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 なんてことを話題にしたら、


「そもそも竜族は映画をまだ創っていないじゃん」


 と突っ込まれそうだけど、竜族は長命。300年後の鈴桃達が映画を創ったとしても、俺はまったく不思議に思わない。鈴桃を始めとする20頭が、竜族社会全体を牽引する偉大な指導者になるのは確実。鈴桃達が竜族社会に及ぼす影響は計り知れず、その一つに鈴桃達の創った映画があり、そしてその映画はトト〇に強く影響されているのだ。映画は間違いなく、総合芸術の一つと言える。ならばトト〇は竜族の文化芸術に、どれほどの影響を与えるのだろう? そしてその影響から抜け出た、竜族独自の感性を土台とする傑作映画が出現するまで何年かかるのだろう? それは、生まれ変わりの時期が間近に迫っているこの宇宙の存在中に、成されるのか? トト〇を見つつ、俺は分割した意識でそればかりを考えていた。


 けどそれは、後でじっくり考察するとして。

 約1時間半経ち、トト〇の上映が終わる。

 幼稚園を覆う全長1キロの輝力製の構造物を、俺は消滅させた。竜族と妖精族を難聴の危機から救うべく、そうしたのだ。妖精族は冗談にせよ、竜族の難聴は本気で案じた。この構造物は優れた音響性能を有するので、90頭近い成竜が密閉空間で声の限りに叫び続けたら、危険な音量になること必定だったのである。母さんも同意見だったのだろう、構造物を消す前から子竜達の耳を高性能の防音壁で守ってくれていた。テレパシーでお礼を述べたら俺の耳にも同種の防音壁が展開し、恥ずかしくてならなかったな。

 竜族と妖精族の大騒ぎは、映画および「歩こう」を連呼する歌が終了した3分後も相変わらず続いていた。メチャクチャ喜んでくれたんだしそれ自体は嬉しいことでも、この時間をどう締めくくるかは難問だった。俺ら音楽仲間達はそれについて議論したが、良案に恵まれず困り果てていた。そんな俺達に、母さんのテレパシーが届いた。


「子竜達がさっきの歌を歌えるようになったわよ」


 母さんは目くらましの3D映像を子竜達に被せ、かつ子竜達の意識速度を100倍にして、「歩こう」を連呼する歌を教えてくれたそうなのである。難問への最高の答(こたえ)を用意してくれた母さんに仲間達全員でお礼を述べたところ、「子竜達がとても可愛くて幸せだったわ」と返ってきた。星母様に歌を直接教えてもらった子竜達がどれほど喜んだかは、想像に難くない。トト〇の感動と相まって、さぞ楽しげに歌ったのだろう。俺は空中に固定している母さんの友人さんの映写機へ飛び、同曲をカラオケモードにできるか問うた。可能との返答を仲間達に伝え、計画を大急ぎで立てていく。女組はできれば子竜達と一緒に歌いたかったようだけど、竜語を完璧に操れるのは美雪と美咲しかいない。かくして女組の「「「「私達の代わりにお願い!」」」」との言葉を一身に浴び、美雪と美咲が子竜達に近づいて行った。合流と同時に子竜達を覆っていた3D映像が解除され、美雪と美咲と子竜達は嬉々として演壇へ向かう。となりのトト〇の素晴らしさを一心不乱に語り合っていようと、子竜達の移動を見過ごす成竜はここにいない。何事が始まったのか、と成竜達は一斉に口をつぐんだ。それが妖精達にも伝播し、会場は打って変わって静寂に包まれた。子竜達が演壇に到着し、美雪と美咲を中心に並んでいく。そうそれは、合唱の並び順。それに成竜達が気づくと同時に、俺は夕食会でいつも創っている、音響性能の高い輝力壁を演壇後方に展開した。照明の反射板を兼ねるため白く着色した音響輝力壁を演壇後方に見た成竜と妖精達が、今後の出来事を察したのだろう。やんやの声が観客席から掛けられた。それに応え、一列に並んだ美雪と美咲と子竜達が観客席へお辞儀。そして頭を上げるや、母さんの友人さんの映写機がカラオケモードで件の歌を流し始める。スクリーンに映像も映り、歓声が爆発した。それを全身で受け止めた美雪と美咲と子竜達は、「歩こう」を連呼する歌をトト〇の世界観のまま、元気いっぱい歌ったのだった。


 美雪と美咲と子竜達が歌を歌い終えたのは、夕食会の終了時刻だった。どれほど名残惜しくとも、祭りには終わりが必ず訪れる。その締めくくりとして、今演壇で歌われた歌以上のものは無いだろう。子竜達が頑張ったのだから次は自分達の番とばかりに、成竜達はお祭りを終了させるべく動き出した。こうして竜族史上初めて開かれた二夜連続の夕食会は、無事終了したのだった。


 同日深夜。

 俺ら音楽仲間達はスペースコロニーに集まり、となりのトト〇の上映成功を祝った。この映画は、俺達が0から創った映画ではない。しかしそれでも24fpsを三倍の72fpsにし、忘れ去られていたテレパシー送受信機を5万年ぶりに造り、そして声優としてテレパシーを吹き込んだのは紛れもない事実。俺達はスタジオジブ〇の皆さんに準じる喜びを、お祝い会で分かち合っていた(ジブ〇の皆様ごめんなさい!)。

 お祝い会の飲み物や食事は、小鳥姉さんと鈴姉さんの指導のもと全員で作った。男組全員がお菓子作り教室に参加するようになったから、戦力として数えられるようになっていたのだ。何気にこれも、トト〇の上映に携わったお陰。お菓子作り教室から逃げ回っていたせいで、痛い目に遭った四人組がいたからね。今となっては、笑い話だけどさ。

 そうそう飲み物にはお酒も含まれていた。お菓子作り教室では、果実リキュールや柚子酒も創っているからだ。柚子酒の元になった日本酒もあったので達也さんと裕也さんに勧めてみたところ、たいそう気に入ったらしい。「教室に通って良かった!」「ウエ~イ!」などとやりつつ、二人は純米大吟醸を手酌でしこたま飲んでいたな。

 酔えずとも、俺もお酒を飲んだ。小鳥姉さんと鈴姉さんの創った果実リキュールは、果物を直接食べているかのような風味を楽しませてくれる。果物を愛する竜族は、酒果よりこの果実リキュールを好むのではないかと俺には思えてならなかった。

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