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 今回の冬期休暇では美雪も大活躍し、中でも最も活躍したのは、舞ちゃんと同じ料理だった。家事ロボットに入った美雪がいなければ11人の料理を朝昼晩作り続けるのは不可能だったと、女組全員に称賛されたほどだったのである。称賛された理由には、小鳥姉さんの料理を好む俺のために長年かけて小鳥姉さんの料理を再現してきたことも含まれていた。小鳥姉さんの一番弟子を名乗る舞ちゃんは、殊の外それを喜んだ。二人はテレパシーで楽しげに会話しつつ、台所にいつも並んで立っていたな。

 ヤバい、思い出しただけで視界が霞んでしまう。美咲と葉月さんに移ろう。

 美咲は皆のアイドルとして、楽しい空気作りに貢献していた。精神年齢が近いからだろう鸞と藤とすぐ仲良くなり、また時に姉として振る舞い、ご満悦の表情になったりしていた。それが空気をいっそう和ませ皆に感謝されるという、何とも幸せな日々を美咲は過ごしていた。葉月さんは生活を共にした訳ではないけど、鸞と藤が基地にいる時はちょくちょく顔を見せ二人と交流していた。冬期休暇中の葉月さんは2メートルの振袖を風にたなびかせることを封印し、優しくたおやかな振袖美少女として皆の輪に加わっていた。そんな葉月さんは容姿が12歳だったこともあり、8歳男子の鸞と藤のドストライクだったらしい。初恋を一歩進めた明確な恋心を、鸞と藤は葉月さんに抱いていたのである。それは微笑ましいけど、葉月さんはいわば妖精の女王。妖精の女王に恋をしたことが鸞と藤の恋愛観に影響を及ぼさないか、不安を覚えずにいられない俺だった。

 不安ではなく申し訳なく思うこともあり、その筆頭は母さんだった。誰にも言わなかったが冬期休暇中、母さんは頻繁に俺の夢に現れていたのだ。筆頭大聖者の母さんは基地のワイワイ暮らしに加わりたくても加われず、せめて俺の夢にやって来ることで気を紛らわせていたのである。俺はダメもとで、「昇と奏の結婚式に参加した時の『夕子』になれば平気なのではありませんか?」と訊いてみたけど、無理とのことだった。ホント言うと、それは解っていた。筆頭大聖者というのは建前に過ぎず、真の理由は翼さんの不参加にあったからだ。この世界線において翼さんは、どう足掻いてもワイワイ基地暮らしを断念するしかない。俺は母さんと二人、項垂れたものだった。が、


「あら? 少ないけど可能性はあったわよ。その手助けを、私はさりげなくしたからね。翔、私の手助けを探してみなさい」


 母さんは顔を上げ、俺にそう促したのである。ウギャアそうだったんだ~、と頭を抱えたいのが本音でもそんな暇はない。俺は原則に則り、まずは「母さんが大勢の前で翼さんにしたこと」から記憶を探っていった。検索範囲が広すぎる時は、条件を絞るのが原則だからね。どう絞るかが難しいことも多々あるけど、今回は容易。「その手助けを私はさりげなくした」というヒントを、出してもらっているからだ。俺は条件に沿う記憶を、過去に遡って探していった。

 すると思いがけずあっという間に有力候補が見つかり、今度こそ頭を抱えてしまった。これほど容易く見つけられたのに、どう足掻いても断念するしかないなどと決めつけていた自分に、呆れかえったのである。己のダメっぷりに落ち込む俺を母さんも肯定し、2秒間だけ自由に落ち込ませてくれた。それに応えるべく2秒で立ち直り、候補を吟味していく。どうやら、これで正解のようだ。俺は大急ぎで考察を整理し、それを発表した。


「竜族にピアノ協奏曲を紹介した約半年前、母さんは翼さんと大風と慈雨を連れて子竜の幼稚園にテレポーテーションしてきました。母さんと翼さんは輝力体でしたが、大風と慈雨は肉体でした。つまりあのとき母さんは翼さんに『肉体をテレポーテーションさせる方法』を、直接見せたのです。半年間でそれを習得していたら翼さんは肉体で基地を訪れ、仲間達と時間を共有することが出来たのです」


 翼さんは住み込み保育士をしていても、長期休暇中は天風半島で必ず過ごしている。そうすることで帰省した一族の子供達と交流し、もちろん大人達とも交流して筆頭当主の務めを果たしているのだ。しかしだからといって、四六時中それをしているのではない。長期休暇なのだから自室で一人寛ぐこともあれば、屋敷で静かに休養する日もある。それは人として当然のことであり、誰からも咎められないだろう。よってその時間を利用し、基地へこっそりテレポーテーションする。リムジン飛行車に乗り天風半島を公然と離れるのは憚られても、こっそりテレポーテーションは無問題。それでも基地に丸一日滞在するのは不可能だが半日は可能で、半日を仲間達と楽しくすごしていれば、心境はまったく違っていたはずだ。それを見越し母さんは半年前、救いの手を差し伸べていた。翼さんと大風と慈雨を連れてテレポーテーションすることが、それだったのである。

 との発表に、肉体のテレポーテーションの制限を俺はあえて入れなかった。私用での肉体のテレポーテーションは、原則禁止と教わっているからだ。しかし原則ゆえ例外は多々あり、そして俺に資格があれば母さんは例外を教えてくれるはず。上司に決定権がある場合、よほどのことがない限り部下は決定権云々を口にしてはならないのである。親子であろうと、そこら辺はしっかり守らないとさ。

 みたいなことを覚悟し母さんの言葉を待っていたところ、含みのない笑顔で「正解」と言ってもらえた。少なくとも二重の意味の正解だったに違いなく、俺は思わずガッツポーズをしてしまう。母さんはそんな俺にコロコロ笑い、例外の一つを教えてくれた。

 それによると、テレポーテーションの私的利用を禁じる決まりを意識せずとも守れるようになると、状況に応じて若干の緩和を期待できるようになるらしい。今回の翼さんは、その若干の緩和に値すると母さんは考えているという。


「ほんの数時間でも翼が翔の基地で過ごせば、翔の仲間達はそれを大きなポジティブに育てます。私は母として、喜んで手助けしましょう」

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