かいほう
高校1年の時。
同じクラスになってから。
気になっていた彼。
1年の終業式の時に。
デートに誘われた。
嘘かな。
夢かな。
なんて。
ワクワクして。
前日。
全然眠れなくて。
でも。
全然疲れなくて。
遊園地に行ったんだけど。
史上最高の早さで。
一日が終っちゃった。
そして――
この春から数えて。
今日は5回目のデート。
「海、行こうって」
私から提案した。
雅也は。
「海?」
って。
最初は渋っていたけど。
私が駄々をこねたら。
「しゃーねーな」
って。
オーケーしてくれた。
この日のために新調した水着。
赤と白のギンガムチェックのビキニ。
ホルターネックのトップスは。
胸元のリボンと小さなフリルの縁取り。
ショーツはウエスト部分に。
メロウ仕上げのフリルが二段あしらわれて。
サイドのリボンがアクセント。
かわいさと。
女の子らしさで。
少し挑発しちゃおうって。
だって。
付き合おうとか。
好きとかも。
まだないし。
作戦は的中だったのか。
私を一目見て。
雅也は目を丸くしていた。
でも。
悔しいけど。
それは。
きっと。
私もおんなじで。
細身の体型なのに。
がっしりした肩幅。
胸やお腹の筋肉に。
見惚れちゃった。
真っ青な空の下。
陽射しは。
夏模様だけど。
潮風は涼しくて。
海水は冷たくて。
気持ちいい。
波打ち際で。
水を掛け合って。
はしゃいで。
海に浸かって。
一緒に泳いで。
波に揺られて。
まどろんで。
いつもの楽しいデート。
でも。
今日は――
砂浜で水分補給。
少し向かい合う感じで。
腰かけた。
「雅也、どこ見てんの?」
「あ? どこも見てねーし」
「嘘だぁ、私の胸、見てたくせに」
「は?」
かわいい。
耳を真っ赤にして。
そっぽを向く雅也。
「だいいち、そんなでかくもないくせに」
「あ、傷つく」
口を尖らせる私。
「いや、悪い……ていうか、美音が変なこと言うから……」
「だって、見てたもん。女子は分かるんだよ」
私は顔を突き出して。
雅也をじーっと。
見つめる。
「はあ? だから……」
首をひねって。
うつむく雅也。
「ほらほら、こうしたら、少し大きく見えるでしょ? 見てもいいよ。雅也なら」
脇を締めて。
小さな膨らみを寄せてみせる。
雅也の視線だけが動く。
「どう?」
「ああ……」
喉仏が上下して。
頬が紅潮する雅也。
「触りたい?」
「ああ……いや、なに言ってんだよ」
「少しだけなら、触らしてあげる」
私は雅也の腕を取って。
自分の胸に近づける。
「おい!」
振りほどこうとする雅也と。
揉みくちゃになって。
「きゃっ!」
「わっ!」
両腕を抑えつけられて。
押し倒された私。
背中に広がる。
ざらざらした。
暖かな砂の感触。
時が止まった。
一瞬。
想った。
けたたましくなる。
私の心臓と。
潮騒の音が。
すぐに呼び覚ます。
覆い被さった雅也の顔。
少し違って見える。
はんびらきの唇。
潤んだ眼差し。
顔にかかる息。
抑え込まれた。
両腕に抵抗する意思はない。
そっと。
まぶたを閉じた。
暗闇に。
鼓動が。
一段。
早くなる。
あっ。
唇に。
ひんやりとした。
柔らかさが。
触れた瞬間。
ヤバイ……
心臓が跳び跳ねて。
呼吸は駆け足になって。
全身の毛穴が開いて。
血液が駆け巡って。
お腹からわいた熱が、
爪先から頭のてっぺんまで。
覆いつくして。
とろけて。
なくなってしまいそうで。
膝をこすり合わせて。
必死にこらえていた。
ぬくもりが離れて。
ゆっくりと。
目を開ける。
「これで、分かったろ?」
「な、なにが」
「俺は、美音が好きだってこと」
「……うん」
「煮え切らなかった、ちゃんと言わなかった、俺も悪いけど、からかうようなこと、もうすんな」
「どして?」
「あのな、好きな女が目の前で、しかも、こうして水着でいるんだぞ」
「だから」
「だからも、なにも、少し黙れ」
あっ。
また。
帰ってきた。
ぬくもり。
またまた。
ぐちゃぐちゃな私。
目を閉じた雅也の顔が。
目の前に。
けど。
すぐに離れて。
真顔の雅也。
「俺は、美音が好きだ。俺と付き合ってくれるか」
黙ってうなずく私。
鼓動も。
呼吸も。
ちぐはぐだけど。
言葉は。
ちゃんと。
心の奥に。
届いて。
刻み込んだ。
途端。
視線を逸らして。
唇を食んだ。
いつの間にか。
汗が滲んだ体を。
心地よい風が。
冷ましていく。
「じゃあ、触ってもいいか?」
「え? 今はダメ……」
ぶんぶんと首を振る私。
「ハハハ……」
笑い出す雅也。
「なによー」
「俺も今は触れない。ちゃんとしたいんだ。美音とのこと」
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