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映画の期間とトウモロコシの栽培期間が一致すると判明しやる気を益々燃え上がらせた俺達は、続いて絵コンテを制作した。これは俺が担当し、天風半島の畑を幾度も使わせてもらった。翼さんの父君の武さんは、前世が日本の豪農だった関係で日本の鍬を生前に作り、それが倉庫に今も保管されていた。それを借りて休耕地で畑を起こし、畝を作り、種モドキを蒔いた。またトウモロコシの世話に通じる世話を、花壇の花にしていった。それらの体験と、それらを行う自分の映像と、美雪に教えてもらったトウモロコシの栽培方法を基に、絵コンテの草案を作った。それを農学者の秋宏さんに監修してもらい、数々の助言と修正を経て、絵コンテは完成したのである。
ちなみに絵コンテを介し、秋宏さんは「となりのトト〇」に興味を示した。翼さんが大絶賛していることを知り、奥様の茜さんと一緒に見てみたいと請うてきたので俺の映写機をお貸ししたところ、夫婦そろってド嵌りした。自然豊かで田畑の多い天風半島はトト〇の風景と非常に似ているし、お二人は妖精と親交があるし、かつお二人は清らかな心と豊かな情緒を持っていたから、それで当然だったんだね。秋宏さんに勧められ鷹さん夫妻と颯夫妻と蒼夫妻も視聴したら全員ド嵌りし、「この映画は天風の子供達に必須の映画である」と臨時当主会議で直ちに決まったそうだ。次の夏季休暇に天風の子供達及び親達を帽子堂に集め、映画試写会を開くよう準備を進めているという。その時は音楽仲間達で造った72fps版を貸す予定になっていて、みんなとても喜んでいたな。
ヤバい、脱線が過ぎた。話を大幅に戻すことにしよう。
テレパシー送受信による「となりのトト〇」の吹き替え作業は、4カ月という長期計画のもとに行われた。長期になった理由の一つは、竜族社会に無いものの紹介はテレパシーでも難しいと予想されたからであり、その解決策として新映像を追加することになった。調べてみたら映画の期間とトウモロコシの栽培期間が見事に一致し、創造主の意志を感じ取った俺達は、絵コンテを作成した。それを基に24fps版を全員で分担して造り、内蔵AIの力を借りてそれを72fpsにした。追加映像の場面は5つ、累計時間は4分弱だったが、セリフ込みの制作期間はなんと3カ月に及んだ。吹き替え作業の4カ月のうち3カ月は、新映像の追加に費やされたってことだね。追加映像が農業以外にもあったら、放映予定日に間に合いこそすれ過酷な日々を送ることになっただろうな。
そう実は、追加映像不可避だったのは農業だけだった。なのになぜ作業が長期化したかと言うと、テレパシーの特性も理由として大きかった。テレパシーは一瞬で終わるけど、そのセリフを言っている登場人物の口は、数秒間動き続けている。その違和感の解消が、難しかったのだ。
何気にこれは、大変だった。登場人物の口が動くと同時にテレパシーを再生するという方法だけでは、すべての違和感に対応できなかったのである。試行錯誤の結果、「テレパシーを複数回に分けて再生する方法」と「口の動きを変更する方法」の二つを加え、三つの方法をやりくりして違和感を解消することになった。またこれについては、特記せねばならぬことがある。それは、竜語に精通している美雪の協力なしではテレパシーの複数回分けは無理だった、ということ。美雪も皆に感謝されて喜んでいたし、良かった良かった。
口の動きを変更する方法にも、多少の難しさはあった。たとえばセリフが3秒間続く場合、どのタイミングで口を開けさせてテレパシーを再生すれば違和感がないかということを、一つ一つ見極めねばならなかったのである。ただこれは、竜族とテレパシーで交流してきた経験が全員にあるのでさほど難しくなかった。もちろん違和感の有無を、複数人で確認したけどね。その確認作業の方が、口の動きを変更するより長く掛かったくらいだったな。輝力静止画の口の部分だけをチョチョイと変えれば、それで完了だからさ。
かくして二つの理由により、俺達は吹き替え作業に4カ月を費やした。その二つはテレパシー声優としての本来の仕事ではなく、ではテレパシー声優としての仕事はどうだったかと言うと、100点に近い評価をして良いと思う。吹き替えたテレパシーはどれも感情豊かで、かつとても心地よかったんだね。
その理由は複数あれど主理由は、人柄と配役が合っていた事だったと思う。しっかり者の長女のサツ〇と、切れ者の印象のある鈴姉さん。自由で可愛い次女のメ〇と、この星の女性では希少な可愛い印象の小鳥姉さん。お婆さんの人間性の深さは5万余歳の母さんでないと引き出せなかったし、勇はお祭り男の面は異なれど父親としての包容力はピッタリだったし、自分の病気のせいで娘達に苦労をかける母親の胸中を心の傷を未だ抱える舞ちゃんは見事に再現していた。サツ〇に何だかんだ言って恋をしているカン〇と恐妻家ながら鈴姉さんが大好きな裕也さんは似ているし、大音量で「ガオ―!」と吠えるトト〇はバリトンボイスの脳筋男でも優しい達也さん以外あり得なかった。とまあ、こんな感じだ。俺の猫バ〇も、虎鉄と美夜のお陰で好評だったな。
テレパシー声優関連の仕事は、吹き替え作業として計画した4カ月を丸々使って行い、作業量と作業難度に差は終始なかった。また新映像の追加作業は、4カ月の最初の3カ月で行った。ということは最後の1カ月が余ることになり、その1カ月で俺達が何をしたかというと、「歩こうを連呼する歌」の映像を制作していた。母さんの友人さんの映写機に入っていたその歌の映像には友人さんの編集した静止画が使われており、「これって正式な映像ではないのね」「そうだよ」系のやり取りを仲間達とした結果、
「俺達版の動画を創っちゃう?」「「「「さんせ~~い!!」」」」
となったのである。2分40秒の動画をたった1カ月で創れてしまったのは、分身能力や時間加速能力より、創作動画制作に皆が慣れたからなのだと俺は考えている。




