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ほどなく昇と奏、鷲と晴、橙と藍が食堂に現れ、盛大な拍手と歓声が巻き起こった。6人は照れつつもやはりラブラブで、鸞と藤が心配になり目を向けたところ、舞ちゃんが上手くフォローしてあげていた。俺のフォローより効果抜群らしく、2人の拍手の音は俺と勇を上回るほどだったのである。保育士の凄さを、思い知らされた俺だった。
拍手喝采の後は、スピーチに移るのが定番。昇と鷲と橙は短いながらも心のこもった言葉を述べ、食堂を沸かせていた。奏と晴と藍も声を揃えて感謝を示し、涙ぐんでいたこともあり一番大きな歓声を浴びていたな。
その後の朝ご飯では、昇と鷲と橙が驚嘆すべき食欲を示した。3人にしたら35時間ぶりの食事なので当然でも、場は盛り上がるもの。奏と晴と藍が、夫の世話をかいがいしくしているなら尚更なのだ。仮に3人が食べ過ぎて動けなくなっても冬期休暇は今日を除いてまだ5日間あるし、問題ないかな。
と思うも、俺は今日もその後の5日間も出かける身。つまり、さほど手伝えないってことだね。ならばと俺は美雪に請い、昇と鷲と橙の今後の予定を文書化した。
[1] テレパシー送受信機の詳細な設計図を作る。この装置は現在の工業技術で製造可能でも、斬新な概念を多数用いているため設計図に解説等の添付は不可欠。美雪の試算によると設計図の完成には、500時間必要とのことだった。
[2] 完成した設計図を人類軍の工廠へ送る。美雪によると工廠は昨日から稼働しており、設計図を送っても休日出勤を強いられる人はいないらしい。
[3] 設計図を基にテレパシー送受信機を工廠で造る。量子AⅠの管理する完全自動工廠ゆえ昇達の立ち合いは不要でも、設計図に誤りがあったりテレパシー送受信機が作動しなかったりしたら連絡を取るか、もしくは工廠へ足を運ばねばならなくなる。
[4] 製造されたテレパシー送受信機の性能実験に立ち会う。さすがにこれは、立ち合い必須。必須ゆえ出勤日になるが、1月15日以降だと教導官の仕事を休まねばならぬため、14日までに性能実験を行うことを3人は望んでいる。
とまあ、こんな感じかな。普通なら[1]の「設計図の完成には500時間必要」により冬期休暇中の完成を諦めねばならぬが、昇と鷲と橙は選りすぐりの戦士でもある。各々が10体に分身し輝力圧縮10倍で設計図を作れば、作業効率は約31.6倍になる。3人合わせれば約94.8倍になるため、5時間16分あれば設計図は完成するのだ。もちろんこんな単純計算のとおりになるなどあり得ないが、誤差は微小と俺の勘は囁いている。
という訳で美雪に礼を言い、昇と鷲と橙の今後の予定を単純計算も含み勇に見せた。
「翔の勘は、誤差は微小と囁いているんだな」「うん、そう。それを昇達に伝えるかは、勇に任せるよ」「了解した。そろそろ出発だろ、後は俺に任せろ」「頼りにしてます」
勇と拳を合わせ、席を立つ。「勇は頼りになる漢だ」との気持ちを込めて舞ちゃんに頷いたところ、「当然よ」的に舞ちゃんは胸を張った。いやはや、頼りになる夫婦である。俺は鸞と藤の頭をワシワシして、食堂を後にした。
名家巡りの午前の部は、8時に始まる。よって前回の長期休暇までは7時40分に基地を出発していたが、今回は20分前倒しするよう心掛けている。これは、カレンの功績。今回の名家巡り初日、急ぐよう頼んでいないのに、カレンはいつも以上にかっ飛ばして天風半島に着いた。すると翼さんが駐車場で俺を待っていて、カレンの慧眼を称えたものだ。後で子細を尋ねたところ、翼さんが普段の何倍もソワソワして玄関で俺を待っていることを冴子ちゃんから聞き、悪いと思いかっ飛ばしたとのことだったのである。いずれにせよ、カレンの慧眼を称えることに変わりはない。その一環としてそれ以降も、20分早く出発することにしたってことだね。
またカレンのかっ飛ばしにより、予想が正しかったことも判明した。それは「天風家の駐車場に俺が到着する何分も前から、翼さんは玄関で俺を待っている」という予想だった。俺が天風半島を訪れるのは夏季休暇か冬期休暇なため、駐車場で俺を待っていたら夏の暑さや冬の寒さに晒されることになる。よって出迎え不要を俺は翼さん頼み概ね守ってもらえていたけど、玄関内もしくは玄関先も駐車場と同じにしてとは言えない。このどちらにも翼さんがいなかったことは一度もなく、屋敷内にいれば玄関の出迎えに間に合っても、「翼さんは玄関で俺を待っているんじゃないかな」と俺は前々から予想していたのだ。繰り返すがそれは当たり、かつ玄関での待ち時間もカレンのお陰で予想可能になった。今回の名家巡り初日は十分以上早く到着したのに、冴子ちゃんが「翼は普段の何倍もソワソワして玄関にいる」とカレンに伝えたということは、20分近く前には玄関にいたということになるからだ。ならば20分早く基地を出発すれば、丁度良いんじゃないかな。そう思い、7時20分に基地を出発することにしたんだね。
それが実り翼さんを待たせる時間を減らせたかは定かでないが、今朝も翼さんは玄関先で俺を出迎えてくれた。屋外には変わりないため地球だったら止めてくださいと懇願できても、超高性能暖房機能付きの超高級コートをしっかり着ているとなればそれは不可能。案じる顔もご法度なため俺は今日も今日とて、
「おはよう翼さん」
と、爽やかに挨拶したのだった。




