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 即座に満場一致となり、昇が代表して勇に概念テレパシーを送った。昇のことゆえ会合の推移を、非常に上手くまとめたのだろう。現れた勇と舞ちゃんは、昇の的確な判断と概念テレパシーの解りやすさにまず礼を言った。続いて自分の考えを述べ、そしてそれは舞ちゃんから始められた。

 舞ちゃんはまず、閃き降ろしを最優先する案を発表した。舞ちゃんのみに可能なことを盛り込んだそれを、俺達は賞賛して止まなかった。

 舞ちゃんのみに可能なこととは、鸞と藤への対応。鸞と藤は前世を覚えていないが、優れた心と頭脳を有しているのは太鼓判を押せる。だがそれでも8歳の男の子へ、過剰な期待を絶対してはならない。親元へ帰省するだけでも嬉しいのに俺の基地で過ごすとなれば、羽目を外してはしゃぐのが8歳男子なのだ。相殺音壁等があろうと昇と鷲と橙を煩わせてしまうことが必ずあると、覚悟すべきなのである。

 そんな鸞と藤を、あからさまに注意することなく上手く諭せるのは、なんと俺と舞ちゃんなんだよね。俺はありがたいことに師匠として慕われているし、舞ちゃんは鸞と藤の初恋の人だからだ。特に舞ちゃんの「お兄ちゃんになったね」は、効果抜群と思われる。鸞と藤は7歳で舞ちゃんの幼年学校を卒業し、今はそれから1年半以上経つのだから、久しぶりに会った初恋の女性に「お兄ちゃんになったね」と褒められたら、子供っぽい行動を率先して遠ざけるはず。もちろん大人達が調整してあげねばならぬが、勉強で脳が疲れている昇と鷲と橙の神経を逆なでするような行為を、自ら避けようとする可能性が非常に高いのである。鷲と晴および橙と藍は、子供達の親として額を床に付けて舞ちゃんにお礼を述べていた。「もう大袈裟よ」「「「「そんなこと無いです!」」」」 とやり取りする5人は、見守る側の胸をポカポカにしたものだった。

 舞ちゃんは発言を一旦止め、勇がそれを引き継いだ。勇も閃き降ろしを最優先する案を述べ、それも皆の賞賛をさらった。勇は、こう述べたのである。


「俺は鸞と藤を、基地周辺の探検に連れて行ってあげられる。基地で行う二人の訓練も見てあげられるし、翔の名家巡りに二人が同行を望めば俺が付き添ってあげよう。舞では不可能な『男同士の付き合い』を、俺は率先してこなすつもりだ」


 鷲と晴および橙と藍は勇に多大な感謝を捧げ、昇と奏にも絶賛された勇は、大袈裟だよと笑っていた。それは同性でも惚れ惚れする漢ぶりだったが、舞ちゃんに「さすがだわ、あなた」と褒められるや顔をフニャフニャにし、爆笑をさらっていた。いやはや見事な漢である。勇と舞ちゃんがいれば鸞と藤は何も心配ないのだと、心底安堵した俺達だった。

 けれどもそれは、あくまで鸞と藤に限ったこと。勇の話を引き継いだ舞ちゃんが「次は翼について言及します」と宣言したとたん、最大の難問がまだ手つかずで残っていたことを俺達は思い知らされたのである。

 

「翔君、確認させて。肉体の分身を創ることと肉体をテレポーテーションさせることは、大聖者にならないと無理。これで合ってたっけ?」


 舞ちゃんは最初の一手に、可能性を潰すという正攻法を選んだらしい。周知されている正攻法には、各々の意識を同一方向に揃えるという効果もある。舞ちゃんと俺以外の7人が記憶を探る所作をしたのを確認したのち、答えた。


「肉体の分身の創造は、大聖者のみ可能。肉体でのテレポーテーションは、天分があれば直弟子中に習得可能。ただし現在の210人の直弟子に、習得者はいなかったと思う」「ありがとう。ついでにもう一つ確認。直弟子以上は、組織を最優先して行動する。仮に翼が肉体のテレポーテーションを習得しても、今回の件に用いて翔君の基地を訪れることは私用に相当する。どうかな?」「うん、私用だと俺も思う」「ありがとう。私達は量子テレポーテーション装置を使えないから、肉体での訪問は諦めるしかないわね」


 この星のインフラとして整備されている量子テレポーテーション装置を、戦士は原則使えない。多用すると輝力操作に不調をきたすことがあるからだ。役職のない戦士は緊急時に限り年一度の使用を許可されても、小隊長以上にそれが適用されることはない。原則使用不可ゆえ、飛行車を戦士に無料貸与しているんだしさ。

 というアレコレを各々が頭の中で再確認したのを見極めたのち、舞ちゃんは可能性つぶしを再開した。


「肉体が無理なら輝力体という方法もあるけど、翼だけが輝力体という状況を個人的には勧められない。本人の意思が最優先でも、私は親友として反対する。皆はどうかな?」


 問いかけられても、また回答は一つしかないと理解していても、即答した者はいなかった。舞ちゃんの夫の勇だけは状況によって即答したはずだが、奏と晴と藍のいる今は無理。翼さんの女心に関する問いなため、それを同性として考察できる人がいるなら、夫といえど第一発言者になってはならぬのである。

 だがそれは、奏と晴と藍にとって酷なことでもある。頭では解っていても感情は別という本音を、そのまま口にするにせよ捻じ伏せるにせよ、最初に発表せねばならぬからだ。そんな負担を妻に強いるくらいなら率先して火中の栗を拾う夫が、ここには三人いる。昇と鷲と橙がその夫達だ。幸い昇達は見極めが巧いから、「なんで先に言うのよ!」「テメェが遅いからだろが!」系の夫婦喧嘩にはならないけどさ・・・ならないよね?

 と不安が顔を出すか出さないかのギリギリで、奏が意を決した顔になった。


「翼お姉ちゃんが輝力体でも基地に行きたいと取り乱したら、私は心を鬼にして翼お姉ちゃんに反対する」「私も、翼お姉さんの怒りを引き受ける」「怒りを発散し尽くすまで、私も受け止め続ける」「ありがとう奏、晴、藍。4人で頑張ろう」「「「はい!」」」


 女の友情に胸を熱くするしか、俺ら男組はできなかったのだった。ははは・・・

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