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スペースコロニーの内側は、未だ完成していない。最初の数カ月は「日本とほぼ同じ面積なのだから時間が掛かって当然、のんびり焦らず手を入れ続けていこう」と考えていた。だがあることに気づき、そしてスペースコロニーを創造した冒頭から改めて振り返ったところ、まったくの見当違いだったことをようやく知った。あれは久しぶりに自分の中にハーレム俺がいることを実感し、戦慄した瞬間だったな。
ハーレム俺と向き合うべく、整理してみよう。
頭の中でスペースコロニーを建造するのは、前世から続く趣味。前世の地球ではスペースコロニーの建造は100%不可能とされていて、その二大理由はロケット技術を除くと、「宇宙ゴミ」と「空気漏れ」だった。宇宙ゴミは衝突速度が速すぎるため、砂粒程度の大きさでも甚大な被害になってしまう(衝突速度は最低でも秒速10キロほどかな)。ガンダ〇のスペースコロニーは全長30キロあり、大きければ大きいほど宇宙ゴミとの衝突の危険性は増えていく。衝突に耐える建材を地球で作るのさえ無理なのに宇宙で作るなんて絶対無理、という訳だね。また仮に作れたとしても、全長30キロのスペースコロニーで空気漏れを皆無にするのも、これまた不可能。そう前世の地球の技術では、スペースコロニーの建造は100%不可能だったのである。
ではこの星の技術ならどうかというと、建材はある。超硬合金より硬く発砲スチロールより軽い帽子堂の建材の、高品質版がそれだ。空気漏れを許さぬ精密加工も可能だし、材量の調達と運搬と製造も要塞型飛行車なら可能。また軍に提出した設計図には伏せたが、オリュンポス山の組織の本部を包む空間湾曲結界なら、宇宙ゴミとの衝突を完璧に防ぐことが出来る。多分だけどこの星の政府がスペースコロニーを本気で建造するなら、空間湾曲結界の情報開示を組織はしてくれると俺は考えている。
長くなってしまった。先を急ごう。
前世の俺が力を入れていたのは、山や川を適切に配置すること。円柱の軸回転エネルギーだけで空気と水を循環させ雨と風を生じさせることに、燃えていたのだ。その前世の俺からすると、全長600キロのペースコロニーは落第スレスレなのだけど、
「名所の創造は100点以上だな」
俺は満足げに、そう呟かずにはいられかなかった。自画自賛はもちろんあっても音楽仲間達が絶賛してくれるので、素直に受け取っておこうと思っている。
しかし実を言うと当初は、名所を創る気がなかった。理由はただ単に、前世で考えていなかったからだね。出張と旅行で世界的な名所をほぼ行き尽くしていたのに、頭の中のスペースコロニーにそれらを造る発想がなかったのだ。ではなぜ今生は創ったかというと、「翼さんへの償いの一環だったから」の一言に尽きる。まずはコロニー内部の広大な景色を見せ、続いて景色の良い場所に案内すれば喜ぶんじゃないかな、と思ったのである。そうなのだ、招待した初回はただのコロニー案内でしかなく、次回までに名所を一つ創りそれを「名所巡り」に変え、三回目までに名所を三つ創り「三大名所巡り」にするという自転車操業を俺はしたということ。それは偏に、スペースコロニーの創造自体が翼さんへの償いだったからに他ならない。その想いは非常に強く、コロニーに招待するのは翼さんだけでいいと何となく考えていたほどだったのである。竜族に俺の宗教が誕生するのを阻止してくれた音楽仲間達への感謝として招待しようとか、母さんの像を創ったのだから母さんを招待しようとかを翼さんに提案されなかったら、そうなっていたのではないかと俺は感じている。
けどそれは今でこその感想であり、最初の数カ月は微塵も思わなかった。転機は、母さんが先生を勤める歌の授業中に訪れた。歌の授業は毎回必ずコロニー内の異なる場所で開かれ、その理由を俺は授業の見学中、意識を分割して考えるのが常だった。理由をまったく閃かずとも授業見学が有意義すぎ見学率100%を更新し続けるうち、やっと気づいた。「ああなるほど、母さんは翼さんに、旅行気分を味わわせたかったんだな」と。
住み込み保育士をしている翼さんが旅行できるのは、長期休暇中しかない。しかし翼さんは天風家の筆頭当主でもあるため、長期休暇のすべてを天風半島で過ごさねばならない。そう翼さんに、旅行は不可能なのである。
だからせめて母さんは、コロニー内の様々な場所に翼さんを連れていった。かつそこで歌の授業を開き、思い出作りを促した。絶景を臨みながら歌を歌うだけでも思い出になるのに歌好きの仲間達が隣にいて、しかも女組が歌を歌い始めると、動物達がやって来て耳を傾けてくれる。更に休憩中、その動物達と触れ合えると来れば、最高の旅の思い出になるに違いない。かくなる理由により母さんは歌の授業を毎回必ず異なる場所で開くのだと、俺はやっと気づいたんだね。然るにそれ以降、名所や絶景スポットと呼ぶにふさわしい場所を創る作業を、俺は加速させたのである。
言うまでもなく加速させる前も、名所は増やしていた。三大名所を七大名所にしたのがそれだ。ちなみに増やした名所は「世界樹」と「巨大鍾乳洞」と「紅葉の森」と「活火山」の四つ。樹高200メートルの森の中心に、樹高300メートルの世界樹が聳えている。コロニー最大の山脈の地下に巨大鍾乳洞があり、最奥に水晶の巨竜が眠っている。紅葉の森では旬の山の幸を味わうことができ、活火山では噴出するマグマと火を吐く炎竜を見学して温泉に浸かれるという寸法だ。どれもこれも絶賛され、みんな旅行気分を満喫していた。そう俺達ってメチャクチャ仲がいいのに、全員で旅行したことが一度もなかったんだよね。今後も数十年間無理なはずだから、全員で出かけられるコロニー内の旅行を、皆とっっても楽しみにしていたのである。
それは手放しで嬉しいことなのだけど、今はハーレム俺と向き合わねばならない。覚悟を決め、話を進めるとしよう。




