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 俺の卒業した戦士養成学校には、4人の教官がいた。この学校は戦闘順位10万までの最優秀グループに属する学校ゆえ、教官の人数は6人だった。幸い3人は名家出身で面識があり、内1人が校長だったため挨拶は和やかに進んだ。その空気のまま教官全員と挨拶を済ませ、4人の教え子へ顔を向ける。教え子たちは視線だけこちらに向けていたが、俺と目が合うや素早く俺と正対した。軍規に則っているとはいえ、このままでは他の生徒達の緊張が取れない。俺は教え子たちの前に輝力で「分身をそちらに出現させる。平静を保つように」と文字を書き、教え子たちが敬礼すると同時に、男女の筆頭の前に分身を1体ずつ出現させた。

 開示された教導隊の情報によると、勇、昇、鷲、橙、晴、藍の6人の教導官は、輝力分身を教導中に披露していた。俺と翼さんが強化3闇王を倒したことが公表されたさい輝力分身の情報も公表されたため、教導課程に加わったのである。自分とほぼ同じ戦闘力を有する輝力分身を出現させられる教導官は今のところ6人のみなこともあり、6人は大忙しのようだ。軍規により俺に愚痴を零せなかった6人に、謝らずにいられなかったな。

 それもあり、この学校の生徒達に輝力分身を初めて見せる役を俺は率先して務めたのだけど、教え子を除く396人の生徒には衝撃が強かったらしい。体をビクッと痙攣させたのは良い方で、のけ反る生徒が過半数だったのである。名家の幼児達が、四本腕の輝力俺と鬼ごっこや取っ組み合いをしているのは、俺の認識以上に恵まれていたのかもしれない。

 それを考えるのは今度にして、俺は教え子たちの名を呼び「久しいな」と笑いかけた。「「お久しぶりです師匠!」」と返って来た声は、良い意味で緊張が取れている。それを、他の生徒達も察知したらしい。すかさずその子たちに「うむ、みんな素晴らしい仲間達のようだな」と笑いかけたところ、ほがらかな空気が一気に広がった。まこと、良い子たちである。嬉しくなった俺は輝力で高さ2メートルの台を作り、それに飛び乗る。そして、


「10秒やる。各々好きな方法で心身をリラックスさせよ。始め!」


 裂帛の気合で呼びかけた。生徒達は素直に、各々の方法で心と体をほぐしていく。俺の頭上に出現させた輝力製のカウントダウンが0になる頃には、リラックスしていない生徒は1人もいなくなっていた。益々嬉しくなった俺はそれを声に乗せた上で、


「集中法用意!」


 裂帛の気合を再度放つ。と同時に、外側へ向けられていた生徒達の意識が一斉に内側へ向けられ、無意識に放出していたテレパシーの雑音がピタリと止んだ。将来有望な生徒達の有益な時間がこの声と共に始まりますようにとの願いを込め、


「始め!」


 俺は集中法の開始を命じたのだった。

 結果を述べると、集中法は大成功だった。生徒達は優れた集中力を発揮し、譬えるなら鏡面化した湖が広場に二つ現れたかのような状態になったのだ。人は無意識に「心が波立つ」という表現を使う。あの表現は的確で落ち着いている心は波が小さく、落ち着きが増すにつれ心は凪ぎ、水面が鏡面化していく。とはいえそれは表面的な現象に過ぎず、内部や深奥まで静謐を浸透させるには、相応の努力や好条件が必須なんだけどね。

 その好条件が、今回は発動した。生徒達に、意識の共鳴が起こったのだ。男子全員で共鳴し鏡面化した湖を形成し、女子全員でも共鳴し鏡面化した湖を形成したということだね。同じ釜の飯を食い、同じ空気を吸い同じ湯に浸かり、同じ目的に向かって努力する気の良い仲間達は、意識の共鳴が起こりやすい。同性の200人の仲間が集まった状態で一斉に集中法を始めたところ、それが生じた。しかもありがたいことに集中法で共鳴が成されたため集中力がみるみる高まっていき、13歳にしてはかなり高度な領域に至ったのである。この領域をこの年齢で体験したことは、間違いなく宝となる。校長を始めとする俺と親交のある教官達もホクホク顔だし、良かった良かった。初対面の教官達が尊敬系の眼差しを俺に向けているのは、精神衛生上スルーさせてもらったけどさ。

 生徒達の見事な集中力を見守りつつ、今後の教導を晴とテレパシーで決めていく。いうまでもなく、予定は事前に立てている。だが生徒達の練度を実際に見ない限り、予定は未定とみなすのが正解なのである。

 頃合いを計り、集中法を止めさせる。心身ほぐしを含む1分間の休憩を設けたのち、続いて意識分割法の訓練に入った。意識の分割数は二つ。一つは集中法を再度行い、意識を内側へ向けさせる。もう一つの意識は外側に向けさせ、前を通過する俺もしくは晴と意思疎通する。意思疎通は生徒の採点も兼ね、生徒に気づかれぬよう左右の十指でAⅠ秘書にサインを送り、意識分割法を10段階で評価していった。4人いる俺の教え子で意識分割法が最も得意な子を9にし、それを基準にしたのだ。とはいえ4人とも9だったことに、俺はあやうく師匠バカになるところだったな。

 なんて具合に自分を諫めておかなかったら、大変なことになっていたに違いない。なんと400人全員が、6以上の評価だったのである。意識分割未習得の生徒がいると想定しその生徒を1評価にしていたのに、嬉しい誤算だ。それ以上に嬉しかったのは、教え子たちが新有用スキルの授業を頻繁に開いていることだった。その授業のお陰で、400人全員が6以上だったんだね。男子の二人の教え子を絞め技とくすぐりで失神寸前にしたくてならず、苦労した俺だった。

 それもあったのだろう、トイレ休憩後の輝力工芸スキルの訓練で上達のコツを生徒に訊かれた俺は、フレンドリーにこう答えたのである。「コツは何と言っても、輝力工芸を楽しむことだね」と。

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