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 話を戻そう。

 未熟な内にテレパシー能力を得ると、自他の区別を更に付けられなくなってしまう。よってその能力を持たず、相手の思いを分からないままにする。それにより、相手の思いは分からないのだから一方的な決めつけをしないよう心掛けて暮らし、それが未熟脱出の第一歩となるよう地球人は白化組織によって導かれた。同種の導きは裁判にもなされ、()()の主張と状況を公平かつ客観的に調査するのがまさにそれだ。しかし地球人はそれを拒み、一方的な決めつけが横行し、異を唱えようものなら変人扱いされ俺はとことん嫌気が・・・・まあ俺個人は脇に置き、日本の国語教育はそのせいで末期スレスレになっていた。前世の祖国では母国語を操れない国民が年々増加し、それにも白化組織の導きの拒否が関係していたのだ。一方的な決めつけをしない暮らしが未熟脱出の第一歩となることを教育の重要事項にしていたら、このような国語教育になっていたはずなのである。


『相手の思いが分からないということは、自分の思いも相手は分からないということ。よって自分の思いを相手に理解してもらえるよう、文章を工夫する。この工夫によって磨かれるのが、作文力。また作文を基に相手に伝わりやすく話す工夫もし、この工夫によって磨かれるのがプレゼン力。作文力とプレゼン力は、国語教育の二大柱なのだ』


 これを、教師や日本語学者はもちろん日本人のほぼ全員が解っていなかった。母国語を操れない日本人が増加して然るべきなのだろう。というかそもそも日本語にはプレゼンに相当する語彙がなく、それは日本人がこの分野において非常に劣っている証拠でもある。高学歴なのにチンプンカンプンな文を書きチンプンカンプンな話をする新入社員が、年々増えていたよなあ。

 いかんいかん話を再び戻すと、一方的な決めつけをしない暮らしを続けることにより、色眼鏡外しの重要性を人は少しずつ理解できるようになっていく。この色眼鏡外しは凄まじく難しく、色眼鏡由来の間違いをイエスすら二度したことが聖書に記されているように、完璧な色眼鏡外しは大聖者にすら困難なのだ。よって俺如きは色眼鏡を未だ多数かけていて、そしてその一つが今回のテレパシー送受信機案件で発覚することになった。発覚したそれは、「夫婦の事には口出ししない」だったのである。


「翔は、夫婦のことに口出ししないよう心掛けているわよね」「はい、そうです」「それ自体は正しいのだけど」「正しいのですが?」「翔は夫婦を、どれくらい理解しているのかしら」「・・・ドワ! ゴッ、ゴメンナサイ―――ッ!!」


 穴があったら入りたいとはまさにこの事だった。未婚どころか17連続童貞人生のくせに、俺は訳知り顔で「夫婦のこと云々」を公言していたのである。恥ずかしさのあまり皆ともう二度と顔を合わせられません~~のようにのたうち回っていたところ、母さんが「大丈夫よ~」と軽い口調で真相を教えてくれた。

 それによると俺の「夫婦のこと云々」を耳にした俺をよく知る人達は、それを好意的に解釈していたという。好意的な解釈もれっきとした色眼鏡なので俺とお相子と母さんは笑っていたがそれは置き、夫婦のこと云々は皆にどう聞こえていたかというと、


「俺は未婚で夫婦のことを全然知らないから静かにしているね」


 だったらしい。好意的な解釈の極致の如きそれへ、俺は額を地面にこすり付けて感謝したものだった。そんな俺に、


「反省しているようだし夫婦云々自体は正しいから、今後もそれを続けるのよ」


 母さんはそう命じたのち、奏と晴と藍が3歳児になった真相を教えてくれた。

 まず前提として、3歳児になり俺に甘えた真相を、奏と晴と藍は知らないという。ではなぜそれをしたかと言うと、本体による促しだったそうだ。促しの翻訳は母さんによると、


「昇と鷲と橙の三人のみに『閃き降ろし』を紹介するという翔の計画を変更させるには、3歳児になって甘えるのが一番だよ」


 みたいな感じらしい。3歳児になることは晴と藍の不満解消になり、名家の子供達の不満に気付くことにもなり、俺の色眼鏡を一つ外すことにもなるから、奏達の本体はそれを促した。これが今回の、真相だったのである。俺は姿勢を正し、貴重な教えを授けてくれた母さんにお礼を述べた。「いいのよ」と素のニコニコ顔を浮かべる母さんには申し訳ないが、己のダメっぷりに打ちのめされた俺はこう請うしかなかった。


「閃き降ろしによって完成したテレパシー送受信機には、テレパシー習得を助ける能力があります。しかしテレパシーは諸刃の剣なため、テレパシー習得に制限を設けることを俺は考えていました。『この星では心の成長度が5と4の人にのみ選挙権があるように、心の成長度が5の人のみテレパシーを習得できるようにする』 母さんに質問されたら、こう答えるつもりだったのです。でも今は、この制限の正しさを到底信じられません。母さん、俺はこの件にも色眼鏡を挟んでいるのでしょうか?」


 母さんによると、色眼鏡はないが見落としはあるという。ならば基本に戻るのが一番で、この場合の基本は5W1Hと思われる。「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」ってヤツだね。それは当たっていて、「いつ」がないことにすぐ気づけた。正確には、次の戦争まで残り50余年のいつ始めるかを、俺は見落としていたのである。


「半分正解。翔はいつが良いと思う?」

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