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 それに引き換え三人には、体系的知識が十分あった。機械の仕組を、脳に蓄えた知識に照らし合わせて理解できたのだ。それは部品一つ一つに及び、三人はテレパシー送受信機(以下、送受信機)を隅から隅まで理解した。そして事前に決めていたとおり準四次元へ各々飛び、まずは輝力で送受信機を再現した。完全に理解し十分な知識があってもそれは容易ではなく、だが困難を極めるなんてことは更々なく、100時間後には輝力製の送受信機を完成させることが出来た。時間を200倍速にしていたから、三次元では30分だね。完成後に休憩を取り、しかし三次元世界に帰らず、三人は送受信機を抱えて研究所へ瞬間移動した。三人は準四次元に、共同の研究所を創っていたのだ。多少のズレはあっても三人は研究所で合流し、各々の送受信機を披露し、そして自分以外の二人の送受信機を徹底的に調べた。それにより三人は、宇宙の真理の一端を見たらしい。それは、


『人には得意分野があり、各々が自分の得意分野を活かすことで全体に貢献する』


 というものだった。どういうことかと言うと、三人の送受信機は各々の得意不得意が性能の一長一短として現れていたため、それぞれの良いとこ取りをしてようやく送受信機は、完成したという事だったのである。


「どの送受信機もきちんと作動しましたが」「三つの良いとこ取りをしたら性能が段違いになり」「三人で力を合わせてきて良かったって、ガン泣きしちゃいました」


 昇と鷲と橙は泣きはらした目でそう白状し、しこたま照れていたな。俺は三体に分身し、三人にプロレス技を掛けまくったものだった。

 そのプロレス技を掛けたのは、三人の準四次元の研究所。ちなみに、球の内側に目が無数にある云々のたとえ話を俺がしたのも、その研究所だ。三人は俺の夢を訪ねテレパシー送受信機の完成を教えてくれて、4人でここにやって来たってことだね。研究所の中央に鎮座するテレパシー送受信機の受信と送信を俺も試したところ、驚きの高性能だった。母さんの友人さんにお借りしている、古代アトランティスのテレパシー送受信機に等しい性能だったのだ。「お前らスゲーな!」「「「はい、凄いです!」」」とやり取りしたら自然に万歳三唱することになり、すると流れ的に「今夜は飲むぞ!」「「「ヒャッハ—!!」」」となって4人で酒盛りした。昇と鷲と橙はよほど嬉しかったのかグデングデンになり、俺も翼さんのお陰で酔うことができた。肉体で酔っぱらった感覚を、準四次元で再現できたのである。翼さんに今度会ったら、篤くお礼を言わないとな! ヒャッハ――ッ!!

 

 という訳で、明けて1月8日。

 早朝訓練をすべくいつもの時間に目覚めるや、俺は首を捻った。準四次元で開いた酒盛りのアルコールが、極々僅か体に残っている気がしたのである。すぐ美雪を呼び事情を説明し、基地型飛行車に赴き、健康診断キットを引っ張り出して健康診断を受けたところ、アルコールも酔いの症状も検出されなかった。「納得できたような? 納得できないような?」が本音だ。ならば白黒つけようということになり、本体に協力を求めた。俺が保有しているネガティブ量を、測定してもらったんだね。本体によると、昨夜と今朝の差はないとのことだった。アルコール自体はネガティブではないし、昨夜の酒盛りの動機もネガティブではない。したがって当然の測定結果とも思えたが、数十年に一度の頻度にすべきという声が心の耳に届いた。それを天啓とし、準四次元酒盛りは寿命を迎えるまでに一度ないし二度に抑えることを俺は決めたのだった。

 

 十分近く遅れるも早朝訓練を無難にこなし、基地型飛行車の食堂を再び訪れた。冬期休暇で加わったメンバーも含み、朝食はここで食べるようにしていたのだ。が、そこに昇と鷲と橙の姿はなかったのである。

 とはいうものの、深刻さはなかった。奏と晴と藍によると、「眠すぎて」「どうしても」「寝ていたいそうです」とのことらしい。俺は美雪にテレパシーで語りかけた。


「俺も今朝、極々微量の違和感があったよね」「うん、そうね」「あれは俺だったから、あの程度で済んだのかな?」「翔の健康診断の結果を三人のAⅠと共有し、昇さんと鷲さんと橙さんの簡易健康診断をしてもらったの。唯一の診断結果は、寝不足だったみたい」「美雪の見解は?」「寝不足に同意。翔も、眠そうな顔をしていたしね」


 美雪によると、俺の肉体から寝不足を示唆する物質は検出されなかったが、40年以上の付き合いのある美雪の目には、俺の寝不足顔がはっきり映っていたという。ホント言うと、ガッツポーズしたいほど嬉しかった。でも鸞と藤が「「お父さん大丈夫かな」」と非常に心配していたため、ガッツポーズは封印するしかなかった。のだけど、


「お兄ちゃんお兄ちゃん」「美咲、耳元に飛んできてどうしたんだい。内緒話かな?」「うんそう。だってお兄ちゃん、嬉しい気持ちを我慢していたから」


 美咲にはバレバレだったらしい。俺は小声を心がけ、美咲を褒めまくったのだった。

 昇と鷲と橙はここ数週間の頑張りの反動なのだろう、昼になっても夕方になっても目覚めなかった。すると美雪がテレパシーで教えてくれたところによると、奏と晴と藍が心配しだしたらしい。俺は、心の中で頭を抱えた。心配しだしたということは、テレパシー送受信機が完成したことを、奏と晴と藍は知らないということ。知っていれば「張り詰めていた神経が緩み、押さえつけていた疲労が噴出したのかな」のように、眠り続ける原因を推測することで不安を遠ざけられたが、知らなければそれは不可能。夫が原因不明の睡魔に見舞われ夕方になっても起きないとくれば、夫を案じて当然なのである。なのになぜ俺は頭を抱えたかというと、


  奥様が知らないことを俺は知っているから


 に他ならない。テレパシー送受信機が完成したことを、昇と鷲と橙が真っ先にそれぞれの妻に報告していたら、奏と晴と藍はどれほど喜んだのか。想像は極めて容易といえる。だが実際は報告しておらず、そして奏と晴と藍が心配しだしたとくれば、俺が決めねばならなくなったのである。テレパシー送受信機の完成を伝えて奥様達を安心させるか、それとも伝えずに安心させるかの、どちらにするかを。

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