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 次に二人を案内したのは、女性専用風呂。ありがたいことに綾乃司令官が、直々に手配してくれたのである。この星の冬服に高性能の暖房機能が備わっていようと、足を伸ばしてのんびり入る冬の湯船は、やはり格別。綾乃司令官が厳選したバスアメニティも高品質の優れ物だったらしく、案内の時間超過を野郎共は本気で案じたものだった。

 次に連れて行ったのは、舞ちゃんと奏の訓練場。この基地には訓練場が11面あり、冬期休暇を過ごすのは11人だから、鸞と藤を含む全員に訓練場がいきわたるんだね。

 舞ちゃんと奏を最後に案内したのは、三週間の家になる住居型飛行車だった。駐車場に着陸(?)しているので舞ちゃんと奏が最初に目にしたのはこの住居だけど、基地の全てが初見だったこともあり意識に残ってなかったという。「これって飛行車なの?」「家にしか見えない快適そう!」「「だね~~」」 のように、なかなかの高評価みたいだ。さあではこの空気が漂っているうちに、本日最大の役目に取り掛かかりますか。俺は舞ちゃんと奏に、姿勢を正して正対した。


「舞ちゃん、奏、住み込み保育士という大変な仕事を半年間お疲れ様でした。鷲一家と橙一家の到着までまだ1時間以上あるし、それぞれの家でおくつろぎ下さい」


 そうさせてもらおうかな、お言葉に甘えるね翔お兄ちゃん、と返答した舞ちゃんと奏の頬が恥ずかしげに染まっていることを意識から追い出し、


「じゃあまた後で」「「「「また後で~」」」」


 爽やかに挨拶し俺は踵を返した。住居型飛行車の防音防振機能は、通常の住居より数段高い。駐車場と俺の訓練場はまあまあ離れているし、訓練に没頭すれば何も感じないだろう。俺は普段着から戦闘服に着替え、闇族との戦闘に集中した。


 26年間の戦士人生で冬期休暇中のこの時間に戦闘訓練をしたのは、これが初めてだったからだろうか? いつも以上に集中していたらしく、瞬きする間に1時間が経過していた。俺は体育館の生活スペースに行き、5分間の全自動シャワーを浴びる。シャワーを終え洗い立ての普段着に着替え、鷲一家と橙一家の到着予定時刻を美雪に尋ねたところ、5分後とのことだった。俺には判らないけど、たぶん大丈夫じゃないかな? 新たにやって来る6人を出迎えるべく、俺は駐車場へ向かった。

 駐車場に足を踏み入れると同時に勇と舞ちゃん、および昇と奏がそれぞれの玄関から出てきた。出迎えに遅れたら理由を勘繰られて恥ずかしい思いをするけどギリギリまでイチャイチャしていたかったから玄関でイチャコラしてたのかな、などと邪推するほど妬んでも僻(ひが)んでもいないつもりだったが、妬み僻み系の言葉がこうもスラスラ出てくるということは、これが本音なのかもしれない。何気にダメージが大きく、俯きたがる自分を俺は全力で鞭打たねばならなかった。

 舞ちゃんと奏を出迎えた時とは異なり美雪と美咲も加えた7人で横一列に並び、鷲一家と橙一家を出迎えた。着陸した二機の飛行車のドアがそれぞれ開く。軍隊ではないから露払いなどなく、両親に続いて鸞と藤が降りてきた。名家巡りで目にしてきた二人は、足が地面に触れるなり舞ちゃん目掛けて駆けてくるような男の子だったのに、今日は違った。緊張のあまり歩くことすらままならぬ8歳の男の子として、鸞と藤は俺達に挨拶したのだ。理由は複数あるだろうがやはり一番は、父親の疲労と思われる。過度の勉強による神経疲労と病気の区別が、8歳の男の子にはまだ無理なのだろうな。よって、


「鷲、橙。勉強をすぐ再開してもいいし、基地巡りに加わってもいい。自由にしろ」


 そう呼びかけたところ、基地巡り一択とのことだった。三週間お世話になる場所に挨拶しないなんて礼を失することを絶対してはならないと、鷲と橙は腹に響く声で述べたのである。俺は師匠の眼差しを子供達に向け、「この地で過ごす父親を目に焼き付けなさい。将来、必ず役に立つ」と諭した。背筋を目いっぱい伸ばし「「はい、師匠!」」と声を揃えた鸞と藤に、来世は息子も欲しいなあとポカポカの胸で俺は考えていた。

 鷲一家と橙一家の庭は焚火不可だし、それは幼年学校も変わらない。鸞と藤にとって人生唯一の焚火は虎鉄と美夜の事実上のお別れ会となった夜の浜辺の焚火で、そしてそれは二人の忘れえぬ記憶になっているという。夜の浜辺で絶品の焚火料理を食べ、その数日後に仲良しだった虎鉄と美夜が亡くなったため、決して忘れぬ記憶として胸に刻まれたそうなのである。俺は嬉しくてならず、虎鉄と美夜もそれは同じはず。


「鸞、藤。キャンプ場のこの焚火で、美味しい料理をまた食べような」


 そういって二人の頭をワシワシしたら、二人は顔をクシャクシャにして喜んでいた。

 続いて案内したキャンプ場横の小川では、鷲一家と橙一家も歓声を上げていた。透明度の高い清らかな川なのでそれは万人に当て嵌まるだろうが、鷲と橙と鸞と藤の男組の歓声は、舞ちゃんと奏と晴と藍の女組の歓声とは異なっていた。川を泳ぐ多数の魚に、豊富な釣果と旨い魚料理を思い描いたことが、男組に歓声を上げさせたのである。


「鷲、橙。頭を空っぽにしたかったら釣りを勧める。魚に含まれるDHAは脳神経に良いし、何より自分で釣った獲れたての魚は、一段と旨いものだからな」


 勉強で神経が疲れていようと男の狩猟本能には勝てない。鷲と橙は瞳を子供のように輝かせ、同じく瞳を輝かせる息子達と一緒に、悠々と泳ぐ魚の群れを見つめていた。

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