表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の指圧がチートすぎる  作者: 佐藤謙羊
第2章 ハーレム修学旅行にイッてきます!
37/101

18 結闘の儀、前夜…そして

 『結闘の儀』の準備があるからと、クーレ先生は連れていかれてしまった。

 俺も、女子プロレスラーみたいなメイドさんに手を引かれて別室に通される。


 『結闘の儀』の開催が決まった場合、参加者が王女と接触するのは一切禁止となるらしい。


 俺はいきなりひとりぼっちに、そしていきなり暇になっちまった。

 先生が大変なことになってるのに観光に行くのも気が引けたので、そのまま部屋で過ごした。


 メシも部屋に運ばれてくるので特にすることもない。夜になったのでさっさと寝た。


 ベッドも高原族(ハイランド)サイズなのか、やたらとデカい。

 プールみたいな広さのベッドのど真ん中で横になっていると……何者かが部屋に入ってきた。


 ソイツには見覚えがあった。

 『結闘の儀』の準備で大わらわなメイドたちから、「メイド長」と呼ばれていた女だ。


 メイド長はベッドの端で跪くと、



「……私はウェナーと申します。クーレ様の乳母です」



 顔をうつむかせたまま、ささやくように名乗る。

 ひんやりした手を頬に当てられているような、冷たい声だった。


 俺は大の字に寝転がったまま、首だけ捻ってウェナーのほうを見る。


 乳母というわりにはかなり若い。20代後半くらいにしか見えない。

 それに……クーレ先生を育ててきたとは思えないほど、真逆の印象がある。


 わがままボディはソックリなんだが、表情はお局様みたいにキツい。

 クーレ先生は愛嬌のある丸メガネなんだが、このウェナーは教育ママみたいな三角メガネだ。


 声も、舌足らずで喜怒哀楽あふれるクーレ先生とは真逆。

 ハキハキしてて聞き取りやすんだが、抑揚がなさすぎて感情が読めねぇ。


 このマシーンみたいな乳母と一緒にいて、クーレ先生はよくあんな天然になれたな……って思っちまうほどに、共通点が感じられない。



「……その乳母さんが、俺に何の用だ?」



「クーレ様の使いで参りました。タクミクン様を、安全な場所までご案内せよと」



 俺が尋ねると、ウェナーは要件だけを簡潔に述べた。



「……クーレ先……いや、クーレの使い? ってことは、アイツは今どこにいるんだ?」



「クーレ様はいま、別室で監視下に置かれています。『結闘の儀』の開催が決まった以上、賞品であるクーレ様は外部の者と接触することができないのです」



「賞品、って……人をモノみたいに言うなよ」



 するとウェナーは、それまでずっと伏せていた顔をあげ、俺を見つめる。

 これ以上ないくらいの真顔だった。



「……タクミクン様は、この国のことをよくご存知でないのですね」



 それからウェナーは、滔々と俺に語った。


 ……ダリスは男の国である『ダリス・バンディ』と、女の国である『ダリス・フェミナ』に分かれているが、すべての権力は『ダリス・バンディ』のみにあり、『ダリス・フェミナ』はお飾りでしかないこと。


 それが表すように、ダリスの女に自由はないそうだ。

 女は男に尽くすのが当たり前。男は多くの妻を愛することができるが、女はひとりの夫しか愛してはいけない。


 男の浮気は甲斐性として扱われ、女の浮気は厳重な処罰を受ける。

 しかも未婚の女が男に乱暴された場合、その男の妻にならないといけないらしい。


 ……この国の男はみな、女をモノとしか思ってないそうだ。


 それで俺は理解した。

 王女であれ「賞品」呼ばわれされるワケを。


 そして……謁見場でゴルヌイがクーレ先生にひどい事をしていたのに、父親も母親も止めなかった理由もわかった。


 父親にとっては、普段から同じように女を扱ってるから……当たり前の光景だったんだろう。

 そして母親は口出しできる立場にないから、我が娘の非道に対しても悲しそうに目を伏せていたんだ。


 ウェナーの流れるような説明は続く。



「本来、ダリスの女は外で働くことも許されておりません。でもクーレ様は王族ですので例外でした。……ですが王は、外に出て働くクーレ様のことを良く思っておりませんでした。早く結婚して男に尽くすようにと、一計を案じたのです」



「それがあの、ゴルヌイってヤツか」



「はい。『ダリス・バンディ』の王子である、ゴルヌイ様との結婚を計画しておりました。王が病気になったことにして、クーレ様を呼び戻そうとしたのです」



「……なるほど、計画の途中で俺とクーレ先生がダリスに寄ったから、今みたいなことになっちまったのか」



「はい。明日の『結闘の儀』は、ダリス・バンディにある闘技場で行われます。トーナメントで一対一での殺し合いを行い、優勝した者がクーレ様を(めと)ることができるのです」



「ああ、わかったぞ。それでクーレ先……クーレは俺を心配して、お前を通じて逃がそうとしてきたのか」



「はい。『結闘の儀』は参加したが最後、優勝するか、死ぬかしないと闘技場から出ることはできません。毎回死体の山ができる、大変危険な儀式なのです」



 ウェナーはそう言いながら、淀みない動きで立ち上がる。



「……おわかりいただけましたか? では、私についてきてください。タクミクン様を安全に逃げられる場所まで、ご案内させていただきます」



 でも俺は、寝っ転がったまま動かない。



「いや、わざわざ来てもらって悪いが、それは遠慮しとくよ。せっかくだから『結闘の儀』がどんなモンか、この目で見てみたいんだ」



 すると俺を見下ろしていたウェナーは、真顔のままパチパチと瞬きした。



「……気は確かですか? 失礼ながら、タクミクン様が『結闘の儀』に参加して、生き残れる確率は万にひとつもありません。臍部で煎茶をするほうが、まだ簡単だと思います」



 ヘソが茶を沸かすって言いたいのか。

 でも何と言われようと、俺の考えは変わらねぇ。



「ま、そうかもしれねぇけど、俺はクーレを置いて逃げるつもりはねぇよ。アイツは俺を頼ってくれたしな。……それにアイツと約束したんだ、この国を案内してもらうって。それが終わるまでは、この国を出るわけにはいかねぇさ」



 ウェナーは何も言わず、瞬きもせず俺を見つめている。

 しばらくの沈黙のあと……かすかに唇を震わせた。


 次は何を言ってくるのかと思ったが、



「……そうですか。それでは私は、もうお止めいたしません」



 意外とあっさりと引き下がる。

 もしかして、コイツはマジで冷たいヤツなのかな……と思っていたら、おもむろにベッドにあがってきて、正座をしやがった。



「その代わりといっては何ですが……タクミクン様が明日に備えてしっかりと睡眠がとれるよう、お手伝いさせていただいてもよろしいですか? 私はクーレ様の命令を遂行することができませんでしたので、せめてそのくらいはさせていただきたいのです」



 大きな胸に拳をめりこませ、訴えかけるようなウェナー。

 相変わらずの平らな声だったが、珍しく感情を感じさせる一言だった。



「……ああ、そのくらいはいいよ。その手伝いとやらをやってくれ」



 断り続けるのも何だったので、俺は承諾する。


 するとウェナーは俺の側にやってきて、俺をお姫様だっこするみたいにして抱えあげた。

 ちょっと驚いたが、されるがままになってやる。


 ウェナーはコホン、と小さく咳払いをひとつすると、



 ♪ ねんねんしてね かわいいぼうや


 ♪ ママのおむねに みをまかせ


 ♪ ただよいながら ねむりましょ


 ♪ あなたのねがおは たからもの


 ♪ せかいのみんなの たからもの



 聞き覚えにある子守唄を歌いはじめた。

 それがまた……氷みたいに冷たい喋りをするヤツとは思えないほど、やさしくて、あたたかい歌声だったんだ……。


 俺は本当に、ストンという形容がしっくりくるほどに……瞬時に眠りに落ちていた。



  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 かつてない荒々しい振動によって、俺の意識は一気に夢の世界から引き戻される。


 悪夢から飛び起きるように、ハッ!? と身体を起こすと、そこは寝室ではなく……檻の中だった。

 しかも……両手には分厚い枷みたいなのがはめられていた。まるで囚人みてぇに……!


 薄暗い檻の中は、俺ひとりではなく……まわりに大勢の高原族(ハイランド)の男たちがいた。



「嫌だ……嫌だよぉ……勘弁してくれよぉ……!」



「な……なんで急に、『結闘の儀』なんてやるんだよぉ……!」



「くそっ……なんて時に、捕まっちまったんだ……!」



「し……死にたくねぇ……死にたくねぇよぉ……!」



「む……無駄だ……俺たち全員、見世物みたいにブッ殺されるんだ……!」



 どいつもこいつも、格ゲーの悪役みたいにコワモテでマッチョなのに、体育座りで小さくなって震えている。


 檻がガタガタと振動しているのは、コイツらが震えているせいかなと思ったが違った。

 昇降機みたいなのに乗せられて、上にあがっているんだ……!


 俺はなおも事態が飲み込めずにいると、檻は外まで上昇したのか、明るい光が差し込んできた。

 そこでようやく、昇降機の動きが止まる。


 格子状の壁が四方に、バタン、バタンと倒れると……俺がどこに連れてこられたのか、ようやくわかった。


 ただっ広い、乾いた赤土のグラウンド。

 まわりは高い塀に囲まれていて、その上にはスタジアムみたいな客席が全方位に広がっている。


 そして……染み込んでいるような血の匂いが、鼻をつく……!

 間違いねぇ……ここは闘技場(コロシアム)だ……!!



『さあっ! これから結闘の儀が行われますが、その前に……! 参加者に1名欠員が出たため、急遽繰り上げ選抜を行うことになりました! 参加希望の方はいまから飛び入りして、中央にいる罪人をむごたらしく殺してください! 残虐性をいちばんアピールできた方が、繰り上げ当選となり、結闘の儀に参加できますっ!!』



 どこからともなく響くアナウンス。埋め尽くす客席が一斉に湧いた。

 津波が押し寄せてくるような歓声とともに、蛮族みてぇな男たちが次々と、客席から飛び入りしてくる。



「ひゃーああああああああああああああっほぉぉぉぉっ!!! ブチ殺せええええええーーーーーーーーーーっ!!!」



 どいつもこいつも高原族(ハイランド)で、格ゲーのラスボスみてぇな迫力がある。

 自分の身体くらいあるバカでかい剣やらハンマーやらを軽々と振り回し、雄叫びとともに、俺のいるほうに向かってきた。


 俺は、自分の手元を見る。

 手首には相変わらず、鉄のまな板みたいなのがはまっていた。


 これって……どう見ても手枷だよな……?

 罪人って……もしかして、檻に入ってた俺たちのことか……?


 念のため、あたりを見回してみたが……それらしきヤツは、俺ら以外には他にいない。

 しかも一緒に檻に入ってたヤツらは、すでに俺のまわりにおらず……蛮族どもから逃げるべく、必死に距離を取っていた。

次回、奴隷戦士タクミ…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★新作小説
ゲーマーおっさん、ゴーレムに引きこもる…でもソレ、実はスーパーロボットですよ!?
本作が好きな方でしたら楽しんでいただけると思いますので、是非読んでみてください!


★クリックして、この小説を応援していただけると助かります! ⇒ 小説家になろう 勝手にランキング

script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ