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話を戻そう。
母さんによる子供教育学の授業は、思いがけず長く続いている。有意義かつ超面白いのでいつまでも続いてほしいけど、そんなのあり得ない。待ち遠しくてならない月二回の授業も、いつかは終わってしまうのである。それは確定事項なのだから、その時が来たら悲しめば良い。そう開き直り、母さんが先生なことと俺が準直弟子なことの相乗効果により開示制限のない子供教育学の授業に、俺は全身全霊で臨んだのだった。
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そうこうするうち、音楽仲間達による「となりのトト〇」の模写とコピーが終了した。本来の24fpsの模写に、輝力コピー板の48fpsを加えた、72fps版が完成したのだ。画質が三倍良くなった高画質版を早く視聴したいと誰もが願っていたけど、二つの理由により我慢することになった。理由の一つは、テレパシーを録音再生する装置が未完成だから。どうせなら全てを終わらせ、完璧にしてから視聴しようという事になったのである。もう一つの理由は、竜族と一緒に楽しみたいから。高画質版が完成しても待ち、登場人物達のセリフをテレパシーで録音し終えても我慢して待ち、竜族と一緒にトト〇を見た方が、きっと楽しいとみんな思ったんだね。そしてそれは、間違いなく当たっている。72fps版の完成で二回目を観て、テレパシー録音再生機の出来栄えを確かめるために三回目を観て、竜族と一緒に四回目を観るなんてこと、避けるに越したことないからさ。
という訳で喫緊の課題は、テレパシー録音再生機の完成ということになった。では進捗はどうなっているかというと、品質を度外視すれば完成していると言える。現在の品質を譬えるなら、「非常に優れた紙コップ糸電話」のような感じなんだよね。紙コップ糸電話で遊んだ経験がないと、かえって解り難いかもしれないけどさ。
しかし糸電話に譬えるのは、非難しているのではない。0から始めたにしては、驚愕すべき性能と断言できるのである。古代アトランティスのテレパシー録音再生機を覚えている母さんも同意していたから、昇と鷲と橙はほんの数秒だけ喜んでいたな。
皆には黙っているが白状すると、超高性能のテレパシー録音再生機を、俺は既に二台発見していた。母さんの友人さんの映写機が、その一台だね。美雪達にトト〇を視聴してもらった数日後、あることをふと閃いた俺は映写機を再度借り、内蔵AⅠにテレパシー云々を尋ねてみた。するとAⅠは返答を保留し、組織における俺の役職を訊いてきた。母さんの準直弟子と答えるも準が判らなかったらしく説明したところ、「直弟子以上の有資格者と判断し全機能の情報を開示します」となり、新たに表示された機能欄にテレパシーの録音と再生を見つけたのである。頭を抱えたがる手を叱咤し、その機能を俺のテレパシーでさっそく使ってみた。すると、生のテレパシーと遜色ないテレパシーが再生されたんだね。さすがに手を叱咤できず、自由に頭を抱えさせたな。
開示された情報には、映写機の由来も含まれていた。内蔵AⅠによるとこの映写機は、地球のシャンバラの倉庫に保管されていた古代アトランティスの万能視聴覚機を複製し、かつそれと判らぬよう改良したものとの事だった。この星にも同種の倉庫があることを思い出した俺はオリュンポス山へ意識投射し、直弟子用の建物に入り直弟子権限を初めて使って保管品目録を呼び出した。建物内ゆえ、ネガティブにならぬよう気を張っていたのが役立った。つまり古代アトランティスの万能視聴覚機を、目録に見つけちゃったということ。原品の借用は、言うまでもなく原則禁止だった。ただし大聖者は原品を複製でき、直弟子以上は複製品なら借用できるという。借用可能ゆえ情報開示も可能と、あの内蔵AⅠは判断したのだろうな。
目録によると、万能視聴覚機の複製品が貸し出し可になっていた。建物の管理AⅠに訊いたところ、複製品を意識体で調べるだけなら今すぐ可能らしい。さっそく地下保管庫へ飛び、ロボットが持ってきてくれた複製品の内部に入る。本体に手伝ってもらいテレパシーの録音再生部品を特定し、輝力による複製が可能か否かを模索していく。ありがたいことに、どうやら可能っぽい。ロボットのAⅠに希望を述べたら、輝力の複製品を俺個人が使うぶんには申請も不要とのこと。では遠慮なく、と現在の最大時間圧縮率である400倍を発動した2時間後。俺の時間感覚では約1カ月後に、古代アトランティスのテレパシー送受信機の輝力複製品を、俺は手にしたのだった(古代アトランティスでの正式名称はテレパシー送受信機だったため、以降はそれを用いることとする)。
というのが、約3カ月前の出来事。
輝力で複製した時はオリュンポス山の地下保管庫内ということもあり、テレパシー送受信機の工学的理解は二の次にした。その代わり入手後、同品の研究を準四次元で腰を据えて始めた。分からない事だらけだったが反重力エンジン技術者の10傑の権限を乱用し、関連分野の最先端技術を手当たり次第に引っ張って来てリバースエンジニアリングしたところ、工学的理解に指先がどうにか触れた。続いて昇と鷲と橙に頼み、三人が造ったテレパシー録音再生機を調べさせてもらう。俺の輝力複製品の件を伏せていたこともあり、唸らずにはいられなかった。三人共、極めて将来有望な技術者だったのである。「あいつらはある意味、戦争の犠牲者なんだな」 そう独りごち、三人への働きかけ方をアカシックレコードを駆使して探していく。幸い時間を掛けず、三人のプライドを傷つけることなく閃きを真四次元から降ろす方法が確定した。とはいうものの、
「う~ん、どうすっかなあ・・・」
確定した方法を実行するか否かを、俺は未だ決められずにいたのだった。




