20.VSガラパゴスゾウガメ その3
大地を滑る、空に跳ねて滑空する。
ツタがどう動くか、未来の映像が、音が、感覚が教えてくれる。
呼吸をするように、身体に沁み込む未来予知。
笑い続けていた亀さんの表情に少し緊張が走る。
だけどもう遅い。この速度なら弱点を突ける。
「喰らえっ!」
「なっ!!」
甲羅と首の継ぎ目、亀の喉にペンギンの嘴が突撃した。
しかし――
「ぬう、すばしっこいのぉ。だが……コホンッ。うむ、問題ない」
軽く咳ばらいをして終わる。弱点ど真ん中、最速で突いたのに、僅かのダメージもない。
私の焦る表情を読んだのか、亀さんがニヤリと笑った。
「つまり、これで終わりというわけじゃな?」
「いやいや、まだ切り札は残ってるよ」
「声が震えておるのぉ。よいよい。若者はイキってなんぼじゃからなぁ」
「お爺ちゃんはさっさと隠居した方が良いんじゃない?」
「フォッフォッフォッ、わしは新成人じゃよ」
「声と貫禄が合ってないんだけども!!」
ほぼ学生じゃん!
確かに脳波を読み取るゲームは高齢になるほど、読み取りが難しくなるって言うけど、そういうの乗り越えて達人になったお爺ちゃんかと思ってた!
うん、勝手な判断はよくないね。一つ勉強です。
「あまり時間をかけてしまうとのぉ、イベント本編の方を楽しむ暇が無さそうじゃなぁ。よし、ひとつ良いことを教えよう」
「なんだよぉ」
「称号「不撓不屈」、称号「不朽城塞」、称号「不死の爬虫類」……まあこの三つじゃな。五つ星効果により得た称号じゃ」
「なにがだよ」
「怯まず、朽ちず、回復をし続ける。と言えば分かるかの?」
嫌ぁ~な称号をお持ちなようで。
不機嫌な目で亀さんを見ていると、さっき突いた皮膚が白く硬化していく。
ペリペリと音を立てるように剥がれ落ちる皮膚。その下にはプリプリ新鮮な皮膚が出来ていた。
脱皮だこれ。
脱皮で回復するってことだこれ。
「降参……してくれぬかのぉ」
何をしても無駄だと言わんばかりに見せつける。
確かに。確かにこれは勝ち目がない。星ゼロのパワーで、星5の耐久を突破できるわけがない。
勝てるわけがない。
ゲームを投げだして負けた負けたと言ってしまえばいい。どうせゲームだ。本当に死ぬわけじゃない。
なんなら何度も死んできている。
さっさと白旗上げてログアウトすればいい。
「いやだ」
ああ、ダメだ。頭より先に声が出る。
「絶対に嫌だ」
負けたくない。ゲームだろうと途中で投げ出したくない。
「まだ私は楽しんでない」
目指すのは勝利じゃない。勝敗は結果だ。私はそこを望まない。
諦めて投げ出して何が楽しい。
全力を出し切らず何がゲームだ。本気でやらずに何が遊びだ。
どうせ死なないなら、最後まで出し尽くすのがゲームでしょ!
「ならば、引導を渡すしかないのぉ」
――草原の支配者、砂漠を荒らす者、嵐を調伏する者
――三界の王を喰らう魔王の証
【 フィフスレベル「嵐砂高原」 】
――破壊の記録と共に
――世界が繋がる




