16.草原エリア
【 エリア「草原―第七地点」 】
空から降り注ぐ数多のコイノボリ。
名前の通り鯉の幟の身体を持つエネミー。
ゆらゆらと身体を揺らしながら宙を泳ぐ。
あまり高い位置だと鳥以外の動物と接触できないため、地上1メートルから2メートル程度の間を飛行する。
草原エリアには多くのプレイヤーがいた。
ただ、その多くがウサギ、イヌ、ネコ、などの小動物たちだった。
時々ゾウやライオンみたいな大型の動物も見かけるが、目に付く動物の大半は可愛らしい生き物たち。
「はわわぁ、これこそアニマルユートピアだよぉ。まるでハッピーライフじゃん」
前作、『アニマルユートピア・ハッピーライフ』では本当の意味で動物たちのリアルな生活を体験できた。
だけど、リアルな世界に人間が入り込む余地はない。あってはいけない。
ハッピーライフが廃れたのは、プレイヤーたちが原因である。
リアルな動物世界で、動物として自由に生きられるようになったらどうする?
本当に動物のように生きるだろうか?
人間が開発者の思い通りに動くわけがない。
人間の脳を得た動物たちは、その動物たちの力を使って好き放題に生きた。
ビーバーが作るダムは本格派となっただけでなく、そのまま建築を始めて竪穴式住居くらいは簡単にやってのけた。
ゾウになった人間たちは、その巨体を利用し「地均しだ!」と言いながら大地を蹂躙した。
ウサギはライオンの首を狩り、キリンがどうやったのか頭に槍を付けて振り回し、蛇は集団でウロボロスをする。
これのどこがリアルなアニマル世界だとブチ切れた運営が、プレイヤーの操作権を奪い取り、動物の視点で見るだけの体験ゲームとなってしまった。
確かにリアルな動物世界を見ることが出来たが、好き放題暴れていたユーザーは離れ、徐々に廃れていく。
『どうせプレイヤーは勝手にやりたい放題やるんだ』
『だったら最初から混沌の世界を案内してやろう』
ワールドコネクションにはそういう意志を感じられた。
ただ、私は、操作が出来なかったとしても、ハッピーライフのあの動物世界が好きだった。
だから目の前の草原エリアにいる動物たちを見て、懐かしい気持ちに包まれて――
【 サードレベル「稲妻」 】
【 サードレベル「閃光」 】
【 サードレベル「火焔」 】
ああ、コイノボリ、コイノボリが焼けていく。
ウサギが放った雷に、イヌが吐き出すレーザーに、ネコの尾から出る炎に焼かれて落ちていく。
ここはハッピーライフじゃない。ここはアニマルユートピア・ワールドコネクション。
のんびりしている草原エリアでも、それは変わらない。
「あれれ? あいつ他所のエリアの動物じゃね?」
「ほんとだほんとだ、侵略者じゃん」
「わー、あいつレベルファーストだ」
「雑魚じゃん」
「ファーストでエリア跨ぐなよ」
「イベントだからって調子乗ってんじゃね?」
「うける」
「草」
「もー、初心者をいじめちゃダメだぞ」
「でも、侵略者なら容赦しちゃいけなくね?」
「恨むなら、弱い自分を恨むんだね」
ああ、うん、アニピトワルコネのプレイヤーだ。
そうだね。うん。ここはそういうところだ。だから。うん。
遠慮はいらなそうだね。




