表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エッセイ・短編たちのおもちゃ箱  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
78/84

旅立ち

防波堤に腰掛けて。

潮風を浴びている。

鼻に馴染んだ匂い。

髪を撫でて。

セーラー服のリボンが踊る

目の前には。

私の大好きな景色が広がっている。


白く厚い雲が覆う空。

その所々の隙間から。

穏やかな入り江に。

幾重もの光の筋が。

真っ直ぐに降り煌めいて。

水面を銀色に染めている。


ちゃぷん、ちゃぷん。

防波堤にとろける波。

耳に住み着いた音。

対岸の山には。

気の早い桃色が。

1、2、3……6本。

今年もよろしくねって。

私を見ている。


ここから見える。

仙崎の港には。

沢山の漁船が止まっている。 


ぶるるるる……

左耳に届く船のエンジン音。

島を一周する遊覧船が。

お客さんを乗せて。

自慢気に通り過ぎていく。

私は両手を大きく振ってみる。

お客さんが気がついて。

応えてくれた。


空からの光が私を包む

肌が覚えているぬくもり。


そっと立ち上がって。

スカートをはたく。

両手でスカートの裾を握りしめて。

目をつむる。


深く空気を。

胸一杯吸い込んで。

ゆっくりと息を吐いた。


下唇をそっと噛みながら。

そっと。

瞼を持ち上げる。


移ろう景色を。

瞳の奥に焼き付ける。


だって。

今日で見納めだから。


私の家族は。

誰もいなくなっちゃった。


遠く。

遠く。

千葉にいる。

親戚に引き取られるんだ。


この島に帰って来れるのは。

いつになるのかな。

帰って来れるかな。


だから。

バイバイはしないよ。


もう一度。

空気を味わって吸い込んで。

両手を口に添えた。

「またねー!」

目に見えるもの。

見えないもの。

ぜーんぶに伝わるように。

ありったけの声を張り上げた。


お読み下さりありがとうございます。

感謝しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ