取られていた。


 俺はさすがにイラついてきて、握りこぶしを固める。

 そのまま念じると、目の前に青白い手が現れた。


 これは、『エレメンタルハンド』……ヒジから先が実体化したような、幽体の手だ。

 呼び出した術者の意思で、自由に動かすことができる。


 魔法では初歩中の初歩にあたり、魔法使いの家で育ったようなヤツなら、子供のうちから使いこなすことができるらしい。


 俺にはガキの頃はもちろん、今になっても魔法の適性が一切ない。

 それなのにどうやって『エレメンタルハンド』を出しているかというと……グローブに込められた魔力を借りてるんだ。


 いままでは右手と左手、1組しか出せなかったんだが、どうやら市場で婆さんに繕い直してもらったとき、ついでにパワーアップしてくれたらしい。

 今は10組くらいなら、平気で出せるようになっちまった。


 ちなみに用途としては、格子の向こうにあるスイッチを押させたり、軽い物を持ってこさせたり……などが一般的。


 俺はそれらの使い方に加えて、遠隔からのツボ押しにも使っている。

 遠隔操作なので、手に比べると正確さに欠けるが、ちょっとした指圧ならコイツでじゅうぶんなんだ。


 さっき山賊どもが『いつの間にか』ツボを突かれていたが、それもこの『エレメンタルハンド』でやったってわけ。


 俺は、ふたつの青白い手を操って、地上の宝箱まで派遣した。



 ……パカン! パカン! ガタンッ!



 宝箱のフタをミミックのように開閉させたあと、ガバッと大きく開かせる。

 乾いた音が部屋中に響き、すかさずレイアン書記が反応した。



「あっ! 見てくださぁい! 宝箱がありますぅ!」



「あ、そうでしたわね。わたくしたちは宝箱を見つけたのでしたわ」



「さっそく、中を見てみましょう」



 モップを持ったまま、宝箱に集まるデコボコトリオ。



「んまぁ……中にはたくさんのお金が入っておりますわ」



「それに、これは……『タワーバンド』みたいですぅ!」



「たくさんのお金に、10個のタワーバンド……これが意味するものは……?」



 宝箱を囲んで、うーん、と首を捻る三人娘。


 金は元々入っていたものだが、『タワーバンド』は俺が入れたモノ。

 寝込みを襲おうとした山賊どもが、逃げていったときの置き土産だ。


 『タワーバンド』には山賊どもが稼いだポイントが入っているから、それを移せば一気に大量ポイントをゲットできる。


 これであの三人組も、万年最下位から脱出できるだろう……!

 優勝までは足りねぇかもしれねぇが、かなりの足しになるはずだ……!


 と思っていたんだが、



「わかりましたわ! これは『忘れ物』ですわ!」



 小さな手をポンと打って、見当違いの推理を披露するクリエル会長。



「なるほどぉ! お金もこの『タワーバンド』の持ち主の方が、お忘れになったんですねっ!」



 胸の前で祈るように指を絡め合わせ、賛同するレイアン書記。



「その通りですわ! ですからこれは拾得物として、クエストカウンターにお届けするのですわ!」



 俺は、絶叫とともに飛び降りたくなるのをこらえるのに大変だった。


 『タワーバンド』には個人や所属校を識別するような情報は一切入ってない。

 入っているのは獲得したポイントの情報だけだ。


 元々、奪い合いをすることが想定されているモノらしく、無くしてもいいように余計な情報は入れていないらしい。

 そして情報を入れる手間がないぶん、再発行もすぐできるそうだ。


 だからバンドに名前でも書いてないかぎり、持ち主の元に帰ることはない。

 届け出たところで、奇特なヤツだなぁ、みたいな目で見られるだけなんだ。


 というわけだから、もらっとけ……!

 頼むから、そのままもらっちまえよ……! 


 俺は人間の耳元で、悪を囁く小さな悪魔のように……上空から三人娘めがけて念を送った。


 すると……この中ではいちばん世間を知ってそうな、リリンド副会長が反応する。



「……クリエル会長、あなたは言いましたよね? 必要とあらば、今回ばかりは悪鬼羅刹になる、と……」



「その通りですわ、リリンド副会長。我がイポモニ純真女学院の存続のためなら、悪にも手を染める所存ですわ」



「さきほどの実況放送、聴きましたよね? リンドール学園が15万ポイントを獲得したと……。いまの我々は、合計何ポイント所持しているか……知っていますか?」



「それは……ゼロポイントですわ……」



「そう。我々がお昼寝をしている間に、トップの学校とは15万ポイントもの差をつけられてしまったのです……!」



「15万ポイントの差なんて、埋められませぇん!」



 泣きそうな声で叫ぶ、レイアン書記。

 輪となった三人娘に、暗い影が落ちた。



「そう……まともにやっていては、追いつける相手ではない……! ですから自分は今から、冥府魔道に堕ちます……! イポモニ純真女学院のために……!」



「り……リリンド副会長!?」「リリンド副会長さんっ!?」



 心配そうに声をかける会長と書記に背を向ける、我らが副会長。

 俺は、無言で手を振りかざしながら応援していた。


 よし……いいぞ……! 宝箱の中を持ち去るんだ……!


 別に気にするこっちゃねぇ、『タワークエスト』じゃオンルール……!


 冥府魔道に堕ちる行為とは程遠いけど……最初の一歩を踏み出すんだ……!


 リリンドは、まるで決別するかのような表情で、手にしていたモップを壁に立てかけた。


 ……コトリ。


 そして、表情のクールさにさらに磨きをかけながら、振り返る。



「自分は……キレイキレイをやめます……! 掃除に時間をかけていては、差がつく一方ですから……!」



 ガァーンッ! とショックがデコボコトリオの間を駆け抜ける。

 俺は、ゴォーンッ! と鉄骨に頭をぶつけていた。



「えええっ!? お掃除をやめるんですかぁ!?」



「リリンド副会長……! それは、『純真の教え』に背く行為ですわ……!」



 驚きのあまり、呼吸を忘れてしまったかのような生徒会のメンバーたち。



「そう……! でも、自分は決めたのです……! キレイキレイはやめて、そのぶんの時間、『タワークエスト』に専念すると……!」



 沈黙が、あたりを包む。

 レイアン書記は呼吸困難になったように荒い息をし、クリエル会長はうつむいたままだった。


 しばらくの後、クリエルは気丈な顔を上げたかと思うと、そっとリリンド副会長に寄り添う。



「……ひとりだけ、行かせるわけにはまいりませんわ……! わたくしも……やめますわ、キレイキレイを……!」



 ……コトリ。


 賛同するように、モップを隣に立てかける。



「わ……わたしもぉ! わたしもやめますぅぅ!」



 ドドドドドと走り寄るレイアン書記。


 そして、壁に立てかけられる三本目のモップ。


 再び輪になった三人娘は、差し出した手を絡めあわせていた。



「……お掃除をサボるだなんて……こんな姿……みなには見せられませんわね」



 めいっぱい背伸びをしながら、手を掲げるクリエル会長。



「はい! 先生方にバレたら、きっといっぱいいっぱい叱られちゃいますぅ!」



 ヒザを折って中腰になりながら、手を降ろすレイアン書記。



「叱られるかどうかは、我々が優勝できるかにかかっています。優勝できなければ、廃校……! 叱られることもできなくなるのです……!」



 まっすぐに手を伸ばす、リリンド副会長。


 三人娘はお互いの顔を見合わせながら、さらに言葉を続けた。



「クリエルは今、ここに誓いますわ……イポモニ純真女学院を守るために、悪鬼羅刹になると……!」



「リリンドは今、ここに誓います……イポモニ純真女学院を守るために、冥府魔道に堕ちると……!」



「れっ……レイアンは、誓いますぅ……イポモニ純真女学院を守るために、えーっと、んーっと……あの……ええっと……そうだ! すっごく悪い子になりますぅ!」



 誓いの言葉を述べた後、「えい、えい、おーっ!」と高く手を掲げる乙女たち。


 俺はその真上で、鉄骨に寝そべったまま考えていた。


 これで、ようやく……一歩前進……っていうのかなぁ……?

次回、デコボコトリオの奇跡!


それと新作小説を掲載いたしました。

本作がお好きな方でしたら、同じく楽しんでいただけると思います。

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★新作小説
ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


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