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 その、約3時間20分後。

 二校目の教導を終え、俺は帰路に付いていた。今回の子供達も素直かつすこぶる優秀で、非常に楽しい時間を過ごさせてもらった。ただ一校目の教導の情報が洩れたらしく、輝力工芸訓練で女子全員が弓を創っていたのは悔やまれた。最後のマッハ60矢など気にせず、最も熱中できるものを創るのが一番なのだけどな。

 また二校目に洩れていたということは、明日と明後日の計四校も同様と予想される。明日の相方は藍、明後日の相方は再び晴だから、三人で話し合い対策を講じねばな。

 今回も前回同様、カレンが超速度で飛んでくれてあっという間に帰投した。他と一線を画す飛行速度を称賛しつつお礼を述べ、カレンを降りる。トイレを済ませるや1500圧を発動し、訓練に励んだ。


 夕食は勇と二人で食べた。昇は神経の疲れを癒すべく、長湯していたんだね。俺は前世の記憶を頼りに、神経疲労に効く温泉を探してみた。しかし見つけられず美雪に尋ねたところ、神経の疲労回復を強調している温泉は美雪にも見つけられなかったようだ。「ならこの星にはある?」と訊くも、やはり無いとのこと。ただマグネシウムが神経に効くのは有名なため、昇の勉強が本格化すると同時にマグネシウムを湯船に加えたとのことだった。それを無意識に感じているから、昇は長湯していると考えるのが自然。さすが美雪と、俺と勇と美咲は美雪を褒めまくった。美雪は照れつつも、とても嬉しそうにしていた。


 午後8時半、焚火をのんびり眺めていたら、鷹司令官が3D電話の可不可を尋ねてきたと美雪に教えられた。勇に断り、すぐテントに入る。身繕いを済ませたところで3D電話が掛かって来て、内心「始末書確定か」と覚悟するも違った。今日訪れた二校の校長が、俺をベタ褒めしたらしいのだ。本来なら喜ぶべきなのだけど、鷹司令官がどことなくモジモジしているとくれば話は違ってくる。この兄貴は俺に厄介事を頼むのを、憂いているんだね。頼れる兄貴の気遣いは、嬉しいと同時に水臭く感じるもの。俺は明るく「鷹司令官、何でも仰ってください」と促したところ、突如「ありがとう」という司令長官の声が横から入り、司令長官の3D電話が新たに映し出された。正座のまま敬礼した俺に楽にするよう命じ、司令長官は切り出した。「戦闘順位10万までの1年生のいる250校の教導官を、年一回で良いから務めてくれないだろうか」 俺は素早く計算し答えた。


「現在の輝力分身の上限は、40体です。これを48体にすれば、4体の輝力分身で一度に12校の訪問が可能になります。すると1日に24校訪問しますから、10日と半日で司令長官の要望を満たすことが出来ます。今日と同じ日を年に10日と半日すごしても、訓練に支障は出ないはずです。輝力分身の上限を48に増やす可不可は、今夜中に調べます。自分の秘書AⅠが、今の説明を報告書にまとめてくれました。すぐ送信します」


 両司令官が手元に現れた2D報告書を読んでいる隙に、俺と美雪はテレパシーでやり取りした。「美雪、ありがとう」「どういたしまして」 たったこれだけで心を十全に満たしてくれる人が、いつも俺のそばにいてくれる。今生の俺って、ホント幸せだよなあ。

 などと心の片隅でホクホクしているうち、両司令官との3D電話は終了した。上司が満足する報告書を提出すれば、部下は暫しの平安を得られるものなんだね。前世と変わらぬ上司と部下の関係に、思わず笑ってしまった。

 かくして突発案件が思いがけず早く済んだため、美雪と取り留めない話をして就寝までの時間を過ごした。この時間にも心を十全に満たす云々が適用された俺は、多幸感に包まれて眠りの境界を越えたのだった。


 深夜0時。

 明潜在意識に起こしてもらい準四次元へ行き、輝力分身48体が可能か否かを試したところ、あっさり出来てしまった。昨日の教導でも合計40体越えになった数分間があったので平気だろうと思っていたが、やはり嬉しいものだ。けどその十数分後、俺は打って変わって頭を抱えていた。自分の輝力分身は片手間で創れても、輪の分身は全力を尽くしても創れなかったのである。

 という訳で一旦落ち着き、輪の分身をなぜ創れないのか、を考察した。幸いすぐピンと来て、意識を有するバイオリンを検証のため一挺創ってみる。このバイオリンの意識は俺の友人に設定しており、話しかけたら会話がやたら弾んだ。さあ、条件が整った。検証すべく、「このバイオリンと同じ意識を有するバイオリン」を創ろうとする。結果は、惨敗。それを経て俺は、当然と言えば当然の法則を発見したのである。それは、


  完璧に同じ意識を

  複数創造することは不可能


 ということ。俺は輪の分身を創るさい、輪とまったく同じ意識を持った輪を無意識に創ろうとしていたんだね。う~む今更ながら、俺ってバカだよなあ。

 話は脱線するが、前世の俺はグレイ(いわゆるグレイ型宇宙人)関連の都市伝説が好きで本を数冊購入していた。その中に、グレイのクローン技術では意識の極めて希薄なクローンしか造れない、と書かれているものがあった。命令しない限りいつまでもボ~っとしていて、簡単な作業はこなせても複雑な作業は不可能な、成長とは無縁のクローンしかグレイは造れないそうなのである。それって事実上「意識も同じクローンを造ろうとしている」のと変わらず、それ故のことなのかもしれない。脳の構造をチョチョイと変えるだけでは、異なる意識にならない気がするんだよね。ま、ただの妄想だけどさ。

 話を戻そう。

 俺がバカなのはそれこそ当然中の当然なため脇に置き、この宇宙の新たな側面に気づいた俺は、その側面を土台に輪と同形状の輝力弓を創ることにした。設定は、輪が学校に入学して教室に入ったらクラスメイトが11人いた、みたいな感じだ。その情景をありありと思い浮かべてから、輪のクラスメイト11人を創造したところ、


「よし、矢を射出する性能込みで成功!」


 となった。いやはや我ながら、俺はアホである。

 かくして報告書にあった、48体の俺で12校を同時訪問し教導することは可能と判明した。ならば休憩を少々入れて、日課の訓練に励みますか。

 準四次元で毎晩の日課にしている訓練に全力投球すべく、俺は休憩したのだった。

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