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決められない主理由は、まだ時間が残っている事にある。竜族に紹介する映像作品の二作品目であるトト〇は紹介までまだ7カ月あり、三作品目となると、まだ13カ月も残っている。それに対し、三人の目標性能を満たすテレパシー送受信機を三人が完成させる確率は、二作品目こそ0%でも、三作品目は30%に達するのだ。三人の情熱と努力を知る身としては、三割に挑戦させてあげたいのが本音だったんだね。しかしその三割が、
『戦士訓練に支障をきたすほど開発にのめり込む確率が三割でその場合のみ、目標性能を満たすテレパシー送受信機を三人は完成させられる』
となると話は違ってくる。人類軍トップ55の上位に入ること間違いなしの三人は、人類の命運を背負っているからだ。そうはいっても、
「あの三人なら、その程度ののめり込みなんて数週間で解消できるんだよなあ」
優柔不断丸出しでそう呟き、頭を抱える俺なのだった。
ちなみに、三人のプライドを傷つけることなく閃きを真四次元から降ろす方法はどんな感じかと言うと、「前世の祖国ならパワハラ認定されかねないレベル」になるだろう。逆に言うと、それほど過酷ゆえにプライドを守ることが出来るんだね。またアカシックレコードを見たところ、戦士訓練に支障をきたすほどの開発へののめり込みと、閃きを真四次元から降ろす過酷さを比較したところ、後者が僅かに過酷だった。でもまあ男なんだし平気だろうと思うのは、前世のブラック企業の感覚なのだろうか? 三人は前世もこの星の住人なため、平気じゃないかもしれないな。
再度ちなみに、三人のプライド云々方法をちょい具体的に言うと、関連分野の最先端技術を三人全員が理解することから始まる。準四次元で時間圧縮して学んでも、寝不足は免れないはずだ。俺はリバースエンジニアリングで学んだがそれをしたら閃きは降りてこないため、三人は愚直かつ地道に学ぶしかないのである。我が身に置き換えてみたところ、顔が引き攣って止まなかったな。
もちろん利点もあり、それは閃きを降ろされた方のテレパシー送受信機は三人の目標性能を遥かに凌ぎ、人類に巨大な貢献をしたことだ。アカシックレコードで確認したところ、同機械の特許を受理された三人は、なんと科学史にその名を残していた。理由はテレパシー送受信機はテレパシー翻訳機としても機能し、そしてそれを応用すると、テレパシー技術習得機になったんだね。たとえばこの機械で自分の思考をテレパシーに翻訳し、そのテレパシーを自分に送信してもらう。これを繰り返すと機械の必要性が徐々に減っていき、必要性が皆無に近づくころには、他者とのテレパシー会話も可能になるという寸法だったのである。テレパシー会話は日常にも変化をもたらすが、戦時中の人類にもたらす恩恵は計り知れない。なぜなら伍や小隊の仲間達と連携して闇族と闘う戦士にとって仲間と交わすテレパシーは、強力な武器に他ならないからだ。よってそれのみに着眼するなら、テレパシー送受信機を公表する未来しかないように思える。しかし本当に、そうなのだろうか? 14人の音楽仲間達は全員テレパシーを習得していて、そのせいで夫婦や家族や友情が壊れたなんて事にはならず、むしろ仲が深まったと言える。が、他の人達も同じなのだろうか? 夫婦や家族や友情が壊れてしまう人も、いるのではないか? その危惧が、どうしても付きまとい離れなかったのである。
この星以降の星ではテレパシーが当たり前なのも、それを後押ししている。しかも心の成長度を「本体との共鳴率」とすると、恐ろしい現実が見えてくるんだよね。たとえば人の住む星が6つあり、それを住人の「本体との共鳴率」の順に並べたとする。左端の星1が最も低く右端の星6が最も高い、という感じだ。すると人は成長するに従い左から右へ星を移っていくことになり、ではテレパシーの有無はどうなっているかというと、成長度の低い左側の星にテレパシーは無く、成長度の高い右側の星にテレパシーは有るということになる。仮に左の星1星2星3にはテレパシーが無く、右の星4星5星6にはテレパシーが有るとしよう。アトランティス星や地球の次の星以降はテレパシーがあるから、アトランティス星や地球は星3に属しているということになる。という6つの星の関係をさっきの「恐ろしい現実」で説明すると、こうなるのだ。
『本体との共鳴率の低い星3までの住人はテレパシーのない社会の方が成長しやすく、本体との共鳴率の高い星4以降の住人はテレパシーのある社会の方が成長しやすい』
母さんによると、組織のメンバーは数少ない例外を除き、亡くなると星4へ旅立つという。ひ孫弟子候補は正式メンバーではないため星3に留年する人が多数いても、ひ孫弟子以上は本人が希望して星に留まるという例外を除き、星4へ全員旅立つのだそうだ。では音楽仲間達はどうかというと、14人全員がひ孫弟子以上。つまりこれが、テレパシーを習得しても夫婦や家族や友情が壊れなかった理由なのではないか? 俺の本体は「そうだよ」と肯定している。よって裏を返すと、恐ろしい現実が浮かび上がるのだ。
『星2を卒業し星3の住人になったばかりの人は、テレパシーを習得しない方が良い』
星2を卒業し星3の住人になったばかりの人は本体との共鳴率がまだ低いため、未熟な心がテレパシーによって露呈し、そのせいで夫婦や家族や友情が壊れてしまう。繰り返すが、これが現実なのだろうな。
とはいうものの、所詮これは俺の考え。俺程度では、分からないことの方が圧倒的に多いのである。しかしそれに甘えていると、もしくはそれを自分に都合よく使っていると、目の前に訪れた成長の機会を逃してしまうんだよね。昇と鷲と橙がテレパシー送受信機を開発しているという状況は、創造主が「ほら次はこれをやってごらん」と目の前に置いてくれた、成長の機会に他ならないからさ。




