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 トト〇は老若男女問わず、天風一族で大評判になった。すると他の名家もトト〇を見せてほしいと俺に頼むようになり、音楽仲間達に訊いたらもちろんOKだったので全ての名家に輝力製の映写機を貸した。母さんの友人さんの万能視聴覚機は、オーバーテクノロジーなので貸せなかったんだね。緑豊かで田んぼと畑のある天風半島ほどトト〇の風景に酷似した名家はなく、他の名家ではあまり評判にならないだろうと思っていたが外れた。田んぼは無くても畑はあり自然に恵まれ、そして妖精のいることに変わりはなかったため、どの名家でも大評判になったのである。名家の子供達にとって夏季休暇は、自然豊かな故郷で夏休みを楽しむことに他ならない。その夏の故郷で、小さな子供達が「歩こう」を連呼する歌を歌いつつ行進する様子に、視界が霞んでならない俺だった。


 夏季休暇が終了した約一週間後。

 舞ちゃんと翼さんと奏からメールが届いた。文部大臣が、トト〇を見たいと言っているそうなのだ。否やはなく返信しようとしたら、大統領のメールが届いた。「文部大臣に聞いて自分も見たくなったのかな」と当たりを付け目を通したところ違った。どうも大統領は司令長官と交流があり、司令長官に勧められたようなのである。司令長官は名家出身だから、孫達と一緒にトト〇を見ていたんだね。舞ちゃんと翼さんと奏にまずそれをメールし、続いて音楽仲間達に伝えた日の夜、大統領から電話が掛かってきた。閣僚(内閣はないので厳密には違うが面倒なので閣僚)全員でトト〇を見ることが、決まったという。

 何気にこれは、少々面倒かつ立腹案件だったりする。トト〇の入っている輝力製映写機を、輝力工芸スキル英雄級未満の戦士に貸すなど怖くてできない。名家には、同スキルの英雄級以上がいたから貸せたんだね。母さんの友人さんの万能視聴覚機はもっと無理だし、閣僚のために俺の輝力分身を出すつもりも更々ない。俺達のあずかり知らぬところで「閣僚全員でトト〇を見ることが決まった」などと恥ずかしげもなく知らせてくる輩(やから)など、関わりたくないからだ。よってそれらを正直に話し御免被ると断ったところ、平謝りに謝られた。仮に「今回は私の顔を立てて」などと言ってきたら交流を断つつもりだったが、良識はあるらしい。しかし懸念もあったので、それを伝えた。


「心が清らかであればあるほど、トト〇は高評価になります。俺達の愛する映画を、不当に低評価されたくありません。この件は、無かったことにしてください」


 けどさすがは、大統領なのだろう。自分達に非があったので自分達は諦めるが、幼年学校の生徒達にトト〇を見せる計画は無かったことにしないでくださいと頼んで来たのである。閣僚など知らんが、幼年学校の生徒達は別。ただ名家の子供達の様子を見るに、トト〇を上映するのは夏季休暇直前を勧めることを大統領に伝えた。お礼を述べる大統領に、この件には母さんが絡むことを続いて明かした。


「映画の画質を損なわないためには、星母様の友人さんの万能視聴覚機に協力してもらわねばなりません。万能視聴覚機の内蔵AⅠなら、輝力製の映写機に入ったトト〇を自身に取り込み、この星のAⅠにデータ送信できるからです。万能視聴覚機は、地球に保存されていた古代アトランティスの万能視聴覚機を模して作られました。星母様の友人さんも、もちろん大聖者です。内蔵AⅠに協力を仰ぎ、データを確保しておきます。来年の6月上旬に、それをお渡ししますね」


 母さんが絡むことを知らなかったせいで拒否されたと閣僚達が認識したら、俺とのやり取りは二度とないと思ってくださいと明言し、電話を切った。切ってから、少し後悔することになった。前世の祖国の政治家達を嫌悪するあまり、大統領にきつく当たってしまったと反省したのである。まあでも同種の気配は実際あったから、自業自得かな。

 そう折り合いをつけ、万能視聴覚機の現物を貸してもらうよう母さんにテレパシーを送る。肯定のテレパシーと共に、現物が手元に現れた。内蔵AⅠに事情を説明し協力を仰いだところ、快く了承してもらうことが出来た。お礼を述べ、続いて美雪に協力を仰ぐ。美雪も快く了承してくれたので、次は俺の番だ。準四次元に意識投射し、輝力映写機を出して、手元の万能視聴覚機の内蔵AⅠに語りかける。準四次元でも活動できる機械を作るなんて、古代アトランティスはマジ半端なかったんだな。

 詳細は不明だが、内蔵AⅠは輝力映写機と交信したらしい。「データ受信完了です」とのことだったので、三次元世界にいる美雪にデータ送信をお願いする。「完了です」との言葉を聞き、俺は三次元に戻った。

 美雪が機嫌良さげに「受信できたよ」と微笑んだ。映画を見て覚えているよりデータを所有している方が嬉しいのは、俺にもわかる。大好きな映画は購入し、コレクションに入れておきたいものだからね。前世の俺のコレクションを日記に書いたため美雪が全タイトルを知っているのは少し恥ずかしいけど、話のネタになるしまあいいかな。

 そうそう美雪と言えば、今年の夏のバカンスは三人でオーロラを見に行った。人類大陸の最北端は人工島と思っていたけどその北に佐渡島ほどの大きさの島があり、50%の確率でオーロラが出現するという。今年も7月上旬にバカンスを5日間確保でき、オーロラが一度も現れない確率は32分の1なので行ってみたところ、見事なオーロラを見ることが出来たのである。地上からオーロラを仰ぐのは、前世も含めて初めてのこと。途方もなく巨大な緑のカーテンが夜空に揺らめく様子を、俺と美雪と美咲は言葉を失って見つめたものだ。緯度が高すぎ苔すら生えず、それゆえ妖精の元になる素精しか島にいなかったのは、ちょっぴり寂しかったけどね。でも人を怖がらないアザラシや鳥は沢山いて、妖精がいないからだろう美咲は動物にとても慕われ、いつも一緒に遊んでいたのは良い思い出だ。美雪が歌うと鳥が何百羽も集まり耳を傾けていたのも、素晴らしい思い出だな。

 話を戻そう。

 美雪によると、幼年学校の備品ではトト〇の上映に不満が残るという。映像のみなら備品で十分でも、音響は性能を半分も満たしていないそうなのである。「幼年学校は数が多いから予算的に難しいかもしれない」と、美雪は肩を落としていたな。美雪にこんな表情をさせるなど、マジけしからん。どうにかできないかと、俺は考察することにした。

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