しまちゃん
今日はパフォーマンスにも熱が入っている。
それもそのはず。
花宮くんとデートの約束を取り付けたんだ。
目の前の子供たちの笑顔も天使に見える。
私は今。
ご当地キャラ。
シマリスのしまちゃんに扮している。。
ショッピングモールでのイベント。
近隣のゆるキャラたちが一同に会して。
ゲームやダンスを披露している。
私の一挙手一投足に子供たちは大喜び。
イベントの最後は希望者と写真撮影の時間。
会場は屋内だからましだけど。
さすがに汗だく。
でも。
みんなの笑顔のために。
かわいいポーズを決める。
「かわいい!」
私じゃないんだけど。
言われたら。
テンションが上がるわけです。
「しまちゃん、写真撮って」
あれ?
なんか聞いたことあるような声。
「しまちゃん、ふさふさ」
私の腕を。
実際は。
しまちゃんの腕をさする女の子。
視界に入ってきたのは。
同じクラスの瑠璃ちゃん。
「じゃあ、撮るよ」
んん?
この声は。
おそるおそる向いた先には。
花宮くん……
え?
なに?
瑠璃ちゃんと。
デートですか?
??
「しまちゃん、ポーズ」
スマホを構えながら。
微笑んでいる花宮くん。
あんなに笑っちゃって。
さ。
え?
もしかして。
二人は付き合ってるの!?
じゃあ……
私とのデートは?
どう言うこと?
「しまちゃん、どうしたの?」
心配そうな。
瑠璃ちゃんの声。
私は。
いや。
しまちゃんは。
平然と両手を振って。
誤魔化す。
そして。
頬に両手を添えて。
決めポーズ。
カシャカシャ……
シャッター音がして。
花宮くんが近づいてくる。
両手を広げるしまちゃん。
花宮くんも。
応えるように。
手を広げる。
ハグする私。
ぎゅーっと。
目一杯。
抱きしめる。
「うわ、しまちゃん、苦しいよ」
「瑠璃ちゃんと仲良しだね」
声色を変えて囁く。
しまちゃん。
こと私。
ビクッとした。
花宮くん。
「明日香ちゃんとデートの約束したんだよね。」
本当は喋っちゃダメなんだけど。
「え!?」
「悪い子だね。明日香ちゃんと瑠璃ちゃんに言いつけよ」
「な、なんだよ。お前誰だ」
「私は、みんなが大好き、シマリスのしまちゃんだよ」
しまちゃんを。
ううん。
私を振りほどこうとする花宮くん。
「どうしたの健?」
んん?
健?
名前を呼び合う仲って……
「こいつ、なんか喋るんだよ」
「明日香ちゃんのこと騙したんだな」
「おい、瑠璃、助けてくれよ、こいつ……なんかキモい」
はあ!?
しまちゃんがキモい!?
私のこと?
ん?
違う。
私だとはバレてないんだから。
でも……
二人は……
私こと。
しまちゃんは。
腕の力を抜いた。
「大丈夫、健?」
「ああ、何かこいつ……」
しまちゃんは。
素知らぬふりで。
両手を振って。
振り返る。
「わーい。しまちゃん! 写真撮って」
小さな女の子が寄ってきた。
しまちゃんは。
屈んで。
女の子を抱きしめる。
「しまちゃん、ふさふさ!」
「はーい、撮るよ」
お母さんの声に。
ポーズをとるしまちゃん。
「しまちゃん。ありがとう。バイバイ~」
手を振り返すしまちゃん。
私は。
そっと振り返る。
花宮くんと瑠璃ちゃんの姿はなかった。
しまちゃんから。
半分だけ。
明日香に戻った私。
バックヤードの休憩室で。
スマホ片手に。
スポーツドリンクをごくごく。
花宮くんとのデート。
断ろ。
遊ばれちゃうとこだった。
「来週のデートだけど、ごめんね行けなくなった」
文句の一つも言いたいけど。
ここは。
大人びた対応。
学校生活もあるからね。
よし。
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