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 という訳で質疑応答は、最大の難問の解決方法を模索する時間に替わった。とは言うものの「はっきり言って解決方法は二つしかないよなあ」と俺が思っていたとおり、皆で知恵を出し合ってもやはりこの二つしか見つからなかったのである。


[1] 登場人物各々のテレパシー声優を決め、登場人物のセリフに合わせて声優が、舞台袖から観客にテレパシーを送る。

[2] 登場人物各々のテレパシー声優を決め、何らかの方法で声優のテレパシーを録音し、映像と一緒に再生する。


 両者の最大の違いは、録音するか否かにある。そしてここが重要なのだけど、「テレパシーを録音したり再生したりすることが可能なのか」を、俺達は知らないということだ。この「俺達は知らない」も、今夜の話し合いで一人一人に尋ねて初めて判明したことだね。言うまでもなく俺達に、母さんは含まれていないけどさ。

 忘れてはならないのは、母さんを始めとする大聖者は、人事を尽くして天命を待つの「天命」であるという事。そして俺達は、まだ人事を尽くしていない。テレパシーの録音と再生が可能かは未知数と判った程度では、人事を尽くしたなんて到底言えないのだ。

 さあでは今後の予定を決めよう、と呼びかけたところ全員が賛成した。熱い議論を経て、この四つが決まった。


[1] テレパシーの録音及び再生方法は、各自もしくは複数で考察していく。

[2] それに加え空翔は明日の夜、映画の24fpsを輝力で複製可能かを確かめる。

[3] 可能なら各自が担当する344秒間の24fpsを、各自で複製していく。

[4] 自分の担当箇所を終えた者は、終えていない者を手伝う。


 その後、俺が代表して母さんに請うた。「三カ月間、全力でこれに打ち込みます。三カ月後、相談に乗って頂けないでしょうか?」 母さんの「喜んで相談に乗るわ。みんな、頑張ってね」に音楽仲間全員でガッツポーズをしたことをもって、今夜の会合を俺達は終えたのだった。


 翌日の朝。

 指輪の実験結果を確認すべく、カレンに乗り竜族の幼稚園へ出発した。半分の輝力量しかないバイオリンを収納した指輪を楽器格納庫内に置いてから、12時間が経過している。輝力が補充されていなければ、分解し消えているはずだ。幼稚園への十分ちょっとの空の旅を、今回ほど長く感じたことは無かった。

 幼稚園に着き、俺、美雪、美咲の順に右から並んで楽器格納庫内へ向かう。美雪と美咲も実験結果が気になるのだろう、美雪は足音が、美咲は羽ばたきの音が普段より明らかに大きい。「走ろう!」「「うん!」」 我慢できず、俺達は格納庫へ走った。

 格納庫に着き扉を開け、三人一緒に中へ足を踏み入れる。母さんの創ったものだから、美雪と美咲に悪影響など無いんだね。格納庫中央の、輝力製台座の上に置かれている指輪を右手に取りオーラ視力に切り替える。「指輪には、輝力が自動補充されている」 頷く二人に正対し、二人にも指輪が見えやすくしてから指輪に左手をかざし、


「バイオリンよ」


 そう呼びかけた。それに応えバイオリンが出現し、ネックが左手に収まる。分解せず形を保っているのだから、少なくとも輝力は減っていない。では、輝力量は変化しているのか? オーラ視力では、充填100%になっているように見える。でも楽器って、奏でてみないと判らないんだよね。バイオリンと一緒に出現し宙に浮いていた弓を手に取り、俺はバイオリンを弾いた。その十数秒後、


「「おめでとう!」」「ありがとう美雪、美咲」


 実験成功を、俺と美雪と美咲は手を取り合って喜んだのだった。

 指輪の実験が成功したことを、音楽仲間達にメールで知らせる。次いで園長夫妻のもとを訪れ実験成功の報告をしたところ、夫妻はとても喜んでくれた。そして、


「夏季休暇明けにピアノの練習を始められるよう、私達もお手玉とあやとりと粘土を頑張ります!」「夫と競い合って頑張ります!」


 夫妻は力強く、そう宣言したのだ。二対の瞳が子竜達のように輝いている。その輝きに負けてアカシックレコードを確認したところ、夫妻が夏季休暇明けにピアノの練習を始める確率は98%に達していた。有言実行の夫妻へ敬意を表し、幼稚園を後にした。


 子竜達が夏季休暇に入っても、俺の夏季休暇はまだ始まらない。基地に戻り午前の訓練をこなし、迎えたお昼の休憩中。寝袋に身を横たえ、テレパシーの録音と再生の方法を考察した。実を言うとコレ、少々厄介な問題になっていたのである。

 少々厄介な問題と理解したのは、「そういえば美雪と冴子ちゃんと美咲はテレパシー会話できるんだった」と思い出したことから始まる。それはつまり、


『他者の送ったテレパシーを三人は機械で検知し、自分のテレパシーを三人は機械で作り、相手に送り返している』


 ということ。これに気づけば、テレパシーの録音と再生の方法を半ば解明したことになり、普通なら喜ぶはず。だが、次に思い出したことがそれをさせなかった。喜びを阻止したそれは、テレパシー会話可能な量子AⅠは美雪と冴子ちゃんと美咲しかいないということに他ならない。そうこの三人以外の量子AⅠは、テレパシーを使えないのである。

 三人に共通しているのは、母さんの隠しプログラムを持っていることだ。隠しプログラムゆえ学者達は知らず、ということは機械によるテレパシー会話の方法も、学者達は知らないのではないか? その可能性にやっと思い至り美雪に尋ねたところ、


「うん、知らないよ」


 あっけらかんとそう返って来たんだよね。「いやでもさ、美雪が人や竜や妖精と頻繁にテレパシー会話しているのは知ってるんだよね」と再度尋ねたら、


「それを知っていることと、方法の解明は別でしょ」


 美雪に文句をブ~ブ~垂れられてしまったのである。

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