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かくして子竜達は一転してワクワク顔になり、そんな子竜達に今後の展開を予想した成竜達もワクワク顔になったところで、俺は最後の質問に答えた。そうつまり質疑応答の時間が終わり、次の何かが始まるってことだね。始まる何かへの期待が高まっているのだろう、子竜と成竜の区別なくキラキラお目々を俺に向けている。そんなお目々をされたら、こちらも張り切ってしまうではありませんか。俺はまず、声高々に宣言した。
「それでは最後に、冬期休暇前に上映した映像作品を、再演します!」
竜達が一斉に飛び上がった。よほど嬉しいのかそれだけでは足りないらしく、竜達はクルクル回りガオガオキュルキュルやっている。巨体の四つ足ゆえ三拍子で一回転するのは無理でも半回転は可能っぽいから、二小節で一回転するワルツが流行るかもしれないな。などと予想しつつ俺は続いて、声高々に暴露した。
「ちなみに映像作品を再演するよう俺に依頼したのは、創造主ですからね~~」
竜達が一斉にピタリと止まった。嬉しさのあまり、一時的に身動き取れなくなったのである。ではその反動は、ハッチャケなのか? それとも、感動にむせび泣くのか? 数秒後の竜族に訪れたのは、後者だった。そんな竜族を刺激せぬよう音楽仲間達は輝力体を少しずつ希薄にしていき、透明になってから自分達の観客席に戻り、密度を少しずつ上昇させていった。俺だけは輝力体じゃないから、蜃気楼壁を使って演壇を去ったけどさ。
音楽仲間達が演壇をひっそり去ったことに竜達が罪悪感を抱いたら、少々面倒なことになる。よって頃合い的にちょっぴり早いが、「再演準備できました~!」と俺は声を張り上げた。竜達は慌てて涙を拭い、姿勢を正して演壇に正対していく。最後の一頭が準備を整えたのを見届け、俺は映写機の再生ボタンを押した。
その、約3分後。
上映を終え、20秒と少しが経過したころ。
「創造主様、まことにありがとうございます」
映像作品再演の理由を知った俺は、天を仰ぎ創造主に感謝を述べた。子竜達が一頭も漏れることなく、飛行能力を再獲得したからだ。20頭の子竜達は今、地上1メートルの空中に浮いている。映像の途中から子竜達の松果体がグングン活性化したので共鳴しやすいよう手助けしたら、子竜達の共鳴率は俺の想像を超える数値になった。これなら挑戦に値すると判断し、鈴桃に飛行器を活性化するようテレパシーで促したところ、鈴桃に引っ張られ子竜達の飛行器も今までで一番活性化した。おそらく創造主の導きなのだろうその現象は映像の最後と重なり、多数の竜達が大空を飛ぶ様子を見た子竜達は、
空を飛べないという思い込み
を見事吹き飛ばしたのだ。かくして足枷が取れ、子竜達は今こうして、地上1メートルを浮遊することになったのである。
実を言うと、俺が竜族と関わるようになった当初の予想では、子竜達はもっと早く飛行能力を再獲得しているはずだった。その理由を、輝力工芸スキルや楽器の練習に時間を割いているからと俺は説明していたけど、ホントは違った。竜族を数十万年間縛ってきた「空を飛べないという思い込み」を、子竜達は手放せなかったのだ。
しかし「手放せない」ということを意識すると、益々手放せなくなってしまう。数十万年に及ぶ呪縛には、そのような作用があるんだね。よって輝力工芸スキルや楽器の練習に時間を割いているからという事にすると共に、飛行器の活性化訓練も地道に続けていった。それが実り子竜達はきっかけさえあれば空を飛べる状態になり、そしてそのきっかけを、創造主が直々に授けてくれた。これが今回の、真相だったのである。
その真相に、成竜達は驚喜した。子竜全員が飛べてただでさえ嬉しいのに創造主が直接関わったのだから、それで当然だろう。だが驚喜するも、1カ月半前の鈴桃の飛行時に俺が鈴桃を防音壁で包んだことを後から知った成竜達は、爆発しそうになる喜びを必死で制御していた。愛する我が子が空を飛んだのに心の赴くまま喜べない親の胸中を思うと不憫でならず、防音を施すからどうぞ喜んでくださいと俺は促した。しかし成竜達は頑として聞かず、竜族はなんて高潔なのだろうと感動したのだけど、己の考えなし振りを俺は叱ることになった。喜びの制御に成功していた成竜達に、どうぞ喜んでくださいと促すことで俺は揺さぶりをかけ、それを突っぱねることで成竜達は制御をどうにか保ったのに、俺が感動したことでとうとう制御不可能になってしまったのだ。なんと成竜全員で、俺に「ナンマイダ~」を始めやがったのである。今すぐやめて欲しかったが原因は俺だし、またナンマイダ~が代償行為であることも明白だったため、己への罰としてそれを受け入れることにした。そんな俺に母さんが笑いを懸命に堪えていたのは、涙目になったけどさ。
俺のことなどどうでもいいので話を進めよう。
子竜20頭の浮揚を、上昇気流を作ることで助けてくれたのは、この島の風妖精達だった。葉月さんによると、風妖精達は子竜一頭一頭の担当を決め、密かに訓練していたそうなのである。俺は風妖精達に謝意を述べ、近いうちにお菓子を振る舞うことを約束した。妖精族の特徴なのだろう風妖精だけでなく全ての妖精が喜んでいて、俺も野暮なことは言わず島の全妖精にお菓子を振る舞うつもりだったが、葉月さんもご相伴にあずかるつもりでいたのは少々解せなかったな。今もちゃっかり、俺の隣で万歳してるしさ。
もちろんこの島の土地神も葉月さんと並んで万歳していて、何気に土地神と俺はとても仲が良いんだよね。カレンに搭乗してもらい宇宙に招待してから、友達付き合いをするようになったのである。ただ一時期「私も妖精長と同性同年齢の容姿になろうかな」などと宣っていたのにはマジ困り、今のままでいるよう泣いて懇願したものだ。「どうしよっかな~」「なにとぞ勘弁願いまする~」というやり取りを面白がっていただけと土地神は言ってるけど、掘り返してはならないと直感が叫ぶのでそれに従っている。




