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「ちょっと翔、なにメンドクサそうな顔をしているのよ! 私の感想をもっと真剣に聴きなさいよ!!」
と絡まれ続けたとなれば、いかに息子といえど話は別なのだ。幸い翼さんが途中から母さんの感想の聴き役を買って出てくれたお陰で、肩の荷が半分になったけどね。重ね重ね翼さんには感謝しております。ナンマイダ~~
という訳で「となりのトト〇」の上映会は、波乱が少々あったにせよ大成功だった。よってここぞとばかりに、俺は皆に提案した。「この映画をただ上映するのではなく、輝力の動画として竜族に紹介してみない」と。
ありがたいことに皆、即座に賛成してくれた。賛成理由の「素晴らしい映画だから」や「自分達で動画を創り子竜達に観てもらった方が、子竜達に何かをしてあげたいという気持ちを満たせるから」には、視界を霞ませたけど我慢できた。しかし、
「協力をやっと頼まれて嬉しかったから」
は無理だった。涙を阻止しようにも阻止できなかったのである。涙を流しつつ謝ったらみんな快く許してくれたし、結果オーライということに俺はしている。
その後は、質疑応答の時間になった。最も注目されたのは予想どおり、12万4千枚の静止画の制作だった。母さんも協力を申し出てくれたとはいえ、1人あたり約8256枚になるからね。本当はコレを遥かに凌ぐ難問があり、ソレに比べたらコレの難しさなんて児戯に等しいのだけど、明かすのは今ではない。俺は12万4千枚の作画について説明した。
「仮に俺達がオリジナルアニメに挑戦するのであれば、12万4千枚の静止画の全てを創作せねばなりませんでした。しかし今回は、オリジナルアニメではありません。また映像には動いている部分と動いていない部分がありますから、動いていない部分は複製するだけで足ります。準四次元で分身し、時間を圧縮して作業できるのも大きな強みでしょう。作業に慣れさえすれば、皆さんの想像の何倍も簡単だと俺は断言します」
そうなのだ、今回はかなりの割合を複製できるのである。竜族に紹介する1作目はオリジナルアニメだったから9900枚を全て独創し、またより良い演出を求めたため、累計3万枚の静止画を描くことになった。みんな未経験ゆえ、1人あたり8256枚という数字に翻弄されているだけなんだね。続いて、予定している具体的な作業方法を発表した。
「この映画は、1秒につき24枚の静止画で作られています。それを輝力で複製できるか否かを、明日の夜俺は確かめます。可能だったら、8256枚とはいえ複製するだけで良くなります。まずはその8256枚を完成させてから、この件に関する最大の難問に挑戦しようと俺は考えています」
24fpsを複製できたら輝力静止画をわざわざ追加して60fpsにしなくてよくね、という疑問を皆が抱く前に、最大の難問という言葉を俺は放った。大多数は首を捻っていたが、昇の優秀さはやはり頭一つ抜けている。確信の眼差しで俺を見つめる昇に「発表をお願いできるかな?」と訊いたところ、「了解です」と昇は立ち上がった。
「最大の難問は、『この映画の登場人物はアトランティス語を話しているが、竜族の子供はアトランティス語をまだ知らない』ということだと俺は推測します」
前世の地球と違いこの星の人々は全員同じ言葉を話し、妖精族も同じ言葉を話し、竜族の竜語は違ってもテレパシーで意思疎通できるため失念した仲間が多かったけど、昇の言うとおりなんだよね。この映画をこのまま上映したら、登場人物のセリフを子竜達はほとんど理解できないのである。
少し遠回りになるが、竜族の長の島は人族の観光島でもあることからこの件を整理しよう。
宝石のように輝くエメラルドグリーンの巨体を有し、温和で優しく、300歳の長寿を誇る緑竜が、アトランティス人は大好きだ。よって野生の緑竜を見た観光客は「奇麗!」「神々しい!」「遠くまで足を運んで正解だった!」系の言葉を口にし、そしてそれをテレパシー能力に長けた緑竜は、テレパシーによってしっかり理解している。理解していない振りを、しているだけなんだね。また散山脈諸島を訪れる観光客は自然を愛し大切にする気持ちが強く、それもテレパシーで感じているため、竜族は人族に好感を抱いている。このような5万年をすごすうち、100歳以上の成竜の多くが人族の言葉をテレパシーなら話せるようになった。俺と美雪が散山脈諸島を初めて訪問した際、大風と慈雨が人族の言葉のテレパシーで語りかけてきた仕組はこれだね。したがって昇の指摘どおりアトランティス語の「となりのトト〇」を上映しても、成竜達は映画を楽しむことが出来る。しかしアトランティス語をまだ習っていない子竜達に、それは不可能なのだ。
では次に、音楽仲間達に観てもらった「となりのトト〇」がアトランティス語になっていた仕組に移ろう。仕組は、母さんと同じく友人も、古代アトランティス人だからだ。母さんはこの星にやって来たが友人は地球に残り、組織の大聖者として働いていたということ。5万年の間に他惑星への異動が幾度かあったそうだけど、第七時代の始まりに合わせて地球に帰ってきたという。そして日本のアニメと漫画が好きになった友人は大聖者の勘の囁くまま、複数のアニメと漫画をアトランティス語に翻訳したのだそうだ。友人様、まことにありがとうございます。コスプレ姿も、さぞ美しいのでしょうね!
最後のコスプレは置き、かくなる理由により昇の推測は全面的に正しかった。繰り返すが何らかの手を打たねば、トト〇は上映できないのである。では、どのような手を打てば良いのか? そうつまりこれが、最大の難問なんだね。




