30.追跡者
称号「大地を泳ぐ者」の効果で地面を滑ることが出来る。
ありがたいことにこの建物内でも使用できている。
草原エリアの木の上だと効果がなかったりするが、何で判定しているかはちょっとわからない。
ただ潜行距離があまりにも浅いため、潜って下の階に行ったりは出来ない。
鵺の投擲はかなり早い。早いし速い。
未来予知というか行動予測が無ければもう何度死んでいたか……。
行動の隙を見ながらステータスチェックを頑張っているが――
エネミー ◇ 鵺
分類 ◇ 鵺:■■■■■■
生息域 ◇ ■■■文明エリア
食性 ◇ ■食性、■食性、■食性
情報が伏せられ過ぎていて何も分からない。
狩猟数に応じて公開されるステータスは多くなるが、こんなに伏せられているのは初めてだ。
オルカに関して言えば、狩猟数が少ないけど接敵数が多いから、ある程度の情報開示がある。
落ち着いたタイミングで、メニューを開いて、動物図鑑をチェックすれば解説まで読める。
つまり、まあ、このエネミー鵺は、他のプレイヤーにこれまで会わないで来たのだろう。
弱点は……え?
――ボッ! ボッ! ボッ!
――ズガンッ! ズガンッ! ズガンッ!
うおっ、うおぉ、うおぅ!
やたらめったらに石を投げてくる。施設の保全と言う概念はないのか。
知性的な立ち姿なくせに、行動は蛮族。文明は滅んだんだね。
そんなことより、弱点だよ弱点。全く光らんのだが。
こいつぁー困った。弱点がないアニマルは始めてだ。アニマルでいいのかこいつ?
弱点が少ないとか、「どうやって攻撃せい」って感じの位置に弱点があるやつはいたけど、全く無いのは始めて。
これがどんな意味をしているか?
勝てないってこと。やれやれ。
星ゼロパワーの私は弱点をピンポイントで攻撃することで、やっと相手にダメージを与えられる。
一ツ星耐久ならまだなんとかなる。ギリギリで、本当にギリギリでなんとか出来る。
相手は鵺。どんなステータスか分からないけど、時々破壊した建物の破片が頭に落ちてるのを見ている。
頭に当たるけど意に介さない。つまり一ツ星はあり得ない。
残念無念また来週。
これはもう逃げるしか無いのだけど……。
「なんでこんなに追跡できるの!」
飛行したり、音を立てずに建物の裏に回ったり、フェイントしたり、音に紛れて遠くに逃げたりしても悉く追跡される。
いや、無理。体力もたないって。
暗闇だから視覚じゃない。音に紛れても見つかるから聴覚でもない。
匂いだろうか。それとも蛇みたいに体温で感知してるのか。
人間にピット器官つけますか? あ、こいつ人間じゃないや鵺だわ。じゃあありえるの?
思い切り離れて射線を切ってちょっと休憩して、接近されてまた逃げて飛行や滑空したりして、体力温存しつつ行動しても、それでも限界は近い。
「なんなんだよもう!」
かなりの距離を逃げたと思うが、当たり前のように鵺はやってくる。
時々止まって辺りを確認……してない?
あれ。そういえば、こっちを見失う瞬間はあるけど、周りを確認するような仕草は無いぞ。
でもしばらくするとすぐにこっちに気付く。
生き物の行動として違和感がある。
アニマルユートピアのエネミーたちは、そういうところをちゃんと作り込んでいる。
ハピライの技術や知識を変な方向に振り切ってるだけで、生物の造形には真摯にふざけてる。
だから、あの動きにも意味はあるはず。
「あ、もしかして……」
アニマルユートピアの世界で人間が出てきたから、そういうもんだと思ってたけど、もしかしたらそうじゃないかもしれない。
改めて観察をする。




