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このように心は、日々の生活においてその存在を忘れているモノの究極と言える。ということは、心ほど大切なものは無いということになる。にもかかわらず、偉大な宗教家が心とは何かを説明していないということが、果たしてあるだろうか? この星の超科学ですら意識を解明できていないのだから地球では言うに及ばず、それゆえ「心とは何か」を地球人が説明できないのは仕方ないのだろう。しかし宗教の教祖が説明できないのも、仕方ないのか? 実際は説明していたのに失伝してしまったり、意図的に捨てられたりした場合も確かにあると思う。よって現時点で説明していないからと言って教祖も説明できなかったなどと決めつけはしないが、少なくともイエスと仏陀が内弟子にそれを説明していたことなら俺は組織で教わっている。二人は本体との常時直結状態を獲得していたため、創造主から心に至る一連の繋がりを内弟子に説いていたのだ。ではなぜそれが、今のキリスト教や仏教に伝わっていないのか? それはイエスと仏陀の教えを宗教にした人達が、
究極に大切なのは心
ということを、微塵も理解していなかったからなのである。
みたいなことを、元地球人の音楽仲間は実体験を基に議論することが出来る。達也さんと裕也さんと舞ちゃんが前世を過ごした星の宗教も地球と似たり寄ったりなので、熱い議論を交わすことが可能だ。しかし、昇と奏と鷲と橙と晴と藍にそれは無理。この6人は、宗教のないこの星に連続して生まれているからだね。
脱線するが、前世の俺が大好きだった「オモウ〇い店」の店主さんには、心を最も大切にしている人達が大勢いた。お客さんに喜んでもらうのが一番のその人達にとって、売上は二番以降でしかないため、あまりの採算度外視っぷりに倒産を案じてしまうことが多々あったのである。同じように感じているお客さんは多く、米だの野菜だの肉だのを店主さんに差し入れしていたな。逆に金が一番の客は「店主は商売が下手」などと、宣っていたけどさ。
前世の祖国には、こども家庭庁なるものがあった。あんな対策しか講じられないキャリア官僚より、子供のラーメン代を格安にしたり無料にしたりする店主さんの方が、宇宙的には偉大なのだ。キャリア官僚達は、決して認めないだろうけどね。
話を戻そ・・・いや、関連付けられるかな。
頭が下がってならないオモウ〇店の店主さんや、子供のラーメン代を格安にしたり無料にしたりする店主さん達は、この星の社会では普通の人々でしかない。よって昇達6人があの番組を見ても、慣れ親しんだ日常としか感じられない。それは幸せなことではあるのだけど、何事も二面性を有するのがこの宇宙。貨幣の概念のない竜族が貨幣経済に移行するさい、実体験を基にお金の恐ろしさを竜族に説明することが、昇達6人には不可能なのだ。そして不可能なのは、宗教にも適用されるのである。
といった感じのアレコレを、俺と翼さんは時間を忘れて語り合った。それどころか、心の成長を阻む宗教を竜族社会に誕生させない具体的な方法も多々閃き、「この件はこれで完了かな」との思いが心を幾度もよぎったものだ。けど同時に、そのつど案じずにはいられなかったのである。前世の翼さんは、宗教に関する何を欧州で見聞きしたのだろう、と。
日本人は欧州の白人を敬虔なクリスチャンと思いがちだけど、実際は違う。廃屋になってしまった教会がどんどん増えているのが、欧州の現実。神父や牧師のなり手がおらず、教会に足を運ぶ人達も激減し、打ち捨てられてしまった教会が増えているんだね。出張でかの地を訪れる程度の俺に、原因は解らなかった。でも翼さんは、原因を実体験で知っているはず。竜族の件が片付いたら、腰を据えて話を聴かないとな。
などと非常に充実した時間を過ごすうち、残念人間の俺は今夜の本来の目的をコロっと忘れてしまっていた。それを、
「ところで翔さんは、今夜の本来の目的をまだ口にしていませんよね」「ヒエエ――ッ!」
と思い出させてくれた翼さん、いつも助けてくれてありがとうございます。
今夜の本命は、昇達6人をここに招待することに翼さんが同意するか否かを確かめることだ。招待する理由をしっかり説明せねばならないのは言うまでもないけど、いささか度を越してしまったらしい。よって今夜の本命を伝えたのち、度を越してしまったことを謝ったところ「楽しく充実していて竜族の役にも立つ時間をすごしたのですから構いませんよ」というように、ふわっと柔らかく翼さんは流したのだ。会話上は否定されたのに、否定されたという印象のまるでない翼さんに、ママ先生の思い出が次々湧き上がってくる。ママ先生は否定の意をきちんと伝えた上で、甘えん坊の俺が甘えるきっかけをいつも作ってくれていた。翼さんの教え子たちも、それはそれは幸せな日々を送っているのだろう。子供教育学を母さんに直接教えてもらった俺は巨大な敬意を込め、翼さんの言葉を待った。翼さんなら決して間違わないって、信じられたんだね。
「翔さん」「はい、何なりとどうぞ」「テレパシー送受信機の完成パーティーをこのコロニーで開きましょうという私の提案に、翔さんは同意しませんでしたよね」「はい、そうでした」「個人的には、あの件は今回の件より、皆をここに招待する良い機会だったと感じます」「どわっ、まことに申し訳ございませんでした~~!」
ベンチを降り芝生に正座する勢いだった俺を再びフワっと制し自らの考えを教えてくれた翼さんによると、このベンチから眺める壮大な景色をもってしても、昇達の宗教観の更新は不可能と翼さんは予想しているという。言われてみれば、俺は安直だった。この壮大な景色を見せた上で「竜族にも壮大な危機が迫っているんだよ」と説明すれば、昇達の宗教観を更新できるのではないかと考えていたのである。項垂れる俺に、翼さんは語りかけた。
「えっと翔さん」「はい、何なりとどうぞ」




