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ちなみにこの部屋のエレベーターは、2千人を一気に運べる大型エレベーター。大中小と三種ある人用エレベーターの中で最も大きなこれでも、1万人乗りの宇宙船でやって来た入植者をコロニー内壁に降ろすには、五往復しないといけないんだけどね。このコロニーはガンダ〇と同じ、円柱形をしている。円柱形を軸回転させ、内壁に疑似重力を発生させる方式だ。円柱両端の軸部分には港があり、宇宙船が入港できるようになっている。今回は諸理由により宇宙港を創らなかったのが、悔やまれてならない。本当は宇宙船で入港する場面から始めたかったけど、それをしたらサプライズにならないので諦めるしかなかったのだ。
話を戻そう。
エレベーターを背に、翼さんと並んで歩き始める。向かうは、この部屋の出入り口。幅100メートルの出入り口はシャッターで閉ざされていて、屋外は見えない。窓が一つもないのも同じ理由による演出だけど、それはその時が来たらってことで。
そうこうするうち出入り口に着いた。風鈴を想起させる心地よい音が流れ、シャッターがゆっくり上昇していく。それに伴い、足元から風にそよぐ草の音が聞こえてきて、香しい空気が鼻孔に届いた。隣の翼さんからテレパシーが届く。「狭い宇宙船ではるばるやって来た入植者には、嬉しい演出ですね」「さすが翼さん、わかってらっしゃる」 お世辞抜きで称賛し、本命の演出もどうか気に入ってくれますようにと俺は心の中で祈った。シャッターの下部が目線に近づいて来てついに目線を超えたとき、本命の演出が眼前に広がった。と同時に、
「凄い、言葉にならない・・・」
翼さんがそう呟いたことから、サプライズは成功したとして良いはず。創った当人の俺も、口をあんぐり開けてしまったくらいだしさ。
出入り口の外は、ゆったりとした芝生の広場になっている。それなりに大きい魅力的な広場だけど、空の景色があまりにも強烈で、目線が空から離れることはなかった。それもそのはず、上を見上げれば空の彼方に広がる山や湖が見え、視線を左右に振ると森や川が内側に湾曲しているのが確認でき、そしてその先を見るべく視線を下げれば、600キロ離れた円柱の反対側が霞みの向こうに薄っすら浮かび上がっているんだからさ。
ガンダ〇に登場するスペースコロニーの多くは、太陽光を反射板で内部に届ける開放型コロニーになっている。だがこの方法では紫外線等の有害な光の除去が困難と判明し、密閉型コロニーが俺の前世では有力になっていた。とはいえこの超巨大コロニーは、今生のアトランティス星の技術で建造されているんだけどね。
このコロニー内部の形状は、直径200キロ全長600キロの円柱形。両端の円を除く内壁の面積は、約37万7千平方キロ。日本の面積の99.7%に相当する広さだ。両端の円の内部に工場と農場を設置していることもあり陸地部分のほぼ全てを自然が占め、標高5千メートルの山脈すら複数あり、多数の雨雲を自然発生させている。気象制御装置をほんの少し稼働すれば、風速15メートルの雷雲も生成可能だ。適正人口の上限は1億5千万人。俺がいた頃の日本人全員を受け入れられるけど、心の成長した1千万人にしたいのが本音。上位8.3%に相当するその中に、国会議員とキャリア官僚は何人くらい入るのだろうか? 目を覆うばかりの人数なのは確実だな!
公金チューチュー族もしくは準外患誘致罪の輩など思い出したくないので話題を替えると、今現在このコロニーの大気は湿度を低く抑えている。よって上空200キロに広がる山や湖も、濃紺に見えるとはいえ目視可能。また遥か前方600キロに聳える円形の壁も、輪郭をギリギリ確認することが出来る。つまり俺と翼さんは今、直径200キロの円柱の内側を600キロ先まで眺めているということ。もっとも俺達のいる芝生広場の周辺以外は、今のところ張りぼてだけどさ。
その芝生の上空50センチを、翼さんと並んで飛ぶ。平らな広場の面積は3ヘクタール、その先は緩やかな下り斜面になっていて、草原と森が広がっている。広場と斜面の境界に設けたベンチが、俺達の目指す場所。そこに着くや、
「ワ―――ッッ!!」
翼さんは手を盛んに叩きはしゃいだ。実を言うとこの広場は標高1千メートルの丘の頂上にあり、円柱の内側を一望する最高の場所の一つだったんだね。そうつまりこのベンチが、翼さんのために用意した絶景スポットということ。10秒経っても翼さんは拍手と歓声に大忙しだから、今回の試みは成功したとして良いんじゃないかな。
頃合いを計り翼さんに着席を促す。座ってからもアッチコッチに視線をやり興奮冷めやらぬ様子に、今後しばらくここを待ち合わせ場所にするよう計画を変更した。
約1分後、ハッとした翼さんはバツ悪げに微笑み「お待たせしました」と詫びた。
「俺にはこれ以上ないご褒美だったよ」「そう言って頂けると助かります」
と大人のやり取りをしたのち、翼さんが次々投げかけてくる質問に俺が答える時間が続いた。寸法も知らせてなかったため直径200キロや全長600キロ、日本の面積の99.7%に相当する等々を答えるたび、翼さんは目を剥いていた。また円柱の軸にあたる100キロ上空に薄っすら見える透明な管と、その管の内部にある七つの照明の簡単な仕組、および雨雲を自然発生させる仕組等々にも翼さんは律儀に瞠目していたな。
「第二惑星のラグランジュポイントにこのコロニーを造れば、戦争に負けても文明を維持したまま人類を存続できるのではないでしょうか?」「うん、シミュレーション上はそうなっている。要塞型飛行車をフル稼働すれば、100年で完成するみたいだね。コロニーの耐用年数は少なく見積もって1万年だし、この星の財政なら多少苦しくても無理ではないから、設計図を軍に一応提出してみようと考えている。仮に1千年後も戦争があれば、その闇王は俺達が戦う闇王より強い。このコロニーはその対策の一つに、なるかもしれないからさ」「それは素晴らしいです! パチパチパチ~~」




