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 倒した木を脇に寄せる作業も、反重力装置と竜の尾によって素早く行われた。反重力装置で重さをほぼ0にした木を、尻尾で運んでもらったんだね。

 道の整地にも成竜の巨体は役立った。7トンの体重で勢いよく踏みしめれば、それで完了だったのである。盛土もカレンが持ってきてくれて、反重力技術が土木工事にどれほど役立つかを実感させてもらった。

 この島に元々いた若手竜達も新道敷設をもちろん手伝った。輝力腕を用いて反重力装置の設置や操作をしたり、道の小枝や石を取り除いたりと大活躍だったな。

 道路が伸びるにつれ、反重力技術は竜の移動手段としても役立つようになった。体重を20分の1にして、スキップするように作業場へ向かってもらったのだ。スキップでも間に合わなくなるのを見越し、反重力板の借用を政府に要請している。空の旅がてら作業場へ向かう日が来ることを、古参と新参の区別なく竜達は心待ちにしているようだった。

 俺はといえば、食料調達を担当した。18頭の成竜が毎日消費する食料は、かなりの量になるからだ。これについては予想外のことが起こり、それは幼稚園から離れた果樹を担当している妖精達に感謝されたことだった。「誰にも食べられず土に還るより、美味しいと言ってもらいながら竜に食べられた方が果物は喜ぶし、自分達も嬉しい」とのことだったのである。食べられて喜ぶというのは人間には難解でも、木が播種のために実らせた果物にとっては、自然なことなのかもしれない。

 そうこうするうち反重力板での空中通勤が始まり、新道の敷設速度は更に増した。時短もさることながら、空を飛ぶことが比類ない喜びをもたらし、竜達のやる気を爆発させたようなのである。前世の地球で土木工事や建設工事の工期延長に慣れていた俺にとって、終了予想日がどんどん前倒しになっていく様子は、まさにファンタジーだったな。

 かくして工期を大幅に短縮し、島の環状道路は完成した。力を合わせて新道を敷設したからだろう、古参竜と新参竜はいつの間にかすこぶる仲良くなっていた。お陰で環状道路完成の夕食会は盛り上がり、二日酔いの竜が続出することになった。でも仲が良いなら、それが一番だよね。

 環状道路完成後は、農場と工場の建設予定地の整地を始めた。これもみるみる終わり、竜族史上初の農業を行う日になった。ホントは畑造りもれっきとした農業なのだけど、竜族全体の記念日としては、紙の原料となる楮を植える日を農業開始日にしたのである。山風夫妻が、耕された農地に楮の挿し木を植える。母さんが連れてきてくれた大風と慈雨、各島からかけつけた頭竜達、そして子竜を含むこの島の竜達、それら全ての竜が、


「「「「ガオ――!!」」」」「「「「キュルル~~!!」」」」


 と、喜びの雄叫びを一斉に上げたのだった。

 楮の挿し木は、この諸島ではおよそ2年で収穫可能になる。紙を漉(す)くさい用いる黄蜀葵(とろろあおい)は1年で収穫だから、2年後までに竈を完成させることになった(練習用の竈はすぐ取り掛かる予定)。必要なのは、枝を蒸すための竈と、皮を煮るための竈の二基だね。貯水槽は焼き煉瓦を用いるため竜族が自作するのは数十年先とし、それまでは人類が提供した物を使うことになっている。焼き煉瓦貯水槽の計画を排し、輝力製貯水槽で全てを賄う確率も意外と高いけどさ。

 ちなみに楮の枝を蒸す竈は椿の種を蒸すためにも使うし、楮の皮を煮る竈は様々な物を煮るためにも使う。二種類の用途は時期を融通できるから、竈は二基で足りるんだね。とはいえ植えた椿が収穫可能になるには、まだ三十年近くかかる。つまり椿油製の蝋燭で煤を作り、その煤に澱粉を混ぜて墨汁にするにも三十年近く掛かるということ。それまでは竜の鱗を売却し、墨汁を購入する手はずになっている。大量生産していない天然成分のみの墨汁の値段を侮るなかれ、大人気の竜の鱗をもってしても1枚で5リットルがせいぜいだったのだ。もっとも最高級の白い鱗10枚を競売にかけることで、10キロリットルを確保済だけどさ。

 話を竈造りに戻そう。

 耐火セメントがあれば、あとは粘土と石を調達するだけで竈は作れる。しかしアルミを用いる耐火セメントになぜか不安がよぎりアカシックレコードを調べたら、アルミは竜族に有害なことが判明した。よって本体に訊くというチートをしたところ、


「ローマンコンクリートの元になった古代アトランティスの天然コンクリートを、美雪なら調べられるよ」


 と返って来た。正直、大興奮した。ローマンコンクリートこそは、真のオーパーツだからだ。前世の地球のコンクリートが100年前後の寿命なのに対し、古代ローマで使われていたローマンコンクリートの寿命は、2千年以上とされるほどなのである。しかも製法に不明な部分が多々あるとくれば、大興奮して当然と言えよう。俺はさっそく美雪に、古代アトランティスの天然コンクリートとローマンコンクリートの関係を尋ねた。

 美雪は母さんの好意により、地球に関する膨大な情報を所有している。情報は古代アトランティスにも及び美雪と数分やり取りしたところ、耐火性に優れる古代アトランティスの天然コンクリートをこの星なら製造できることが判明した。更に加えて、


「昇さんの『妖精を見る会』に専門家が複数いるみたい」


 と教えてくれたものだからさあ大変。俺は美雪をお姫様抱っこし、クルクル回って感謝を伝えたのだった。

 竜族と親交のある昇は、竜族を心から愛している。よって喜んで協力してくれて話はとんとん拍子に進み、火にとても強い古代アトランティスの天然セメントを格安で作ることに成功した(セメントに水や砂等を混ぜて固めたものがコンクリートだね)。その根底にあるのは、妖精を見る会の会員が大切にしている自然への愛だった。環境汚染皆無なのに耐久性と耐火性に優れる件のコンクリートは、会員達の眼鏡に叶ったのである。特許も放棄し、製造方法を無料で公開していたな。

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