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バカンスを終えた数日後。
夏季休暇を満喫した子竜達が幼稚園に戻ってきた。まだ幼竜の子竜達は白い鱗に覆われているのに、健康的に日焼けしているように感じるのは、日本人の感覚が多分に残っているということなのだろう。「「「「先生ただいま!」」」」と次々抱き着いてくる子竜達を、俺は愛情たっぷり撫でてあげた。
昼食中、周囲に集まって来た子竜達の話す夏季休暇の様子に耳を傾けた。園長によると子竜は幼稚園児になって数年間、長期休暇明けの最初の食事を項垂れて摂るが、次第に変わっていくという。親と離れた寂しさより、6週間振りに再会した友と過ごす時間を大切にするよう変わっていくのだそうだ。今俺の周りにいる子竜達が、まさにそれだね。子竜達の成長を喜ぶ確固たる気持ちが、俺の中にある。だが同時に親竜達の胸中を案じずにいられないのは、俺も歳をとったという事なのだろうな。
周囲で盛んに交わされる夏季休暇の話によると、子竜達の故郷の子たちも輝力工芸スキル習得を目指し、熱心に訓練しているみたいだ。特に今回はお手玉やあやとりを披露したこともあり、故郷の子たちの目の色が違ったという。輝力粘土の代わりに崖で土の粘土を採取し、友達を模った像をプレゼントしたら、
「一生の宝物にするってみんな言ってくれて、泣いてしまいました」
と鈴桃は涙を流しつつ俺に話してくれた。ハンカチを取り出し、鈴桃の涙を拭いてあげる。それを見た女の子たちが私も私もと一斉に涙を流し始め、対して男の子たちは百面相をして涙を堪えていたのが、俺は嬉しくてならなかった。
昼食後、子竜達のお昼寝の時間になった。故郷の島からこの島まで数日かけて泳いで来たのだから、たっぷり寝させてあげないとね。俺はその時間を、竜達用の輝力製ピアノを創る時間に充てた。輝力製ピアノはいつでもどこでも創造でき、また場所や時間によって音色の変化する理論は存在しない。しかし子竜達の幼稚園の庭で、子竜達の健やかな寝息を聞きつつ創った方が良い音色のピアノになると、俺には思えてならなかったのである。子竜達の寝息に耳を傾けていると、子竜達が瞳を輝かせてピアノを弾く様子や、故郷の竜達の伴奏をピアノで務めている様子が止めどなく脳裏に浮かび上がってくる。そんな幸せな未来を手助けすべく、俺は心を込めて輝力製ピアノを創造していった。
とりあえず40台のピアノを完成させ、40個の指輪内に収納し終えた。俺は美雪と美咲に頼み、40個の反重力ペンダントをカレンの後部座席から持ってきてもらう。ティンパニ等の楽器に内蔵している物と同種のあの反重力ペンダントは、母さんに助力を請い造った特別性。楽器保管庫に収納すればバッテリーを充電できる、この星においてさえオーバーテクノロジーの工業製品なのだ。然るに強奪されて調べられたら大事になるけど、竜族が散山脈諸島で使う分には無問題。この星の人々は自然を大切にし、竜族は最も厳重に保護されている野生動物だから、強奪の心配はないんだね。バッテリーを充電する演技を年に一度すれば監視カメラを完璧に欺けると、母さんも太鼓判を押していたしさ。
40台のピアノの内訳は、20頭の子竜達の20台分しか決まっていない。残り20台は、夫婦で1台を共有することに一応なっている。みんな仲良し夫婦なので大丈夫と思うが、夫婦喧嘩の元になるなら追加で創ると成竜達に伝えていた。竜族は心が成長しているから、子竜達の反面教師になるような事はしないよね・・・・お願いだからしないでね!
それは置き、美雪と美咲が40個の反重力ペンダントを持ってきてくれた。お礼を述べ、三人で楽器保管庫に足を踏み入れる。子竜用の台座と成竜用の台座を輝力でそれぞれ創り、台座の上に20個の窪みを穿つ。その一つ一つに、指輪と反重力ペンダントのセットを入れていった。誰がどれを使うか等々は、竜達に決めてもらうことになっている。組織と同じく竜族も自主性を重んじる教育をしていることを、俺は感謝した。
さて、時間が余った。アカシックレコードで確認したところ、子竜達が目覚めるまでまだ30分ほどある。俺も昼寝しても良いが、美雪と美咲をほったらかすのは気が引ける。俺は近いうちに頼もうと思っていたことの、予定を早めることにした。
「美雪、美咲、少し話せる?」「「いいよ~」」
機嫌の良い二人の声に予定を再度変更し、三人で崖の先端へ飛んだ。7月中旬ゆえ夕暮れにはまだ遠く、西日の強さに辟易しそうになるのが実情。俺は輝力で四阿を創り、二人に座るよう促す。妖精達が気を利かせて、風を吹かせてくれた。7月中旬の赤道付近だろうと、日差しを遮る四阿で標高1千メートルの微風を頬に感じるのは、すこぶる心地よい。すかさずAⅠ用のトロピカルジュースを出したところ、二人は万歳して喜んだ。ニッコニコの二人に負けぬニコニコ顔で、俺は準四次元から輝力製の録音再生機を取り出す。万が一を考えあの二曲を録音しておいた数週間前の自分を、俺は褒めた。
録音した二曲は、「となりのトト〇」で使われている二曲。日本人にお馴染みの、トト〇を連呼する歌と、歩こうを連呼する歌だね。登場人物のセリフは音楽仲間達がテレパシーで伝えても、歌はテレパシーにしたくない。映画を見終えるや子竜達が元気に歌えるよう、竜語で聴かせてあげたかったのである。という訳で、竜語を完璧に話せる美雪と美咲に「この二曲を歌って欲しいんだ」と俺は頼んだのだ。
子竜達の眠りを妨げぬよう相殺音壁で四阿を包み二曲を聴いてもらったところ、美雪と美咲は快諾してくれた。感謝を述べ、お礼にケーキを追加する。満面の笑みでケーキを頬張る二人に「映写機を明日借りて、三人で映画を観よう」と言ったら、左右から抱き着かれてしまった。なんとも、役得のすぎる俺だった。
そうこうするうち25分が経ち、幼稚園の庭に戻った。椅子とテーブルを輝力で創り、子竜達が目覚めるのを待つ。最初に目覚めた鈴桃へ美咲が飛んでいき、可愛くキュルキュルじゃれ始めた。それに釣られて他の子竜達も続々目を覚まし、皆でキュルキュルはしゃぎだす。俺の顔がふにゃふにゃの極致になったのは、言うまでもないことだった。




