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との感心と、二人の後ろに巧く移動できた安堵を胸に、小さな二つの点を見守った。そう実は、俺は安堵していた。舞ちゃんと奏を出迎えないのは失礼でも、夫達と横並びで迎えたら鈍感男になるため、場所を変えねばと焦っていたのである。舞ちゃんと奏に再会する喜びよりこの位置に下がれたことに胸をなで降ろしている薄情な俺を、どうかお許しくださいますように。
そんな薄情者を無視し二台の飛行車はみるみる大きくなり、駐車場に着陸した。車内から降りてきた舞ちゃんと奏に、勇と昇が駆け寄る。そして磁石がくっ付くように夫婦は互いを抱きしめ合った。17連続童貞男としては逃げ出したくても、四人と家族同然の交流をしてきた身としては、二組の夫婦におめでとうと言いたい。逃亡欲求がいかに強かろうと、祝福したい気持ちの方が明らかに大きい自分を、俺はほんの少し誇った。
それを後押しするかのように、俺と美雪の間を飛んでいる美咲が「キャ~ラブラブ~」と手を叩きはしゃいでいる。二台の飛行車が着陸態勢に入ると同時に、俺の隣に美雪と美咲が現れたんだね。それにしても、美咲には助けられた。12歳の美咲はお邪魔虫云々をほぼ感じていないらしく、舞ちゃんと奏を純粋に出迎えたかったみたいだからだ。同じ思いを抱いているのだろう、俺と目の合った美雪は苦笑をちょっぴり混ぜて笑っていたな。
約半年ぶりの抱擁に粗方満足した二組の夫婦が、俺と美雪と美咲の下に歩いて来た。「ようこそいらっしゃいました~~」と両手を元気よく振る美咲に、剣持深森両夫妻も救われたような笑顔を浮かべている。それはそうと、勇と舞ちゃんの剣持夫妻は問題ないけど、昇と奏の深森夫妻は、裕也さんと鈴姉さんの深森夫妻と被るんだよね。昇と奏は、どう呼べば良いのだろうか? 俺は今更ながら、心の中でこの問題に頭を抱えていた。けどまあそれは置き。
「翔君、今回は基地に呼んで頂き誠にありがとうございました。美雪さんと美咲ちゃん、三週間どうぞよろしくお願いします」
「翔お兄ちゃん、今回は基地に呼んで頂き誠にありがとうございました。美雪さんと美咲ちゃん、三週間どうぞよろしくお願いします」
舞ちゃんと奏はそう言って、俺と美雪と美咲に腰を折ってくれた。勇と昇も、妻達に恭しく倣っている。家族同然の仲でも、こういうのを疎かにしてはならない。俺と美雪と美咲は、真摯な気持ちで四人の真心を受け取った。
ちなみに鷲一家と橙一家は、1時間半遅れの午前10時半に到着することになっている。鸞と藤はまず自宅に帰省し、半年ぶりの再会を親子水入らずで味わってから、この基地に来ることになっているんだね。1時間半遅れなのには半年ぶりに再会した夫婦の事情ももちろんあるが、俺と勇と昇の仲といえどそれには触れていない。俺が結婚していたら口にできたのにゴメンと、心の中で勇と昇に幾度も謝った俺だった。
などと考えている暇があったら、舞ちゃんと奏に基地を案内することを早急に済ませるべきだろう。俺は勇と昇に目配せし、あらかじめ決めていた基地案内に取り掛かった。そして、最初に連れて行ったキャンプ場で予想外のことが起きる。地べたにテントを張り寝泊まりすることに女性は男性ほど興味を示さないと予想していたにもかかわらず、舞ちゃんと奏は「ここが噂のキャンプ場!」「ようやく泊まれる!」「「やった~~」」と喜んだのだ。野郎三人は再び目配せし、女性は男性ほど興味を示さないという箇所を少々修正して、女性達を焚火へ案内した。焚火は風下から近づくと、煙の臭いが服に付いてしまうこと。しかし風上にいたままでは、暖を取れないこと。風を横から受ける場所に腰を下ろし、自分用の輝力防風壁を風上に設けると快適さが増し、また背中を温めると効率良いこと。この三つを説明し、輝力防風壁を設けたうえで舞ちゃんと奏に背中を温めてもらったところ、
「温い!」「温いは正義!」「「ポカポカだ~~」」
二人は素の笑顔でキャッキャしだした。ポカポカなのも嘘ではなく、頬と唇の血色がよくなった舞ちゃんと奏は美人度が増し、勇と昇は目尻を下げまくっていたな。もちろん俺も嬉しかったけど、案内の時間超過はマズイ。とはいえ急かしたり命令口調になるのは厳禁なため、舞ちゃんと奏が興味津々になること間違いないネタを俺はさりげなく振った。
「二人とも、勇と昇のテント内に興味ある?」「「ある!!」」
完璧にハモって即答したから正解と考えて良いだろう。俺は勇と昇に頷き、それぞれの伴侶に自分のテントを紹介してもらった。そのさい勇と昇が「こちらですレディー」と手を差し出し起き上がるのを助けたのも、正解だったらしい。二組の夫婦は手を繋いだまま、テントの方角へ歩いて行った。
そのままテント内にしけこんだら、黙ってここを去り訓練を再開せねばな。と思っていたがそんなことはなく、30秒かからず舞ちゃんと奏はテントから出てきた。そうはいっても俺に夫婦のことは分からぬから、四人に声をかけず川の方へ歩いて行く。考え足らずも考えすぎも幸いなく、四人も俺の後を自然に付いてきた。そして舞ちゃんと奏は、川辺で歓声をあげることとなる。釣りに興味なくとも、透明度の高い清らかな川は、大抵の人に好印象を与えるものだからね。その上、
「優しそうな人族さん、こんにちは」「初めまして、優しそうな人族さん」
川辺にたまたまいた妖精の子供達が舞ちゃんと奏に挨拶したとなれば、評価は鰻上りになる。可愛い子供妖精たちに「優しそうな人族さん」と言ってもらえたなら尚更なのだ。二人は満面の笑みを振りまき「三週間よろしくね」的な挨拶をしていた。




