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 歌の先生を引き受けた母さんの意図に気づく前も気づいた後も、名所や絶景スポットを俺はコロニー内に創っていった。その最中は気付かなかったがある時ふと創造を止め、周囲に目をやり視線を上に向けた。あの山にアレを創ったその湖にソレを創った等々を思い出しているうち名所と絶景スポットの全体像が心に浮かび、そこにスペースコロニー自体が加わり全創造物を俯瞰したさい、芯が存在することに初めて気づいた。それは、準四次元に全長600キロのスペースコロニーを出現させた時から数秒前の絶景スポットの創造までを貫く、揺るぎない芯だった。その芯は創造の動機であり、俺は自分でも知らぬ間に同一の動機によってこのスペースコロニーを創り続けていたのだ。動機を言葉にすれば、


  翼さんのため


 になるだろう。翼さんへの償いのためにこのコロニーを出現させ七大名所を内部に創り、旅行したくてもできない翼さんが旅行気分を味わうために、絶景スポットを今も創り続けている。それが揺るぎない、俺の動機だったのだ。

 いやはや、呆れるしかない。俺は美雪が大好きで、クルクルやらお姫様だっこやらをしてそれを本人に伝えている。その気持ちに嘘は微塵もないが、それは俺が意識している心の中限定のことだったらしい。意識していない無意識領域では、俺は翼さんのことも好きだったのである。そうそこには「も」が入り、よって久しぶりに実感したのだ。ああ俺の中には、ハーレム俺が確実にいるのだと。

 白状すると怖くて堪らなくなり俺はその後、無意識領域をやっきになって調べた。他にも好きな人がいるのではないかと思うと、怖くて怖くて仕方なくなったのである。おそらく本体に助けてもらえたのだろう、無意識領域を探索しそれを終えたら好きな女性の顔が自動的に浮かんでくるという離れ業を、俺は突如習得した。即座に実行し、探索を終え帰って来た俺の心に浮かんだのは、翼さんだけだった。安堵するも翌日の起床時の心労が半端なく、その日は午前の訓練を休んだほどだった。何気にそれは、今生の47年の人生で初めてのこと。秘密にしてと美雪と美咲に頼んだのに司令長官と鷹司令官と綾乃司令官から連絡があり、その三人は俺に開示されていない軍の機密により俺の状態を知ったらしくそれはまあいいのだが、司令官と入れ替わりに翼さんが連絡してきたのは堪えた。普通を努めて装い「どうしてわかったの?」と尋ねたところ十秒近く沈黙し、この星の言葉には語彙がないと前置きして、


「虫が騒ぎました」


 と翼さんは日本語で答えたのである。嬉しさと罪悪感が巨大な心労を新たにもたらし本格的にやばくなった俺は「少し眠らせて」と詫び、気絶するように寝たのだった。


 どのような助力を得られたか定かでないが、正午に目覚めたら心労が嘘のように消えていた。美雪と美咲は心配顔だったが空腹を伝えるとお昼ご飯をすぐ作ってくれて、歴代屈指の豪華ステーキと野戦食の両方が出てきたことに思わず笑ってしまったら、二人はやっと笑顔になった。それ以降はいつもと変わらぬ賑やかな昼食になり、午前にたっぷり寝たので昼寝の必要がなく二人とお喋りを楽しんだ。すると気力が湧いてきて午後の訓練を始められ、訓練後は竜族の幼稚園を訪れ、午後8時までいつもどおり過ごした。そこでようやくメールの嵐だったことを明かされ、美雪に手伝ってもらい返信を次々出していった。それでも準四次元とのリンクによる三次元時間の加速法を輝力分身と併用して駆使しなければ、千通超えの返信はこなせなかったな。

 届いたメールの中にあった今夜の準四次元会合のお誘いは、音楽仲間達に詫びて延期させてもらった。竜族の幼稚園で仲間達に会い、俺が復活したことを知った皆は、準四次元会合を提案してきたんだね。嬉しいけどまだ無理なのでぐっすり眠りたいという本音を正直に綴って返信し、俺は寝袋に潜った。眠りの境界を超える寸前まで本音は変わらなかったはずなのに、ふと気づくと俺は宇宙空間を漂っていた。それは本物の宇宙で本体に現在位置を尋ねたところ、なんとアトランティス星の公転軌道の丁度反対側だった。いわゆる、ラグランジュポイント3の近くだね。しかも太陽にアトランティス星が隠れる場所を正確に割り出し瞬間移動して来たというから、マジ笑えない。無意識にここまでするほど、俺は一人になりたかったようなのである。ならば望みを叶え、ボッチを満喫しますか。アトランティス星の公転速度にほぼ近い秒速30キロを保ちつつ、俺は宇宙空間を一人漂っていた。

 その日以降、睡眠中の宇宙空間一人漂いをしばし続けた。音楽仲間達ならテレポーテーションでここに来るのは容易だったはずだが、誰もやってこなかった。俺に気を遣ってくれているのだと都合よく解釈し、反重力エンジンの研究や楽器の練習もそこでするようになっていった。スペースコロニーで行われている母さんの歌の授業を受けることを初めて休んだ翌朝は、勇と昇がさすがに心配して話し掛けて来たけど、睡眠中以外は普通に暮らせることを約束すると渋々ながら引き下がってくれた(見学ではなく「受ける」になった詳細は、その時が来たらってことで)。そんな二人を見ていたら、申し訳なさがとんでもなく肥大していった。しかしそれでも、一人漂いを止める気はなかった。あれを止めたら訓練をまた休むことになると、俺は直感していたのである。

日本の学校は、子供に間違った教育を施しています。にもかかわらず学校に疑問を抱かず、順応した子供であればあるほど成功しやすくなる社会が、日本では既に確立しています。それもあり、私は説くのです。『高学歴エリートの心の成長平均は、一般平均より低い』と。


また私はかねてから「他者の成長を助ける者は、自分の成長を助けてもらえる」と主張してきました。これは裏を返すと『他者の成長を阻む者は、自分の成長を阻まれる』になります。


上記二つの『』の実例としか思えない記者会見が、先日開かれました。


悔しくて悲しくてなりません。

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