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 恥ずかしいので話題を替えると、俺達への挨拶を終えた子竜達は続いて貴賓席へ赴き、次に園長達の席に行ったという。今子竜達は親竜達と一緒に過ごしていて、俺の記憶のない間に決定したところによると、仲間達はピアノ協奏曲の演奏を5分遅らせることにしたらしい。親竜が子竜を褒めちぎり、子竜がはしゃぎまくっている親子の時間を、邪魔しないためだそうだ。我が意を得たりと、俺は皆に謝意を述べる。そして皆と一緒に、子竜達の演奏を振り返っていった。

 子竜達が演奏したのは、日本の園児にお馴染みの「チューリップ」のような、同じメロディを多用するゆっくりとした曲だった。よって笛の指使いを覚えやすく、頻繁に合唱しているので演奏も合わせやすく、管楽器の先生を務める仲間達によると、1カ月の練習で笛組は十分間に合ったとのことだった。

 笛組の次に余裕があったのは、マリンバとティンパニだった。マリンバは笛と同じく子竜全員が挑んだ課題だったし、ティンパニは打楽器奏者を目指している子竜に天賦の才があったからだ。その子は性格も勇に似ているため打楽器の授業は、打楽器を楽しく協奏しているのか腹を抱えて笑い合っているかの、どちらかしか見たこと無いという状況になっていた。そのお陰なのだろうその子のティンパニには陽気さと安定感があり、子竜達も安心してリズムをゆだねていたから、勇は最高の授業をしているのである。

 トランペットとトロンボーンは、「この二頭でなければ無理だった」ということで意見が一致した。この子たちは、音量の大きい心地よい音を連続して吹くことがまだできない。1カ月の練習では、間に合わなかったのだ。しかし、この二頭は親友だった。かつテレパシーも出来るため、音を交互に担当すれば4音までのメロディを奏でられたのである。それが嬉しかったのだろう、その子たちは金管楽器特有の華やかな音を出すことに長け、子竜達と観客の心を高揚させるとこに多大な貢献をしていた。

 チェロの子も、音量の大きい心地よい音を連続して弾くことがまだできなかった。だが子竜達には、天才作曲家の昇が付いている。昇は、単音でも心に響く箇所をチェロに担当させたのだ。かつ音程がドとシのみだったため、その子はこの1カ月間ドとシのみをひたすら練習した。それが実りさっきの演奏では、心地よい伸びやかな音を響かせて魅せたのである。チェロを教える達也さんはよほど嬉しかったのだろう、昇を窒息させんばかりにヘッドロックしていたな。

 またチェロは冒頭のシ以外に一度だけ、バイオリンと協力し一つのメロディを奏でることがあった。バイオリンの鈴桃に恋をしているその子のモチベーションは凄まじく、そしてそれも、演奏に必要な技術をたった1カ月で習得した大きな理由だったのである。昇のこの配慮を女組は手放しで褒め、鈴姉さんと奏に両側からベタ褒めされた昇は「俺もカケ兄同様、記憶が数秒間ないんです」と、俺にこっそり言っていたな。昇、おめでとう!

 このように子竜達の演奏を振り返った結果、


「最高功労者は、昇にします!」「「「「おめでとう~!!」」」」


 ということになった。昇は「俺ですか? いや俺じゃないでしょ?!」系の反論をしていたが、鈴姉さんと奏の二人に花束を贈呈されるや歴代最高のふにゃふにゃ顔になっていた。まったくもって、ネタを提供してくれる漢である。俺ら男組は昇を除く概念テレパシー会議を開き、昇の大イジリ計画について熱い議論を交わしたものだった。

 ちなみに花束を輝力で創ったのは、翼さんだった。華道の師匠の教えをこの星でも守り子供の頃から花を育ててきたからだろう、輝力花の創造は翼さんが群を抜いている。その技は翼さんの教え子たちに受け継がれ、教え子のいる学校や職場や家庭には素晴らしい輝力花がいつも生けられているという。さすが翼さん、野暮な俺には絶対無理だよなあ。

 なんて感じにワイワイしているうち、5分経った。夕食会の閉会時間までまだ余裕あるけど、何が起こるか判らないのがこの宇宙。俺達はサプライズ(笑)の準備を始めた。

 それを、竜達は機敏に察知した。おそらく「そろそろサプライズじゃない?」と当たりを付けていたのだろう。竜族は皆が皆、期待を込めた眼差しを俺達に向けてくれている。嬉しい限りだ。察知されたからには隠す必要ないと開き直り、俺達は大急ぎで身づくろいを済ませて演壇へ向かった。その道中、


「ワ~~!」「二度目だけどやっぱり凄い!!」 


 パチパチパチ~~っと、歓声と拍手が巻き起こった。前回の「ベートーベンの運命」と同様、演壇へ歩きつつ俺達は分身を出していったのだ。子竜達はこの半年間の大半を楽器演奏の練習に費やしたため、輝力分身を出す技術をさほど向上させていない。よって歩きながら自然と分身していく俺達の様子に、多大な関心を抱いたみたいなのである。子竜達のやる気増進に役立った俺達は、更に足取り軽く演壇に上っていった。

 分身で必要な人数を揃えた俺達は各々椅子を創り、腰を下ろす。と同時に客席から、


「?」「?」「「「「????」」」」


 ハテナマークが大量に噴出した。演壇前方の中央に大きな空白を確保し、俺達が並んでいたからだ。それもそのはず、今夜の演奏はピアノ協奏曲だって竜達は知らないからさ。

 ただピアノ自体は、半年前の夕食会で竜達は見ている。ベートーベンの耳が聞こえなくなっていく状況を、藍にピアノを弾いてもらい表現したからだ。難聴が重くなっていくことを印象付けるべくピアノの音を微かにさせるのみだったことと、ベートーベンの生涯が強烈だったことの相乗効果により、ピアノという楽器自体は記憶にあまり残らなかったみたいだけどね。とはいえその方が今夜の衝撃は強くなるから、好都合なんだけどさ。

 という訳でピアノの記憶が曖昧なはずの竜達にピアノを紹介すべく、俺は口を開いた。


「それでは本日のサプライズの主役を務める翼さん、こちらへお越しください」

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