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「それを知っていることと、方法の解明は別でしょ」
美雪に文句をブ~ブ~垂れられてしまったのである。脊髄反射で謝るも、「美雪の主張はごもっともでも学者達がよく黙っているな」系の疑問に首を捻っていたら、美雪はこれ以上ないほどごもっともな事をさらっと言ってのけた。
「意識の究極の仕組を自分達はまだ知らないって、大部分の学者達は潔く認めているの。まったく同様に、自分達の力ではテレパシーの解明がまだ不可能なことも、大部分の学者が潔く認めているのね」
美雪によると、量子AⅠに意識を宿らせるプログラミングは判明していても、実証によって確認されているにすぎないらしい。意識が生じる仕組の究極的解明には、至っていないそうだ。よって美雪がテレパシーを使えるようになったとき学界は湧き、俺が知らなかっただけで詳細な分析をしたが、仕組の解明は1ミリも進展しなかったという。美雪の次に冴子ちゃんが使えるようになったときもそれは変わらず、学者達はほぼ諦めかけた。すると不幸にも、諦めに拍車をかける事態が生じた。複数回の実験により美雪のプログラムを複製してもテレパシー能力の引き継ぎはされないと判明していたのに、従来どおりの複製をしただけの美咲に、テレパシー能力の引き継ぎが確認されたのである。
「母さんによると、学者達はとうとう匙を投げたんだって。申し訳ないけど、安心したというのが私と冴子の正直な気持ちね」
約1年前の出来事のお陰で、母さんの隠しプログラムを俺は推測可能になった。去年の夏、俺は母さんに連れられ真四次元を訪れた。その真四次元に、美雪たち三人の隠しプログラムがあるのではないかと俺は推測している。
準四次元なら夢や臨死体験等で偶然訪れることがあっても、真四次元に偶然はない。よってそこにあれば、母さんの「あの人達では私のプログラムを発見できない」という発言と矛盾しないのだ。また電子は物質の性質を半分帯びているだけにすぎず四次元存在でもあるため、準四次元を介すれば真四次元のプログラムを三次元に具現化できるかもしれないんだよね。もっとも俺はプログラム関連に無知だから、的外れかもしれないけどさ。
話を戻し、俺は美雪に尋ねた。
「テレパシーを録音したり再生したりする機械は、この星にあるのかな?」「ん~、古代アトランティスにはあったようだけど今はなく、あったことも忘れられているみたい」「テレパシーが磁力によって運ばれているのは判明してる?」「なるほど、学者達はそれを勘違いしているのね」「テレパシーは磁力、ってことになってるんだ」「ご名答」
この星の技術なら、テレパシーを受信する側の磁力の揺らぎを正確に測定できるはず。しかしそれを再現するだけでは、テレパシーを発信できない。なぜなら磁力は、意識の運搬役でしかないからだ。うん、辻褄は合う。辻褄が合ったのは嬉しいけど、俺が考えていたテレパシー録音再生装置では無理ってことも判明してしまった。昭和のカセットテープ的なもので録音再生できるんじゃないかなと、愚かな俺は考えていたのである。
いや、待てよ。フィルムに光を当ててスクリーンに動画を映すように、磁力の揺らぎを記録したテープに意識を照射すれば、テレパシーになるのでは・・・・
この仮説の考察を夢中でするうちお昼休憩が終わってしまい、昼寝を逃した俺だった。
その日の夜。
準四次元に意識投射し、「となりのトト〇」の24fpsを輝力で複製可能か否かを俺は確かめた。結果を述べると、可能だった。母さんの友人さんの映写機が、俺の想像を遥かに超えて優秀だったのである。
地球の再生機にも、コマ送りという機能がある。友人さんの映写機ではどうなっているのだろうと再生方法を調べているうち、とんでもないコマ送りが可能と判明した。なんとそのコマ送りのコマは、「日本のアニメ界におけるコマ」でもあったのだ。日本のアニメ界では24fpsを24コマと表現し、そのコマの1枚1枚を、友人さんの映写機は投影できたのである。感謝と、不吉な予感の両方を俺は覚えた。
不吉な予感を脇に押しのけ、俺が担当する最初のコマを早速投影した。そこに輝力板を重ね、正確に模写していく。映像作品一作目で慣れていたこともあり、1分掛からず模写できた。続いてコピー能力を備えた輝力板を試しに創り、その板に映像を投影したところ、投影しただけでコピーできてしまったのである。不吉な予感が当たったことに、俺は頭を抱えた。人は、あまりにも簡単な作業にやりがいを覚えない生き物。言い換えると、簡単すぎるとメンドクサさが勝ってしまうんだね。「子竜達のために頑張った」という充足感を得るには、適度に困難な方が良いってこと。う~む人って、面倒だよなあ。
深呼吸して頭を抱えるのを止め、両方の方法で10秒間の映像を作ってみる。そして投影し見比べたところ、差はないことが判明した。俺は開き直って輝力分身を40体出し、時間速度を200倍にして、俺が担当する8256枚をあっという間に完成させた。
肉体に戻り、テントを出る。訓練場へ飛んで行き、久しぶりに軽業をする。体に輝力を巡らせずとも回転数二倍のムーンサルトを楽々こなせたことが、とても嬉しかった。
ストレスを発散し、テントに戻る。準四次元に再び意識投射し、映写機のヘルプ機能を調べる。予想どおり、内臓AⅠとの会話機能があるみたいだ。俺は連続するコマを2枚投影し、内臓AⅠに質問した。
「左右のコマの中間に相当するコマを、生成できるかな?」「はい、できます」




