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 よって俺は、それについてとことん考えてきた。そのとことんには、昇と鷲と橙のプライドを傷つけることなく閃きを真四次元から降ろす方法を実行するか否か、も含まれている。かくなる理由により「どうすっかなあ」と悩んでいたのだけど、そろそろ次の段階に入っていいようだ。準四次元に飛んだ俺は覚悟を決め「相談したいことがあります」と、母さんにテレパシーを送ったのだった。


 幸い母さんは、とても機嫌良さげにやって来てくれた。俺は自分を信じ、練りに練ったプレゼンを始める。といっても概念テレパシーによるプレゼンなので前世と比べたら進行が超速いのだけど、母さんとのこの問答だけは概念テレパシーではなく、普通の話し言葉で行った。母さんは皆の母親だから、案じずにはいられなかったのだろうな。


「翔は昇と鷲と橙だけでなく、奏と晴と藍も準四次元に呼び、『閃き降ろし』を行うか否かを問うつもりなのですよね。その理由を、教えてください」


 閃き降ろしというのは、母さんが用いた言葉。こうもサラッと短縮してのけるのは流石だなあと感心しつつ、俺は用意しておいた原稿を基に説明した。


「秋分の日の前夜に行われた竜族のお祭りで、奏と晴と藍は3歳の姿になって俺の両肩と頭に乗りました。お陰で名家の子供達に関する貴重な気づきを得られましたが、他にも理由があると俺は微かに感じていました。その微かな感覚が・・・」


 このプレゼンの原稿作成時、昇と鷲と橙の三人のみに「閃き降ろし」を紹介することの最終確認中、奏と晴と藍の3歳の姿が脳裏を駆けた。ひょっとして祭の夜のあれは、奏達の無意識のメッセージだったのではないかと閃いた俺は、それについて熟考した。その結果、奏と晴と藍も準四次元に呼び「閃き降ろし」を行うか否かを問うことに、計画を変更したのである。

 奏と晴と藍の成長に応じ、三人への接し方を俺は変えてきた。三人を今も変わらず妹と感じていても、伴侶のいる大人の女性なのだから、夫婦のことに口出しせぬよう今は心がけているのだ。その「夫婦のことに口出ししない」を適用し、昇と鷲と橙のみに閃き降ろしを紹介する計画だったが、祭りの夜のあれが無意識のメッセージだったとすると話は違ってくる。奏達は、夫が人生の岐路に近々立たされることを、無意識に感じたのではないか? かつ夫をその岐路に立たせるのは俺とも、無意識に感じたのではないか? 俺は奏達を伴侶のいる大人の女性と捉え、昇達を岐路に立たせる場に呼ばないつもりだったが、それは間違っていると奏達は感じたのではないか? よって「3歳の頃の、妹として愛し可愛がってくれていた時の感覚で私達を見てください」に類するメッセージを、祭の夜に送ってきたのではないか? それらを熟考した結果、計画を変えたんだね。

 ということを、俺は母さんに説明した。概念テレパシーではなく、言葉の一つ一つに思いを込めて話していった。気持ちが伝わりやすい準四次元だったことに助けられ、十全に伝えられたと思う。でも最終判断は母さんに任せます、と覚悟を決めて話し終ったところ、予想外の展開になった。なんと母さんは「私は3歳の翔を可愛がったことが無いのに翔だけズルいズルいズルい~~」と、ハチャメチャな駄々をこね始めたのである。


「ちょっと母さん落ち着いてください」「嫌!」「嫌って、あのですね・・・」「翔は妹達の気持ちには敏感なのに、母親の私の気持ちには鈍感なんだから!」「ってことは、やはり無意識のメッセージだったと?」「ええそうよ、それについてはよく気づきましたと褒めてあげます。それに引き換え私の、私の・・・ビエ~~ン!」


 それから暫し、ビエンビエン泣く母さんの対応に全てを費やす時間が続いた。ヘトヘトになったけど、親孝行している気分にもなった。母さんがこんなふうに駄々をこねられるのは、俺だけっぽいからね。ただ最近どうしても疑問を覚えるのだけど、大聖者になる前の母さんの伴侶と今も交流していたとしても、駄々をこねられるのは俺のみだったのだろうか? 王女時代の話はしても、結婚後のことは決して口にしないのも、正直かなり気になるんだよね。気になるから以前「来世の俺の父親を無理に作らないでくださいね」と伝えたらビエン泣きさせてしまい、それ以上掘り下げられないでいる。今は無理にせよ将来は、それ関連の話もできる息子になりたいんだけどなあ。

 などと頭の隅で考えつつ母さんを宥めていたら、ビエン泣きが更に激しくなった。おそらく「それにはまだ触れないで」というメッセージなのだろう。そう当たりを付け考えるのを止めたら、泣き声が次第に小さくなっていった。こうして落ち着くといつも、ビエンビエン中の自分を母さんは決まって恥ずかしがるんだよね。そうなったらマザコン息子としては完敗するしかなく、新しい話題を必ず振るようにしている。今回も笑顔で食いついてきたから、当分このままで良いのだろうな。

 ちなみに新しい話題は、「未熟なうちはテレパシーを持たない方が成長に役立つ」についてだった。地球でも3歳未満は自他の区別を付けられないことが判明していて、3歳を超えても区別を付けられないと社会不適格者や犯罪者になる率が高まることも判っていたのに、これと心の成長を結びつける動きが地球にはなかった。その理由の一つは、星1と星2と星3の人が地球ではごちゃ混ぜになっている事にある。ごちゃ混ぜな上に、星1の人が名声と権力を得ていることが無数にあるのだ。そんなハチャメチャ星は宇宙中を探しても非常に少なく、それが星の卒業を困難にしていたため、転校ならぬ転星制度を救済措置として設けたほどだったのである。このアトランティス星も転星先の一つであることは、幾ら感謝してもしきれない。「前世の翔は苦労していたものね」「母さんにそう言って頂けると救われます」とのやり取りが、俺達の間ではお約束になっていた。

 話を戻そう。

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