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嬉しいことに教え子たちは、我が意を得たりと大きく頷いていた。特に男子筆頭は天風の子でよちよち歩きの頃から遊んであげていたため、四本腕の輝力俺と鬼ごっこや取っ組み合いをしたことを面白おかしく皆に話していた。それでも中には「四本腕?」と首を傾げる男子もいて、ピンと閃いた俺はその子の後ろに四本腕の輝力俺を出現させてからその子の肩を叩き、振り向きざまに四本腕でポーズを取ってみせた。幸い大ウケし、広場に爆笑が立ち上る。再度ピンと来た俺は、男子200人と女子200人に命じた。
「男子は『男子全員で歌って女子に聴かせたい曲』を、女子は『女子全員で歌って男子に聴かせたい曲』を、30秒で決めるように。始め!」
不意を突かれた400人は一瞬ポカンとするも、そこはアトランティス星の子供達。5秒経たず活発な議論が始まり、俺はその隙に学校の敷地すべてを輝力製の防音壁で囲んだ。近隣校への騒音など気にせず、思いっきり歌ってほしかったからね。
そうこうするうち30秒経ち、歌う曲名を男女それぞれが発表した。どちらも大ヒット曲で耳コピ済だったが、油断は禁物。俺は練習すべく10秒もらい、準四次元へ飛んだ。もちろん準四次元は内緒だけどさ。
それは置きテレパシーで晴に頼み、学校の敷地を輝力製の防音壁で囲っていることを生徒達に伝えてもらった。学校の敷地は、約2キロ四方ある。全長600キロのスペースコロニーを輝力で創った身としては屁でもないが、自分が13歳だった頃を思い出せば、不信感を抱かれても仕方ないのだろう。準四次元から戻った俺は生徒達に「近隣高で騒ぎにならぬよう、防音壁を2秒間だけ紺色にする、見逃すなよ」と告げ、そのとおりにした。広場を、巨大などよめきが覆う。それを受け、気心の知れた教え子たちが一芝居打ってくれた。「師匠、疑って申し訳ございませんでした!」と、4人そろって腰を折ったのである。慌ててそれに続いた残りの396人に、俺は大根役者丸出しの声と仕草で命じた。
「ノリノリで歌えば水に流そう。さあ、男子から始めるぞ!」
弾けるように上体を起こした男子達に合わせ、俺は輝力分身を40体出す。唖然とする生徒達に41体でニヤリと笑い、楽器と椅子をそれぞれ創造し弦五部を形成した。これは名家巡りでも見せたことが無かったので教え子たちを含む400人全員がのけ反るも、お構いなしに41体で陽気な音を奏でた。そう男子が歌う曲の、前奏曲を陽気に弾いたんだね。すると、さすがは野郎共。「スゲエ!」「パネエ!」「「「「ヤベエ!」」」」とすぐ食いついてきて、筆頭男子が「テメエら漢を魅せるぞ!!」と発破をかけた。その機を逃さず、女子達が「「「「頑張って~~」」」」と黄色い声を揃えたものだからさあ大変。男子達は男性アイドルになり切り、恋の歌をノリノリで歌っていたな。
男子が歌い終わり、女子による「カッコイイ!」「素敵~!」の賞賛の嵐が収まったところで、今度は女子の曲の前奏曲を41体で奏でた。男子達の「「「「待ってました~~」」」」の声が轟く。それもそのはず、偶然なのかこの400人は、200組のカップルだからね。女子達は可愛い自分を彼氏に見てもらおうと女性アイドルになりきり、こちらも恋の歌をノリノリで歌っていた。そして歌い終わった女子達を「可愛い!」「可愛くて死にそう!」と男子全員で囃し立てる。「「「「ありがとう!」」」」「「「「キャ~~!!」」」と場が最高に盛り上がったところで、俺は39体の輝力分身を1体に次々合体させていった。合体が進むにつれ、輝力俺が巨大化していく。年頃の男子と女子がいかに盛り上がっていようと、合体によって巨人が出現しつつあることに気づかない訳がない。特にノリの良い男子達が「ウギャ~~」と腰を抜かす演技をしたのを機に、全員の注目が巨人に集まった。合体を終え身長10メートルになった輝力俺が、
「は~い注目~~」
低音の大音量で生徒達に語り掛ける。一時的に羽目を外しても良いが自ら率先して静寂を取り戻すという、戦士養成学校の伝統を踏襲した400人が、一瞬で俺に注目した。戦士の卵たちの優秀さをまず褒めてから、身長を元に戻して俺は語り掛けた。
「輝力工芸は楽しいということを、みんな肌で感じてくれたと思う。これより45分間、各々自由に輝力工芸を楽しむように。それを妨げぬよう、この広場を防風壁で覆い、足元に床暖房を設ける。皆が立っている足場を持ち上げるけど、慌てないでね」
俺は輝力壁を石畳内に創り、それを200個の輝力製反重力ペンダントで持ち上げていく。それに伴い400人の生徒達も、ゆっくり上昇していった。教え子の女子の筆頭と準筆頭が「「師匠、人外が過ぎま~~す」」と声を揃え、それに「人外って呼ばないで~~」と情けない声で応えたら、大爆笑が湧き起った。輝力工芸は楽しいと思ってくれたのなら、それが一番なのだ。俺は生徒達の立つ輝力壁と石畳の間に、圧縮によって温度を上げた空気を流し入れていく。美雪にテレパシーで助力を請い、暖気の温度および風量と輝力壁に開ける空気穴を調整していく。「温かい!」「マジパネエ!」の声が方々から聞こえてきた。よし、こんなところだろう。俺は6人の教官を床暖房内に招き入れてから、防音壁を解除した代わりに防風壁で暖房床の周囲を覆ったのだった。
今日の俺の相方が、晴だったのは幸運だった。ピアノを除く竜族の輝力製楽器を創造した晴は、昇に並ぶ輝力工芸スキルの高等級者だったからだ。晴は女子達の創る輝力アクセサリーに的確な助言をして、とても感謝されていたな。
一方男子は、輝力弓を目の色を変えて創っていた。俺も男だからコイツらの気持ちは分かるし、というかそもそも輝力弓を広めたのは俺なんだよね。瞳を輝かせ一心に弓と矢を創る男子達を、俺は熱心に教えた。




