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「ところでこのコロニーの案内は、していただけないのですか?」
俺は不敵に笑い、用意していた輝力製2Dメニューボードを翼さんの手元に出現させた。「コロニー案内ツアーメニュー表」と書かれたそのボードに、翼さんは華やいだ声を上げる。ただし選ばれたメニューには、意表を突かれてしまったけどさ。
「あれ? コロニーの軸部分にある七つの照明の仕組を知りたいの?」「はいそうです。だってあの照明が放っているのは、有害な光を除去した太陽光ですよね。昨日は暇を見つけて自分なりに仕組を考えましたが、詳細は全く解らなかったのです」「そこまで言われたら、コロニーの外壁も創らないと。翼さん、3分くれる?」「もちろんです、ごゆっくり」
ホント言うと、外壁は創造済。太陽光を照明用の光と発電用の光により分ける装置を敷き詰めた外壁を、俺が再現していないなどあり得ないのだ。ならば嘘を付いてまで、俺は何を創ろうとしたのか? それは、宇宙空間。このコロニーが公転しているのは第二惑星の公転軌道ゆえ、太陽と地球と遠くに煌めく星々を創造しようと思ったのである。もちろん正確なのは見てくれだけで、配置した場所等々はメチャクチャだけどさ。
それでも、太陽と地球と煌めく星々を再現するのは楽しかった。創造力も楽しんでいるらしく、いつも以上に俺を助けてくれている。突如高性能化した己の創造力を存分に振るい、俺はワクワクしつつミニチュア宇宙を創ったのだった。
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2日遡った、一昨日の話。
勇、舞ちゃん、昇、奏、鷲、橙、晴、藍と俺の9人で準四次元会合を開いた、翌日。
昇と鷲と橙は、閃き降ろしに必要な勉強を始めた。優秀な頭脳を持つ優秀な反重力エンジン技術者の3人は、立案した勉強計画も優秀だった。人によっては「普通じゃん」や「原則に忠実で面白みに欠ける」等のマイナス評価を下すだろうが、俺は違う。「畑違いの分野なので最初は余裕を心がけ、慣れるにつれ課題を増やしていく」という3人の立てた勉強計画を、俺は高く評価したのだ。新たな挑戦をするさい、
急がば回れ
を俺は必ず守り、そしてそれは前世も今生も正しかった。運動前に準備運動をするのは、たいてい何にでも当て嵌まるものなのである。
また急がば回れに沿うと、余裕のあるうちに竜族が冬期休暇を迎えるのも都合良かった。余裕を設けても最初はストレスを免れず、そしてその発散の場に、竜族の食事会は打ってつけだったのだ。子竜の出し物はいつも感動の嵐だし、成竜の喜劇はいつも腹筋を危機的状況にしてくれるからさ。
サプライズの達成感もストレス発散に役立つけど、今回それが適用されるのは俺のみ。竜族に紹介する2分45秒の映像作品は、俺一人で作ったからね。いや、その説明は間違っている。正確にはこの映像作品は、俺が好きで好きでたまらない2分40秒の器楽曲を5秒延長し、映像を重ねたものにすぎない。まずは音楽ありきの、映像作品なのだ。
なぜそうしたかと言うと、映像作品に一度も触れていない竜族に、1時間半の「となりのトト〇」をいきなり見せるのは負担が大きすぎると判断したから。よって運動前の準備運動的な作品として、セリフのない2分45秒の動画を竜族に見てもらおうと思ったということ。そうこの動画には、セリフもないんだよね。ハハハ・・・
でも細かな調整を手伝ってくれた美雪と、俺と美雪と美咲以外では完成作を唯一見た翼さんには、たいへん褒めてもらえたのも事実。リップサービスも感じなかったし、俺は三人を信じることにしている。
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そうこうするうち12月になり、竜族が長期休暇前日に開く夕食会の日を迎えた。夕食会の最大の楽しみは、何といっても出し物。練習を半年間重ねた出し物は子竜と成竜の区別なく高品質で、いつも心から楽しませてもらっている。
子竜達は今回も、器楽曲を披露した。演奏技術の上達は凄まじく、竜族全体に人気のある歌を子竜達は楽器で見事演奏してのけたのである。子竜達の先生を務める音楽仲間達は感動のあまり、涙と鼻水まみれに一人も漏れずなっていたな。もちろんそれは、幸せなこと。音楽仲間達は惜しみない拍手と歓声を子竜達に捧げた。
しかし俺らがどれほど感動し称賛しようと、親竜達が我が子に捧げる感動と称賛には適わない。それを「親とはそういうもの」の一言で済ませるのは、間違っている。我が子の成長に最も感動し費やした努力を最も称賛するのは親でも、親竜達が捧げる拍手と歓声には、歌を愛する者としての冷徹な評価も含まれていたからだ。慣れ親しんだ歌を、器楽曲として新たに創造してみせた子竜達に、竜族の音楽文化が革命の時を迎えたことを親竜達は悟ったのである。親竜達の喜びようといったらなく、演奏を終え演壇から降りてきた我が子を抱きしめ、ひとしきり泣く時間をすべての親竜が過ごしていた。
その熱が去り、続いて演じられた成竜達の演劇にも、革命はしっかり現れていた。劇の演出の一つを、器楽曲が担っていたのだ。笑いの溢れる場面では陽気な曲が、涙の零れる場面では悲しげな曲が、そして感動の巻き起こる最後の場面では壮大な曲が、的確な長さで演奏されたのである。演劇の主役はあくまで演じ手ゆえ短時間のみの演奏だったが、効果は絶大と言うしかなかった。輝力製の大道具や小道具の効果もあり、成竜達の演劇も子竜達の器楽曲に負けない拍手と歓声を捧げられていたな。
子竜と成竜の出し物が終わり、歓談の時間となった。二つの出し物はさほど間を置かず成されるため、感想を語り会う時間を設ける必要があったんだね。俺がここに来る前はこの歓談の時間を最後に夕食会は終わっていたようだけど、どこぞのアホがサプライズを始めたせいで、サプライズによって夕食会を締めくくるのが定番になってしまっていた。言うまでもなくサプライズを定番にしたどこぞのアホは、俺なんだけどさ。




