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 その日は美雪に頼み、テレパシー送受信機に関する最新情報を、名家巡りの最中も逐次教えてもらうようにした。それによると動作確認は、人から送られたテレパシーを機械が受信する検査で、言い換えると「人がテレパシーを試作品に送る検査」で暗礁に乗り上げたらしい。そりゃそうだ、研究者達にとってテレパシーは未知のものなので、テレパシーを送ることができなかったのである。研究者達もすぐそれに気づき、昇達に連絡し助言を請うたという。美咲に「お酒臭い」と逃げられ、逃げはせずとも近づくと鸞と藤に微妙な顔をされ傷ついていた昇達にとって、それは救いだったのだろう。昇達は喜んで協力し、テレパシーの送り方を説明しささやかな訓練をした。すると某女性研究者がテレパシーを送ることに成功し、他の女性研究者達も次々成功させたとのことだった。俺も経験あるが、変化した状況に身構えず流れに身を任せるのは、男より女の方が得意なんだよね。もちろん、例外はいるけどさ。

 例外とまではいかずとも、女性研究者達が続々成功させるのを見て思い込みが外れたのか、男性研究者達にも成功者がちらほら現れるようになった。お陰で人が送ったテレパシーを機械が受信する検査はサクサク進み、午後3時に終了したそうだ。

 ならば残されているのは本命の、人が機械からテレパシーを受け取る検査だ。それをする前に被験者の抽選があり、そしてその抽選前。棄権者の有無を立候補者達に改めて問うたところ、棄権者は一人もいなかったという。かくして抽選に入ったが美雪によると、


「翔にだけ教えて良いって母さんが許可してくれた。抽選は、母さんが介入したそうよ」


 とのことだった。同意のテレパシーを母さんに素早く送ったところ、「ありがとう」とすぐ返してもらえた。子供達の指導中でなかったら、尻尾ブンブン不可避だったな。

 それは置き母さんの介入により、被験者が選ばれた。被験者は、テレパシーを送ることに初めて成功した女性研究者だったのである。テレパシーとの親和性に最も優れ、かつ心の成長したその人を選んだ母さんには同意しかなかったな。

 美雪によると、その人はまず脳の精密検査を受けねばならぬという。当然極まる措置だろうと、俺は凡人。精密検査の終わる1時間後が、待ち遠しくてならないというのが正直なところだ。俺は気持ちを切り替え、子供達の指導に集中した。

 という俺の1時間は、母さんの手の平の上だったらしい。1時間というのは脳の精密検査だけをする時間ではなく、機械の送ったテレパシーを人が受信する検査もする時間だったのである。母さんが後者を伏せた理由は、間違いなく俺への戒め。指導に悪影響が出ぬよう意識分割して美雪とやり取りしようと、筆頭大聖者である母さんにとってそれは手抜き指導に分類される。「まったく何をしているのですか、子供の指導は全力でしなさい!」 母さんはそう、俺を戒めたのだ。俺は母さんに謝罪と感謝のテレパシーを送り、子供達の指導に集中した。

 1時間半後の、午後5時半。食事会の最中に、機械の送ったテレパシーを受信する検査の今日の分を終えたことを美雪が教えてくれた。結果は、見事成功。被験者の女性は機械の送ったテレパシーをすべて正確に受信し、かつ脳に異常は一切見られなかったそうだ。俺は胸中ガッツポーズし、美雪にテレパシーで尋ねた。


「今日の分を終えたってことは、経過観察をするってこと?」「正解。明日の午前9時に、脳および体の精密検査を再び受ける。異常がなかったら被験者を4人追加してテレパシー受信の検査をして、明後日の午前9時半にその4人と最初の被験者の全員に異常がなかったら、初期検査は終了。経過観察は今のところ、5年を目途にしているみたい」「脳が絡むからそれで妥当か。昇達が立ち会う性能実験は、いつ行うのかな?」「明後日12日の午前9時半に、追加された4人の精密検査が終わる。異常なしなら、同日午後1時に性能実験開始のようね」「了解。ちなみに立ち会う人は?」「研究者を除くと司令長官を含む全司令官と、大統領と科学技術大臣ってところ」「それなら平気だね」「はあ、翔ったら」


 美雪は呆れ声で俺に問うた。「司令官全員と大統領と科学技術大臣に立ち会われても平気なら、誰だと平気ではないの?」 問われたので改めて考えたところ、姦しい女性達の視線の集中砲火を浴びない限り、俺は動揺しないらしい。そう素直に答えた数秒後、クスクス笑う美雪のテレパシーが届いた。テレパシーには相手の感情や表情が乗っかりやすく、それによると美雪のクスクスに裏は一切ないようだ。嬉しくなった俺は美雪とテレパシー会話をその後も続け、食事会を楽しんだのだった。


 2日後の、1月12日。

 テレパシー送受信機は検査の悉くに合格し、午後1時からの性能実験を待つのみとなっていた。鷹司令官がこっそり教えてくれたところによると、俺も性能実験に立ち会わせようとする動きがあったらしい。10人の司令官および大統領を科学技術大臣は、テレパシー送受信機の裏話を知っているようなのだ。輝力製のテレパシー送受信機を創り、その設計図を書くことの二つなら、俺は昇達の数カ月前にできたことを。

 しかし工廠の研究者達はそれを知らなかったため、俺を立ち会わせようとする動きは消えたという。まこと、嬉しい限りだ。面倒事を回避できたのもあるがそれ以上に、


「「「「先生―――ッッ!!」」」」


 幼稚園に戻ってきた子竜達をこうして出迎えられたんだからね。今日は、子竜達の冬期休暇の最終日。故郷で元気をたっぷり蓄えて帰ってくる子竜達を海岸で出迎えることは、俺の大きな喜びなのである。俺達のいる海岸目指して泳ぎながら輝力の腕を盛んに振ってくれる子竜達に、負けじと俺も両手をブンブン振りつつ、胸に込み上げる温かな思いを噛みしめていた。

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