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 とはいえ俺には相殺音壁と輝力耳栓があるし、母さんと音楽仲間達は輝力体だし、美雪と美咲は高度な遮音性能を有しているから、問題なかった。でも子竜達の耳は気になり、美雪に概念テレパシーで尋ねたところ、心配無用らしい。Going The Distanc〇を迫力の音で届けるべく大型スピーカーを持ち込んでいたのが功を奏し、成竜達の超大音量号泣に負けない相殺音壁で子竜達をすっぽり包んでいるとの事だったのだ。俺は美雪にしこたま感謝し、いつものように抱きかかえてクルクルしたかったのだけど、できなかった。野郎共に、


「「「「また抜け駆けしやがって―――ッ!」」」」


 と羽交い絞めにされていたのだ。そんなこと言われても皆がこの幼稚園を訪れるようになった頃は既に八割がた完成していたので無理だよと事実を述べたところ、


「「「「そういう意味じゃね―――ッッ!!」」」」


 俺は火に油を注いでしまったらしい。じゃれ合いで済まされる上限ギリギリの羽交い絞めが、本気モードの締め技に替わったのである。命の危機を覚えた俺は野郎共が輝力体なのをいいことに本気モードの抵抗をして、それはそれでメッチャ楽しかったけどな!

 が、6人による本気モードの締め技にたった1人で本気モードの抵抗を繰り広げている最中、ある光景が視界の隅をかすめた俺は超絶本気のテレパシーで「待って!」と頼んだ。さすがは選りすぐりの野郎共、コンマ1秒未満で締め技の嵐が止んだ。俺はすかさず輝力圧縮1500倍を発動し、可及的速やかに子竜達のもとへ飛ぶ。目指すは、鈴桃の傍ら。竜族の中で鈴桃だけが号泣を止め、瞑目し集中スキルを発揮し、飛行器の活性化訓練をしていたのである。

 音速越えのソニックブームを輝力壁で無理矢理封じ、鈴桃の傍らに立つ。オーラ視力では足りないという直感に従い準四次元視力に切り替えていたのが活き、鈴桃の松果体と飛行器がこれまでで一番の輝きを放っている様子をありありと捉えることが出来た。こりゃアカシックレコードを見るまでもないと確信した俺は妖精族のいる方角に顔を向け、声とテレパシーの両方で呼びかけた。


「葉月さん!」


 大声にならぬよう努めたつもりだったが、つもりでしかなかったらしい。いや間違いなく大声ではなかったのだけど、鈴桃の今の状況を意図せず声に込めてしまったのだ。けれどもそれは、概念テレパシーではない。最も近いものを挙げるなら、言霊なのかもしれない。言霊によって世界が改変され、


『鈴桃が空に飛び立とうとしているから風を吹かせて手伝ってあげてほしい』


 という認識を、ここにいる全員が共有したのである。全員にはもちろん妖精も含まれ、そして土地神以上はテレポーテーション可能なため、葉月さんは鈴桃の傍らに一瞬で来てくれた。お礼を述べる俺に頷き、葉月さんが概念テレパシーを送って来る。俺達は概念テレパシーによる話し合いを一瞬で済ませ、鈴桃がどのような状態になったら下方からどれくらいの風を吹かせ、鈴桃を地上何メートルに浮き上がらせるかを決定した。決定してようやく、葉月さんが植物の妖精だったことを思い出すというヘマに気づいたが、心配ないらしい。妖精長は、風や水や火等々の全ての頭妖精の能力を使えるそうなのだ。「さすが葉月さん、頼りにしてます」 テレパシーで本音を伝えたら、「涙が出そうなことをこの状況で言わないでください」と怒られちゃったけどさ。

 怒られるも、葉月さんの真剣度の爆上げには効果があったようだ。鈴桃を見つめる葉月さんが、カミソリのような集中力を発揮する。すると葉月さんに、つまり妖精長に同調し、ここにいる数十万の妖精すべてが集中状態に入った。それが、竜族の集中力と共鳴していく。なぜなら竜族こそは、ここにいる生命体の中で最高の集中状態にいたからだ。数十万年に及ぶ悲願が今まさに達成されようとしているのだから、当然だね。竜族と妖精族の集中力は共鳴により益々高まっていった。

 美雪と美咲も、凄まじい集中力を発揮していた。この星の量子コンピュータを、舐めてはいけないのである。美雪と地球最高のスーパーコンピュータの差は、地球最高のスーパーコンピュータと真空管式コンピュータの差より大きいからね。

 それらの集中力を、音楽仲間達の創造力が後押ししていく。音楽仲間達の輝力体に松果体および本体はないが、創造力なら発揮可能。子竜達の先生を通じ竜族を愛してきた音楽仲間達は、鈴桃が空へ飛び立つ未来を一心に祈っていた。

 それら諸々の想いが追い風となり、鈴桃の願いを叶えようとする。ひょっとするとそれが無ければ、鈴桃の願いは叶わなかったかもしれない。竜族は数十万年もの間「空を再び飛びたい」という願いを抱き続けてきた。それは、竜族は数十万年もの間「努力したけど無理だった」という失望を抱き続けてきたのと同義。竜族が種族として積み上げてきた失望は、とんでもない量になっているだろう。悲しいことにこの宇宙において、種族が積み上げてきた巨大な失望は、種族の足を引っ張る力としても作用する。「今回もどうせ無理だ」という強力な常識として、それを突破しようとする者の足枷になってしまうのである。俺の準四次元視力には、鈴桃の足を地面に縛り付ける足枷が、はっきり映っていた。

 宇宙には、そういう面がある。

 しかし宇宙には、別の面もある。

 別の面は、この宇宙を創造した創造主は、ポジティブな存在ということ。

 ポジティブな行いは創造主と共鳴し、ネガティブを追い払うのである。それが、


  ふ・・・ゎぁぁ

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