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「今生で初めて、誰かに打ち明けることが出来ました」


 驚愕してそう明かした。驚愕した理由は、まったく意識してこなかったから。この打ち明け話を誰にもしていないことを、俺は意識したことが一度もなかったのである。でもそれを、不思議には思わないんだよね。不思議ではないけど、筒抜けなら超ヤバイことになる。混合人格さんも美雪や翼さん同様、俺の心の中が筒抜けなのかな?


「筒抜けに決まっているではありませんか」「ですよね~~」


 ですよね~であろうと、羞恥心で死にそうになったのは変わらない。タイミングの悪いことに、黒歴史筆頭の時間も今の打ち明け話で終わった。黒歴史は、過ぎ去って初めて黒歴史になる。つまり俺は歴代最強の黒歴史を振り返り悶死しそうになると同時に、甘えん坊になれることが理想の結婚相手の条件と混合人格さんにバレた羞恥心でも、死にそうになったのである。ああもういっそ殺してくださいと心の中で叫びまくる俺に、混合人格さんは「自分と夫婦の両方を誤解していますね」と呟き、俺をまっすぐ見つめた。


「理想の結婚相手に甘える頻度もしくは割合を、どれくらいと翔さんは感じますか?」


 反射的に、1千に1つという概念が脳裏を駆けた。そのあまりの多さに瞠目した俺に「ほらやっぱり」と、混合人格さんは唇を尖らせた。


「翔さんは、母さんや鈴姉さんや小鳥姉さんたちの年上女性に、よく尻尾を振っていますよね」「はい、振りまくっています」「それは、1千に1つに含まれますか?」「もちろん含ま・・・あれ?」「そう、含まれません。尻尾をブンブン振っても良い状況にしてくれた優しい年上女性達に、翔さんは尻尾ブンブンをしているだけなのです」「・・・え? すみません、混乱が酷くて考えがまとまりません」「では私がズカズカ踏み込みましょう。1千に1つしか甘えてくれない夫に、妻はどの程度の割合で甘えられますか?」「えっと、そんな制約など設けず甘えたいときに甘えてもらいたいのですが」「それを、好意を寄せられた全ての女性に適用したら自己中妻と結婚するハメになることを前世の翔さんは本能的に知っていたのも、悉く無視した理由と母さんは言っています。私も、完全同意です」「うっ・・・はい、信じます」「それを踏まえ、再考してください。そんな夫に、妻はどの程度の割合で甘えられますか?」「1千に1つ、でしょうか?」「翔さん、はっきり言います」「はい、なんなりとどうぞ」「1千に1つしか甘えさせてくれない夫など、御免被ります。このお見合いは、無かったことにしてください」「ウ、ウワァァ―――ッッ!!」


 俺は頭を抱えてテーブルに激突した。それでも足らず意識を100と1に分け、100の自分で輝力分身を創り、分身でテーブルにめり込んだ。それでも全然足らずテーブルを潜り抜け地面にめり込み、地面の中をズブズブ沈んでいく。ああ俺は、俺はなんてダメ男なんだ~~と叫びながら地中深く沈んで行ったのだけど、


「逃げずに最後まで聞きなさい、この軟弱者!」


 混合人格さんにそう叱られたとたん俺は肉体に戻り、「はい!」と背筋を伸ばせたんだよね。そんな俺に口元をピクピクさせていた混合人格さんは、咳払いを一つして話を再開した。

 それによると甘えてばかりの夫もまったく甘えてくれない夫も、妻には困りものらしい。丁度良い頻度が極めて重要なのだけど、難しいのはその「丁度良い頻度」が人によって異なることだ。よって極めて重要なことを考慮すると、その「丁度良い頻度」の等しい男女は夫婦としての相性が良いと言える。しかし再度難しいのが夫婦としての相性の良さには、極めて重要な要素が他にも複数あること。それらを踏まえると「理想の結婚相手なんて見つかりっこない」と絶望するかもしれないが、ある意味それは正しいという。どういうことかと言うと人には見つけることが凄まじく難しいお陰で、


  創造主が代わりに見つけてくれる


 という仕組がこの宇宙にはあるってことだね。いやはや、素晴らしいの一言に尽きる。心の中で申し訳ないが俺は創造主に、全身全霊で五体投地したものだった。そんな俺に、


  感謝されるとやはり嬉しいな


 なんと創造主が返事をしてくれたのだ。俺は全宇宙の人々を代表する心づもりで、俺達を愛してくださっているお礼を述べた。全然いいよ~系の概念がすぐ返って来て、胸がポカポカになっていった。そのポカポカさが、二本の針を溶かしてゆく。そして痛みの消えた心に、ある文字が浮かび上がってきた。その文字が一目で気に入った俺は、命名を助けてくれた創造主に再び感謝を述べた。予想どおり返事はなかったけど、遥か彼方の次元で母さんがやたらニコニコしているようだったから、俺は大満足だった。

 その大満足を、表情と姿勢で示す。そんな俺に意表を突かれた顔をしたのち、混合人格さんは母さんに負けぬニコニコ顔になった。おそらく混合人格さんは、俺と創造主のやり取りを知覚できなかったと思われる。すると自分の名前が決まったのも知らぬことになるのに、俺の満たされた心が筒抜けになっただけで、この人はこうも喜んでくれるのである。混合人格さんに、愛おしさが募ってゆく。お見合いを断られたのは、俺が未熟だから。なのに「呼び捨て」の「ため口」で交流するのは忍びないが、この人の願いを叶えることを最優先しよう。それが俺の、願いなんだしさ。そう思い定め、俺は語りかけた。


「自分の名前を付けて欲しいと、あなたは請いました」

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