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バンザ~イと鸞と藤は飛び上がって喜んだ。そんな二人を見つめつつ俺と勇は「息子がいたらこうして一緒に」「男同士の遊びが出来るんだな」と、息子のいる父親の幸せをしみじみ語り会ったものだった。
鸞と藤が落ち着くのを待ち、次は輝力製の展望台の設計図を作らせた。手すり等の安全装置を施したものを合格とし、高さ2メートルの展望台を各々創らせてみる。それに上る前、自ら進んで反重力ペンダントの動作確認をした二人を、俺と勇は競い合って褒めた。
ここはだだっ広い平原なため、高さ2メートルの展望台でも感嘆するほどの眺望を得ることが出来る。身長128センチの目線で暮らしている、小二男子なら尚更なのだ。二人は暫し興奮したのち、あっちこっちを指さし探検の目的地の候補を挙げ始めた。とはいえ5キロ先にある大きな岩を見つけてしまったら、それ以外あり得ないんだけどさ。
目的地が決まったら、次は地図を作らせた。あらかじめリュックから取り出しポケットに入れておいたメモ帳とペンを使い、一人ずつ地図を作ったのだ。一人ずつの理由は、地図作りに熱中するあまり自分の輝力展望台が消えてしまうのを避けるため。意識分割法未収得の二人には、その可能性が僅かながらあったんだね。
本来なら地図は運河渡りをする前の、キャンプ場で作るのが最善。集中力と時間を要する作業は、安全が確保されている場所で落ち着いて済ませておくべきなのである。しかしそれだと、運河渡りに支障が出ると俺と勇は判断した。気の散りやすい子供ゆえ、まずは運河渡りに全力集中させる。そして安全に川を越えてから、次の作業に全力集中させる。俺と勇は、この順番を採用したのだ。もちろん昼食の席でそれを説明し、自分たち二人だけで探検するさいは最初に地図を作成するよう教えるけどね。また棒で運河渡りをさせた主理由も、昼食中に説明しないとな。
などとアレコレ考えているうち、二人とも地図を描き終えたようだ。展望台を降りた地面で、互いの地図を見比べさせる。俺も覗き込んだところ「こいつら一卵性双生児か?」と疑うほど二人の地図は似ていた。細部は異なれど、概要と要点がそっくりなのだ。メモ帳の左下ギリギリが、キャンプ場。その上に小川が左右に真っすぐ引かれ、大岩はメモ帳の右上あたりに描かれている。キャンプ場と大岩の行程で目印になりそうな木や木立も、メモ帳のほぼ同じ場所にあった。俺と勇は二人に地図を見比べさせ、良いとこ取りをして地図を完成させようとしていたのに、とんだ見込み違いだったのである。まあでも、
「似てるね!」「さすが僕達!」「「イエ~イ!」」
とやたら嬉しそうなのでそれが一番なのだ。二人そろって地図に東西南北を書き入れていなかったのは、微笑ましかったけどさ。
かくして東西南北を書き入れたところで合格とし、いざ出発となった。のだけど、
「師匠」「どうした?」「さっきと同じ場所に、輝力展望台をもう一度創ってもいいですか?」「もちろん良いぞ。それと、その判断に100点をあげよう。理由は解るかな?」「地面に降りたら、僕らの身長では大岩を見つけられませんでした」「展望台から眺めて、大岩の方角が判るよう目印を付けようと思ったのです」「方角が判らないまま探検を始めず、時間を多少失おうと一つ前に戻って正しくやり直す」「この『正しくやり直す』ことに、師匠は100点をくれたのだと思います」
俺と勇は唸り声をあげた。鸞と藤の聡明さに、感銘したのである。それを二人に伝えたのち、褒美として協力を申し出た。展望台から俺に指示を出せば、方角の目印を創ってあげると申し出たんだね。二人は恐縮していたけど、探検に割ける時間を思い出させたところ大急ぎで輝力展望台を創っていたな。そんな二人を勇に任せ、俺は展望台から100メートル離れる。そして展望台に上った二人の指示に従い移動し、展望台と大岩を結ぶ直線上に、黒く着色した長さ10メートルの輝力棒を垂直に立てた。着色と存続時間は二人の能力を大幅に超えているけど、今日は問題ない。なぜなら探検に割ける時間は、残り20分もないからさ。
だがたとえ20分を切っていようと、初めて探検する場所を走るなど愚の骨頂。果たして鸞と藤は、どのような方法でここにやって来るのか? 明日以降のことを考えたら、今日中にこの場所で教えておきたい事が一つあるのは事実。しかしそれより、鸞と藤が自ら考え、自ら決断し、自ら行動することの方が比較にならぬほど重要なのである。言うまでもなく鸞と藤が考えなしに走り出したら、止めてもらうよう勇に頼んでいるけどね。
結果を述べると、二人はこの状況でも100点を出した。初めて足を踏み入れた草原ゆえ縦一列になり、周囲に気を配りつつ歩いてきたのである。この草原に大型の肉食獣や毒蛇はおらず、また俺と勇だけでなく教育AⅠや妖精達も見守っていようと、親は心配なもの。両親を安心させる行動を採った8歳児達を、親という単語を用いず俺と勇はベタ褒めした。用いたら「親を不安にさせない」を基準に人生を選択するようになるかもしれず、そしてそれは長い目で見たら、子供を最も不幸にする基準だからさ。
前世を思い出していない鸞と藤がそれを理解するのは数十年後のことなので脇に置き、この場所で教えておきたいことに俺はさっそく移った。
「鸞、藤。メモ帳と筆記用具を出し、ここから見る基地を書き写しなさい。その理由は、解るかな?」
「ここから見る基地の建物の配置は、書き写した方が覚えられます」「目的地の大岩は見えなくても、基地は振り返れば見ることが出来ます」「振り返って見た建物の配置が偏っていたら」「僕達の進路も偏っているのではないかと思いました」




