22.VSガラパゴスゾウガメ その5
吹き荒れる砂嵐。
幸か不幸か私の身体は風に飛ばされ亀さんの踏み付けを避けられた。
だけど身体は壁に叩きつけられて、意識が飛びそうになる。ってか一瞬飛んだ。
刹那の瞬間とはいえ、音が消え、視界が真っ白に染まった。
次に意識が戻ったのは身体が地面にぶつかる直前。翼を開いて減速し、転がるように横に逃げる。
僅かだが地面に潜行し、滑ることで身体へのダメージを回避。そのまま勢いで亀さんの後方へ滑り逃げる。
【 フォースレベル「愛腐乱徒」 】
再び襲い来るツタの連撃。
称号「窮鼠猫を噛む」によって逃げ場がなくなるほどステータスが上がる。
壁に追い詰められるほどに、ツタの動きがよく見えるようになる。
亀さんが振り返る。ゆっくりとした動き。
砂嵐で視界が制限されているが、それでもツタ攻撃は避けられる。ギリギリだけども。
「ふぅ……」
溜息を吐いた。亀さんは私を見て溜息を吐いた。なんかむかつく。
レースゲームで一週目から一位独走した時に「まだ二周もしなきゃなの?」と退屈気に呟いた兄のように溜息を吐いた。
ああ、これは苛立つ。
そりゃ私は弱いさ。身体も小さいし、力もない。体力もないし、レベルもさっきようやくセカンドになったところ。
だけど、そんなつまらなそうな顔をされて、それを甘んじて受け入れられるような寛容な精神を私は持っていない。
窮鼠猫を噛む。山椒は小粒でもぴりりと辛い。小さくとも針は飲まれぬ。
……針?
思考するより早く身体が動いた。
風の中に光の道が見える。
翼を広げ、風を掴み、嵐の中に道を見る。
横から飛んでくるツタをくぐり、地面を食い破るように飛び出すツタの力を利用し跳び上がる。
吹き飛ぶ地面と共に宙へ飛んだあとは、広げた翼が風を捉え、風と風の隙間に身体を差し込む。
一度の羽ばたきで、矢のように空を飛ぶ。
振り返り切った亀さんが呼吸の為に小さく口を開けた。
僅かな空気の動き。亀さんにとってその一呼吸は、本当に小さなもの。無意識レベルの生命活動。
けれど私にとっては千載一遇のチャンス。
光の道を飛び。風に乗って矢の如く。
亀さんの口の中に飛び込んだ。
「ぐおっ! がふっ! な、なんじゃ、土でも吸い込んだか!」
ああ、気づいていないのか。気づかないほど私は小さいのか。それでいい。
弱いものを馬鹿にするな。小さいものを侮るな。
飛び込んだ勢いそのままに、光の道のその先へ。
亀の口内を飛び、喉の奥のその先の、私にだけ見える弱点へ。
突撃!
「がっ! ……あ。なんじゃ、これ、は……」
それは心臓。
甲羅に守られた体内の最重要器官。
風によって加速した私の身体が、槍のように内側から突き刺した。
溺れそうなほどの血が体内に溢れる。だけど、血の海ならば私の戦場。
血流に乗って加速し、体内を泳ぐ。
突き刺せ、突き刺せ、穴を開けろ。
体内という逃げ場のない空間が「窮鼠猫を嚙む」で私を強化し、
フィフスレベルの亀さんが強肉弱食で私に力をくれる。
「なにが、なにが、起きたと、言うのじゃ……!」
爆発が起きたのかと思うような巨大な衝撃と音。それでも私は泳ぎ続ける。
そして――
【 プレイヤー「キサラギ」を狩猟しました 】




