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「「「「思います!!」」」」
全員の声がピッタリ揃った。俺は分身を20出し、子竜達の頭を撫でる。キュルキュル甘えてくる子竜達にデレデレになりつつ、俺は言葉を続けた。
「その思い出の一つに、皆が俺の手の柔らかさと温かさを褒めてくれた出来事がある。あのとき皆が、自分達も柔らかく温かな手を習得してみせますと誓ったのは、俺の宝物の一つだ。さあみんな、自分の手を出してごらん。皆はあの時の誓いを、叶えたんだよ」
子竜達は両腕を出し感慨深げに見つめたのち、周囲の子たちと体を触りあった。「柔らかい!」と「温かい!」が一段落したのを機に、親竜達へ顔を向けるよう促した。
「皆も将来、親としてこの幼稚園を再び訪れる。そして皆で、今夜の思い出話に花を咲かせるんだ。皆がこれからする演奏も、将来の宝物になるんだね。そんな未来の自分を、目を閉じて頭の中に思い描いてごらん」
俺は分身俺にテレパシーで呼びかけ、子竜達の松果体を活性化させてもらう。青白い光を眩しいほど放つようになった子竜達の松果体に俺は創造力を吹き込み、そして頼んだ。どうかこの子たちの思いが、実現しますように。
松果体がひときわ輝いたのち、子竜達は瞼を開ける。演奏をしたくてしたくて堪らなくなった20対の瞳に、俺は微笑んだ。
「さあみんな、宝物を創っておいで」
「「「「はい、先生!!」」」」
子竜達が我先に楽器保管庫へ駆けていく。安定感抜群の四つ足だろうと「転ばないよう注意してね!」と呼びかけずにいられない俺って、過保護だよなあ。
などと親の気分を密かに味わっていた俺は、いつのまにか窮地に立たされていたらしい。ふと気づくと、竜族の長の大風を始めとするすべての成竜達に取り囲まれていたのだ。曲がりなりにも戦士の俺が、この状況に気づかない訳がない。巨体の成竜達は隠密モードで俺に近づいて来たに違いなく、そしてそんな芸当が出来るのはこの場にただ一人しかいませんよね! と母さんに非難の眼差しを向けたところ、両手をゴメンナサイの形にして母さんはお茶目に笑っているではありませんか。ゴメンナサイなんて欠片も思っていない母親に溜息を付きそうになるもそれより早く、大風が事と次第を教えてくれた。
それによると子竜達が走り去ったのと入れ替わりに、親竜達は俺に駆け寄り「ナンマイダ~」をするつもりだったらしい。でも母さんに許してあげてくださいとテレパシーで頼まれ、星母様の頼みならと一斉に引き下がったところ、
「普通のお礼をする手助けを、星母様はしてくださったのです」
との事だったのである。俺は立ち上がり、早とちりしたことを母さんに詫びた。「いいのよ、自慢の息子」 そう微笑む母さんに続いて成竜達にお礼を言われたお陰で、俺も普通に対応することが出来た。成竜達が満足げな足取りで自分の席へ戻って行く。その後ろ姿へ一礼し、母さんにも再度一礼して俺は席に着いた。突如発生したハンカチ案件を回避するには、どうすれば良いのかな? と頭を悩ませていたところ美咲が傍らに飛んできて、「お兄ちゃんさすが~!」と褒めちぎってくれた。霞んでいた視界が急速に晴れていく。俺はお礼を兼ね、美咲を猫可愛がりした。
そうこうするうち演壇下手に、マリンバを押して運ぶ子竜が現れた。四つ足の竜族はこのような場合、額をマリンバに当てて押すのがこれまでの常識。にも拘わらず、その子は輝力の両腕を使い胸を張って演壇に現れたのである。よって、
「「「「ウワ―――!」」」」
この時点で会場は湧いた。拍手と喝采を浴び、演壇を4分の3ほど進んだ子竜が歩みを止め、マリンバをセットする。次いで計6頭の子竜達が協力し、2台のティンパニを演壇に運び入れた。輝力製ゆえ重さはないがそれだと演奏できないため、全ての輝力楽器は重石か反重力ペンダントを内蔵しているのだ(反重力ペンダントには重力発生機能もあるんだね)。創った晴によると、反重力ペンダントはティンパニの重さを30キロにするらしい。すると1頭の負担は10キロになるので苦もなく運べるが、バランスを崩したりすると重さゼロにすぐ戻るという。反重力ペンダントさん、子竜達をよろしくね。
それはさて置き、計6頭の子竜がティンパニを演壇奥の中央に設置した。そして5頭は首に下げた袋から笛を取り出し、残りの1頭はバチを取り出して、ティンパニ奏者の位置に立った。
続いてティンパニの下手側に、トランペットを携えた子竜とトロンボ―ンを携えた子竜が並ぶ。ここでようやく、親竜達は気づいたらしい。子竜達は単に楽器を運び入れているのではなく、器楽曲を演奏するための所定の位置に付き始めているのだと。
その気づきに合わせたかの如く、9頭の子竜が笛を携え下手から現れた。ティンパニを運んできた5頭がそれに加わり、7頭ずつ離れて左右に並ぶ。左右の間には、空白が意図的に設けられている。歌と劇を愛する竜族が、その空白の意味を見誤るなどあり得ない。そうそれは、主役のための場所だね。演壇に登場していない子竜は、残り2頭。ダブル主役なら2頭一緒に現れ、そうでないなら準主役がそろそろ・・・と親竜達が当たりを付けた時、男子の子竜がチェロを携え現れた。この1カ月をチェロの演奏のためだけに捧げ、練度半年相当の評価を得たその子へ、俺は惜しみない拍手を捧げる。といってもそれは、
「せえの!」「「「「鈴桃ちゃ~ん!」」」」「「「「キャ―――ッ!」」」」
主役として最後に登場した鈴桃への拍手には、到底及ばないんだけどさ。




