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『キリスト教という宗教組織を、イエスは作っていない。よってキリスト教の教祖は、イエスではない』


 組織のこの見解へ、大勢の人がこのような疑問を抱くと思われる。「教祖は、教えを最初に説いた人という意味だから、宗教組織を作る作らないは無関係じゃない?」 この疑問は、イエスの教えとキリスト教の教えが一致している場合は正しいと言える。間違っているのは、組織の見解ということになるだろう。だが、一致していない場合はどうなのか? イエスの教えと異なる教えを新たに創り、それを基にキリスト教を作っても、キリスト教の教祖はイエスなのだろうか? そうその場合は、キリスト教の教祖はイエスではない。そしてそれを、イエスが組織の一員だった白化組織は、知っているのである(地球時代のイエスは母さんと同じ、筆頭大聖者だったそうだ)。

 ではなぜ、イエスの教えとキリスト教の教えが異なってしまったのか? 最大の理由は、金(かね)が最重要の社会にある。イエスは金(かね)が最重要の社会の枠外にいたけど、キリスト教はその社会に組み込まれているんだね。イエスが内弟子達に「何を食べ何を着ようなどと思い悩むな」と説いたように、イエスはその社会の枠外にいた。内弟子達も、枠外にいたと記録されている。しかし時代が下ると信者の中に、その社会に組み込まれている者達が現れ始め、その者達が生活を盤石にする方法として選んだのが、キリスト教という宗教を作ることだったのだ。その者達がいわゆる、聖職者だったのである。

 しかし聖職者になることが、星の卒業の決定要素になることもあるのが地球の難しさだろう。聖職者になれば、イエスの「何を食べ何を着ようなどと思い悩むな」を実践しやすくなるのは事実といえる。あくまで実践しやすいだけだが、それらに思い悩むことが地球卒業を阻止する唯一の要素になっている人は、少数ながらいる。そのような人は、実践しやすい環境をありがたく受け入れて地球を卒業していく。よって聖職者になることが一概に悪いわけでは、決してないのである。

 誤解してはならぬのは、この一概に悪いわけではないというのは、


『金が最重要の社会において聖職者を金から守っているときのみ成立する』


 ということ。地球は金が最重要の社会ゆえ、一概に悪いわけではないという例外が存在する。けどそれは裏を返せば、金が最重要の社会でないなら例外は存在しないということになる。竜族に金はなく、今後も物々交換が少量生じるのみで金は存在しないため、例外は適用されないのだ。

 聖職者は基本的に、宗教組織がないと誕生しない。地球における最初の宗教は本体と無関係の事柄から生じ、それは百万年以上経っても地球の宗教に影響を及ぼし続けている。それを知る者、すなわちイエスや仏陀は、自分を教祖とする宗教を作らないつもりだった。だが二人の死後、聖職者が自分の生活を安定させるために、イエスや仏陀の教えを勝手に作り変えて宗教を創設した。竜族もそれは変わらないことを、音楽仲間達はアカシックレコードで確認したという。竜族の聖職者は、


  聖職者を誕生させるな


 という俺の言葉を勝手に作り変えて、誕生するそうなのである。むむう・・・

 ただ母さんによると、「勝手な作り変え禁止」を厳格化するだけでは不十分とのことだった。前世の俺が知らなかっただけで、大聖者によって創設された白化組織の下部組織が地球にあるらしい。その下部組織は、創設者の大聖者の言葉を勝手に作り変えないことを厳格に守っていたが、それだけでは不十分で混乱と不和が生じ大改革を余儀なくされたという。その理由として俺が母さんに教えてもらえたのは、


  鼻がエベレストより高くなっていた


 のみだったけど、さすが母さんと言うしかない。元地球人の俺は、その言葉だけで納得できたんだね。竜族と友達付き合いをしたのも無意識領域にその言葉が残っていて、教訓になってくれたのだと思う。どうかその下部組織も、教訓を活かされますように。

 話を戻そう。

 翼さんによると音楽仲間達には未着手の対策があり、それは「聖職者を誕生させないこと」らしい。同じく翼さんによると鈴桃が亡くなった数百年後、俺の残した「聖職者を誕生させるな」を勝手に作り変えることで、聖職者は誕生するという。両者の字面だけを追うと、その言葉を残したのが俺以外だったら勝手な作り変えは発生しないと思われ、そしてそれはあながち間違っていないように感じる。たとえば俺だけでなく、園長を始めとする老竜達と山風を始めとする成竜達と鈴桃を始めとする子竜達、及び土地神を始めとする妖精達、そして星母たる母さんも含む大勢の者が「聖職者を誕生させるな」との言葉を残していても、それを勝手に作り変えるだろうか? 数十万年も保管可能な本にその言葉が書かれていても、勝手に作り変えるだろうか? 勝手に作り変えるべく、竜族史上初の本を捨ててしまうだろうか? 件の本を捨てるのは、さすがに無いだろう。そしてあくまで個人の感想だけど、この「竜族史上初の本」が極めて重要に感じる。なぜなら、


『音楽仲間達がアカシックレコードで対策を考えた際、竜族に製本の話はまだ無かった』


 からなんだよね。ありていに言うと竜族が製本に挑戦したことによって、竜族の未来が変わったということ。そしてこれも、「聖職者を誕生させないことに音楽仲間達はまだ着手していない」に繋がる。音楽仲間達は製本に、まったく関わっていないからさ。

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