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ちなみに男子と女子の間には、蜃気楼壁を設けた。カップルなのが仇となり、集中力を削いでしまうのを防いだのである。また晴がテレパシーで教えてくれたところによると、女子は男子が何を創っているか話題にしなかったそうだが、男子は話題にした。然るに防音壁で男子を包んでから、こっそり明かした。
「女子は、アクセサリーを創っているようだ。いかにも女子で微笑ましいが、皆が創っている輝力弓にも興味を示すかもしれない。そうなったとき一緒に創れるよう、今のうちに技を磨いておくんだよ」「「「「はい、師匠!!」」」」
全男子がコンマ1秒の狂いもなく声を揃えた。どうも俺は知らぬ間に、コイツらの師匠になったらしい。まこと、嬉しい限りだ。俺は益々熱心に弓の創り方を教えていった。
再度ちなみに男子も女子も、輝力床に腰を下ろしている。ただ男子には内緒で、女子だけ輝力製の絨毯を創った。ほら女性は、体を冷やしたらいけないって言うしさ。
輝力製の絨毯は教官用にも創った。シルクの手触りのモフモフ絨毯を女性教官達はことのほか気に入ったのか、大絶賛してくれた。弦五部の伴奏もドストライクだったらしく、グイグイ来られて正直言うと困ってしまった。校長に助けてもらえたのは嬉しかったけど、校長が女性教官達に「天風家の筆頭当主を敵に回すつもりですか?」と問いかけるや、女性教官達が床暖房の外周ギリギリへ退散したのには胃の痛くなった俺だった。
でもお陰でそれ以降は校長と有意義な話ができたから、胃痛の甲斐はあったな。子供の可能性の偉大さを、こうも熱く語る人がこの子たちの校長であることに俺は感謝した。
そうこうするうち輝力工芸訓練の時間が終わった。またそれは、この子たちの教導官を務める時間が終了したことも意味していた。集中法、意識分割法、そして輝力工芸の三つが、戦士養成学校生への基本的な指導と教導隊で決まっているからだ。生徒達もそれを事前に知らされているはずなのに、そろいもそろってシュンとした顔をしているのは、教え子たちの入れ知恵だろうか? 名家巡りで幼児達にこの顔をされたら俺はいつも、ささやかな追加訓練をついしてしまうからさ。
仮に入れ知恵だとしたら、教え子たちの賢さを称賛するしかない。俺はつい数秒前まで、子供の可能性の偉大さを校長と熱く語り合っていたからね。ささやかなりとも行った追加訓練により、この子たちの未来の可能性が激増するかもしれないのである。それに比べたら、俺が始末書を書くことなど無に等しいと言える。文章を書くのは苦にならないし、この子たちの未来を優先することにしますか。俺は、そう結論した。
床暖房等を解除し、防音と防風を両立させた防音防風壁を学校全体に張り直す。それと同時に校長が俺に感謝を述べ、続いて生徒達に顔を向け、空の異変に気付いた者の有無を問うた。さすが校長、今回の防音防風壁に光の屈折をわざと設けたことを見抜いたらしい。光の屈折を設けるか設けないかは闇族戦の陽動になると、名家巡りで教えている。名家出身の校長は、それを生徒自身に気づかせようとしているのだ。校長の意図を察した教え子たちも、あえて口を閉ざしてくれている。こういう瞬間を得られるなら、始末書を何枚書こうとかまわない。俺は深い満足感に浸っていた。
校長の問いかけの3秒後あたりから、空の見え方が普段と異なることを指摘する声がちらほら出だした。そして遂に、南東や南西の地平線の近くで雲が湾曲していることに気づいた生徒が現れる。そこからは、早かった。[1]学校の敷地は正方形なので四隅の南東や南西では防音壁が大きく湾曲し、光の屈折も大きくなること。[2]しかし暖房床の周囲に巡らせた防風壁に、光の屈折はなかったこと。[3]両者の違いは防音と防風という性能の違いにあるのではなく、意図的に設けた差であること。[4]そしてそれは、闇族戦の陽動として使えること。この4つを、正解を知っている教え子たちの力を借りず、生徒達は自力で気づいてみせたのである。俺は生徒達を褒め、続いてこう述べた。
「将来が楽しみな戦士の卵たちに、俺個人として報いよう」
教導官としてではなく俺の個人的行為なら、教導隊に泥を塗ることは無いはず。俺は左隣に、長軸3メートルの縦長の楕円形を、輝く白光として出現させた。次いでその中に左手を入れ、コンパウンドボウの輪を取り出してみせる。全長280センチの巨大弓に、男子生徒達が「「「「ヨッシャ――ッ!」」」」とガッツポーズをした。実はさっきの輝力工芸訓練では、輪をわざと見せなかったんだよね。自由な発想で自分の弓を創るのが最善なのに、輪に一目惚れしたら、輪に似た形状の弓しか思い付かなくなってしまうからさ。
それは置き、男子達の喜ぶ様子に目を丸くしている女子達に、さっきの輝力工芸訓練で男子は弓を創ったことを明かした。途端に俯いた女子達に、上達の一番のコツは楽しむことだからアクセサリーも大賛成と伝えたのち、こう付け加える。
「興味があったら彼氏と一緒に創ってみて。それも、楽しいと思うよ」
現金なもので「彼氏と一緒」との文言を聴くや、女子達は顔をパッと輝かせた。男子との間に、華やかな言葉が飛び交う。しかしそれを3秒間だけに留め静寂を率先して取り戻した生徒達にニコニコ頷いてから、俺は4人の教え子に語気鋭く命じた。
「400人全員の衝撃波対策を、30秒間で完了させろ。始め!」
教え子たちは広場の際を指さし、まずは距離を取るよう呼びかけた。俺は晴に概念テレパシーを送り、マッハ60矢の衝撃波対策を教官達に説明するよう頼む。そう何気に今はマッハ50ではなく、マッハ60なのでした。フハハハハ!!




