24.それぞれの決着 中編
――山脈エリア
「なになに喧嘩売ってるなの」
「喧嘩売ってるのはそっちだら」
「うちが山脈行くって先に言ったなの」
「馬鹿言うでみゃあ、山脈はオイラがいつも行ってるだら」
「関係ないもんもん、うちが先に言ったなの」
ハナモグラとトウキョウトガリネズミが言い争いをしている。
どこかの方言に似た変な口調で喋るのがハナモグラの「ケンスケ」。
なのなの語尾を付けるのがトガリネズミの「すみれ」。
二匹とも小さい動物であるが、トガリネズミはこれでもサイズ極大である。
世界最小の哺乳類と言われるだけあり、本来は頭から尻尾の先までで10センチにも満たない。
尻尾を除けば5センチ以下だ。
その極大サイズ。全長30センチだ。
アニマルユートピア内では本当に小さい。
山脈エリアを飛ぶハゲタカが彼女の身体を掴んで飛んでいく。
「なになに! うちお話し中だったなの!」
「山脈エリアは初めてかい? あんな目立つところに居れば空から襲われて当然なんだよ」
「関係ないなの!」
怒ったトガリネズミはハゲタカの足に噛みついた。
「いてえ! 何すん――」
そして、掴まれながらデスロールをする。
千切れる足、ハゲタカが痛みに絶叫する。
実際にプレイヤーが強い痛みを感じるわけではないが、千切られる感覚と微量ながらも存在する刺激が、脳に過剰な反応を起こさせる。
「なんなんだよおめえはよ!」
次の瞬間、ハゲタカの頭が撃ち抜かれる。
【 プレイヤー「オデンマンド」を狩猟しました 】
「オイラたちの話をじゃまするでみゃあ」
ハナモグラから発射された高圧水流砲。
ブラックマンバのダークウイングの毒液にも似ているが、彼の射撃は純粋な水によるもの。
毒が入っていない代わりに威力が格段に高い。
「ああ! うちが倒すつもりだったなの」
「知らんぎゃ」
「あとその適当な似非方言気持ち悪いなの!」
「おみゃあの語尾の方が気持ち悪だら!」
小さな動物たちの言い争いは続く。
――密林エリア
ユキヒョウのトゥ・メイド。
彼女が名付けた意味は To 冥土……地獄行きという意味だ。
「キャキャキャ、また来たか自殺願望者」
「キュキュキュ、北極エリアだからって調子乗ってたよな」
「キョキョキョ、密林はコミュニケーションのエリア、孤独なお前に勝ち目はない」
テナガザル、テングザル、オナガザル。
前回のイベントで、ユキヒョウはこの猿三匹によって徹底的に追い詰められた。
北極エリアに比べ、他のエリアのプレイヤーはレベルが低いと言われているが、飽くまで平均的な話である。
当然、自分より格上のプレイヤー、しかも競合して戦う相手であれば負けることもある。
ホッキョクグマは「いい経験だ」と言っていたが、ユキヒョウにとっては屈辱の思い出である。
二度と、その汚い笑い声をさせるつもりはない。
彼らを倒すためだけに、サードレベルの強化を選択した。
――夜の帳は光を隠す
――闇に潜む狩人よ、勝鬨を上げろ
【 サードレベル「漆黒咆哮」 】
――悪魔の咆哮が
――命を削り取る
「キャッ!?」「キュッ!?」「キョッ!?」
大気を震わすユキヒョウの咆哮が、三匹の猿を内臓ごと揺らす。
神経を直接攻撃するような叫びが、彼らの身体を痺れさせ、動きを止めさせる。
密林に阻まれ音が拡散したため、本来の効果より薄く、止められたのは僅かな時間。
だが、その刹那の時さえあれば、彼らの首を食いちぎる程度、造作もないこと。
【 プレイヤー「インビジブル」を狩猟しました 】
【 プレイヤー「ロックエイプ」を狩猟しました 】
【 プレイヤー「サイレント」を狩猟しました 】




