29.認識不能
光の届かぬ地下空間。
五つ星のセンスによって、周囲の空間を感知できる。
本来、視覚情報はゼロのはずだが、白い線が視界を補完する。
鵺は体長130センチほど。小学生並みの身長だが、骨格はガッシリしている。筋肉質の男性にも似ている。
髪の毛らしいものもあり、ボサボサの毛が腰辺りまで伸びている。
音だけで輪郭を掴んでいるため、猿と間違えているんじゃないの……?
もしこの体験を誰かに言ったらそう返されるような気がする。
だけど、それには「否」とハッキリ返す。
こんな綺麗な直立二足歩行をしている猿は居ない。
アニマルユートピアで猿のプレイヤーは何人か見たけど、人間のように直立出来ない骨格になっている。
ただ立っているだけなのに、姿勢が綺麗だとなぜか知性を感じてしまう。
エネミーと表示されたが、会話とか出来るんじゃないだろうか。
すぐに逃げられるよう、逃走ルートを確保しながら、慎重に鵺に近づいていく。
地面を滑り、時に空を飛び、けれど羽ばたく音は最小限に。
鵺は街を巡回している。なにかを探しているのか。それとも先ほどの崩落の音を聞いて警戒しているのか。
生きているということは、生活をしているということ。
食事をとり、睡眠をとり、生殖をする。
補足している鵺以外にもどこかに鵺が居る可能性がある。目の前の相手だけじゃなく、360度すべてに警戒しながら、一歩、また一歩と近づく。
鵺が歩いている傍の建物。
コンクリート造りのビルに似た建造物の三階程度の高さから、鵺を見下ろす。
この距離なら、鵺が敵意を持っていても十分逃げることが出来る。
エネミーって言うくらいだから敵意は向けられるんだろうなあ。
だけど、人間の形をしている生き物をいきなり攻撃するのは……ちょっと無理かな。
他の動物はよくて人間がダメなのは、今更考えるとなんか不思議な気分だ。
でも、私的には無理。それだけ。
「も、もしもーし」
とりあえず声をかけてみる。
鵺が声に反応する。
その場で立ち止まり、周囲を警戒しながら徐々に壁際に移動する。
自分が居る場所と反対側の建物。
「こ、言葉、わかりますかー?」
「繧上′譌・縺ョ譛ャ縺ッ蟲カ蝗ス繧�!」
「え、なんて?」
「譛晄律縺九′繧医≧豬キ縺ォ!」
「なにか喋ってるのに、なんだこれ」
頭に入るのに、理解が出来ない。
鵺が叫ぶ声は確かに聞こえる。聞き取れる。聞き取れるのに分からない。
すごく気持ち悪い感覚が頭に広がる。
「――あ、バレた」
鵺と目が合った。
正確にはこんな暗闇の中で目が合うわけがないのだが、互いに互いの居場所に気づいたことを、互いに気づいた。
それよりも、なんだ今のは。言葉として確かに発せられている。なんならアレが日本語だと分かる。
けど、内容が全く理解できない。認知が出来ないようになっている。
鵺は足元にある石を握り、こちらに投げて来た。
――ボッ! ズガンッ!
……ちょっとした狙撃じゃん。
やばい! この場からすぐ逃げないと。
――ボッ! ボッ! ボッ!
――ズガンッ! ズガンッ! ズガンッ!
連続で投擲してくる。あんなん掠っただけで死ぬ。なんてったって耐久星ゼロだからね!
コンクリートの建物に身を隠しながら、すぐに奥へ引っ込む。
鵺はこっちに向かって走ってくる。
一階から建物に入ってきたら窓から飛び出して逃げようそうしよう。
――タタタタタッ! ダンッ!
「うそでしょ……」
「騾」繧翫◎縺ー縺�縺、蟲カ縲�↑繧後�!」
三階くらいの高さはある。
それを鵺は跳んできた。
「縺ゅi繧�k蝗ス繧医j闊溘%縺晞壹∴!!」
「んやっばぁ!」
鵺が壁を握り、破壊する。割れたコンクリートを石の代わりに投擲する。
寸前回避!
建物の奥に猛ダッシュ。
「これホラーゲームだったけえ!?」




