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301

 次に案内した風呂では、男組と女組の関心度が逆転した。ゆったり浸かれる大きな湯船への関心に男女差はなかったが、バスアメニティへの関心は天と地ほどの差が付いたのである。舞ちゃんと奏も「話の通じる人がやっと現れた」とばかりに晴と藍に加わり、四人でキャッキャしていた。退屈そうにしている鸞と藤を、鷲と橙は「女性はお風呂好きなんだよ」「こういう時はそっとしておきなさい」と、父親の眼差しで諭していたな。

 最後に訓練場へ案内し、鷲一家と橙一家に6面の訓練場を割り振って基地案内は終わった。俺は鸞と藤に声をかける。


「鸞、藤。お昼ご飯まで基地の周辺を少し探検するか?」


 探検という語彙に、8歳男子は興味を爆発させたらしい。「やった!」「ばんざい!」と大はしゃぎする息子達をほのぼの見つめていた鷲と橙が、俺と勇に深々と腰を折る。そして息子達の頭を撫で、住居型飛行車のある駐車場へ鷲と橙は歩いて行った。


 昼食の用意を買って出てくれた女組に感謝を述べ、探検組はキャンプ場を目指した。探検の心得としてまず用を足し、続いて小川近くの小型倉庫へ赴く。水と食料およびメモ帳とペンを自分のリュックに自ら詰めさせ、それを背負わせた。「たとえ1時間強しかなかろうと、探検を決して軽んじてはならない」 厳かにそう告げたところ、鸞と藤はキリリと引き締まった表情で「「了解です!」」と応えた。俺は大きく頷き二人に問いかける。


「幅5メートルのあの小川を、二人は飛び越えられるか?」「「可能と判断します」」「同意だ。しかし丁度良い機会とし、『越えられない川を飛び越える方法』を習得してみよう」


 越えられない川を飛び越える方法と聞いて、ワクワクしない男子はいない。二頭の子犬が尻尾をブンブン振る様子を幻視し吹き出しそうになるのを必死で堪えつつ、俺は長さ7メートル直径3センチの輝力棒を創造した。その棒を二人に握らせ、握った感触を体験させる。続いて棒の直径を4センチに増やし、勇に頷き二人を少し離れた川辺に誘導してもらってから、俺は棒の上端を握った。そして棒の下端で川の向こう側の地面を叩き、蛇を含む障害物の有無をまずは確認する。続いて棒を、地面と平行にして構えた。棒の上端付近を右手で握り頭の横に付け、左手は右手から80センチほどの場所を握るのが俺の構えだ。そして川に向かって軽く走り、棒の下端で川底の中央を突く。すると俺が握っている場所は弧を描き、その弧に乗っかる形で、俺は川の向こう岸に降り立った。それを見て、


「翔お兄ちゃんカッコイイ~~」


 いつの間にかやって来ていた美咲が歓声を上げてくれた。鸞と藤も美咲に続き、三人で盛んに拍手してくれている。照れて応え、再度「運河飛び」をして元の場所に戻った。そうこれはオランダで親しまれている、運河飛びというスポーツ。世界記録保持者は21.5メートルを棒一本で飛び越えてしまう、侮ることのできないスポーツなのだ。

 かくして運河飛びの練習が始まった。さすが舞ちゃんの教え子、鸞と藤は直径3センチの輝力棒を容易く創造してみせた。その棒を自分の身長と同じ長さにし、最初は平地で運河飛びに挑戦させる。運動神経に恵まれているのだろう、二人は奇麗なフォームをたちまち身に着けた。俺は鸞と藤を褒め、四人で川辺に赴く。続いて、


「輝力棒を伸ばし、川底の中央を突いてごらん」


 そう指示した。俺の7メートルの輝力棒を見ていようと、実際にやってみるのはまったく別。幅はたった5メートルなのに水深は3メートルもあることを実感した鸞と藤は、冒険者の顔をいっちょ前にしていたな。それら小さな冒険者達に、冒険は脳筋だけではダメなことを教えるべく俺は暗算させた。


「自分の身長を二割増した長さに、水深を足す。輝力棒を、その長さにしてごらん」


 鸞と藤の身長は、どちらも128センチ。よって正解は453.6センチになり、鸞と藤は暗算でそれを見事当てた。俺は二人を褒め、美雪に454センチの3D棒を映してもらう。それを基に自分の棒を創った二人に、運河飛びをさせてみた。まずは俺の7メートルの棒で、向こう岸の地面の安全確認をさせる。それ以降は自由にさせたところ、二人は平地で棒を構えて走ったり、棒の下端で川底の中央を突き体重を少し預けたり、イメージトレーニングをしたのち、


  ヒラリ


 と小川を飛び越えてみせたのである。俺と勇が二人の頭をワシワシしまくったのは言うまでもない。鸞と藤は目標を達成した、誇りある男の顔をしていたな。

 輝力棒を消す前も、鸞と藤に自ら考えさせた。「帰りの運河飛びでは、教育AⅠの助けを借りられないとする。輝力棒を消す前に、しておくことはあるかな?」 鸞と藤は30秒ほど話し合い、454センチの長さを地面に刻んだ。特徴のある木を選び、その木の根元に棒の端を合わせて地面に置き、もう一方の端の部分で地面を削ったのである。二人は自信満々だったが、俺は合格としつつも50点とした。前世の小二男子なら「なぜ50点なの?」とすぐ訊くか、もしくは訊きもせず終わるだろうが、この星の子供達は違う。再度話し合った鸞と藤は少し離れ、それぞれの場所に異なる方法を用いて地面に454センチの印を付けたのである。理由を問うたところ、はきはき恐れず二人は答えた。


「同じ場所に同じ方法で印を付けたら、不測の事態が起こり、印が二つとも消えてしまうかもしれません」「せっかく二人いるのですから、異なる場所に異なる方法で印を付け、不測の事態が起きてもどちらかは残るよう工夫しました」

「探検家の素質があるようだな。二人に、100点をあげよう」

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